言語はどこかで繋がっているといわれている。日本語と韓国語はそれぞれ孤立した言語と定義されており、言語系統は全く異なるけれども、語順、語彙、助詞の使い方がが似ていたりする。
これは日本の統治時代に韓国語が明治以降に完成した現代の日本語をもとに整理されたからという声もあったり、もともと日本語と韓国語は似ていたんだ。という声もあるけれど、私はわからない。
けれども、この二つの言語似ていない?と考えるとき、必ず歴史的な背景を見るということは重要だということ。これは間違いないだろう。そうすることによって言語だけでなく、世界がどう変わって今に至っているのかということを少なからず知るきっかけにもなる。
そもそもロシア語はヨーロッパの90%ほどを占めるインド・ヨーロッパ語族である。この語族にはヒンディー語やペルシア語までも含まれる。
「欧州なのに「インド・ヨーロッパ語族」には属さない異端の「ウラル語族」と日本語の関係」
そういう言語系統や歴史のことも含め、この記事ではロシア語学習者にとって少しでも知っておくと学習が進めやすくなるように、まとめていきたいと思う。
①フランス語とロシア語の共通点
まず言語系統で言えば、キリル文字を使うロシア語だけれども、フランス語やドイツ語、英語などと同じグループである。
上に紹介したインド・ヨーロッパ語族に属される言語だ。とはいっても、
のように大きく分けることが出来る。なので、そもそもフランス語とロシア語は同じ言語系統である。
とはいっても、下位グループでは、
・ロマンス諸語
・スラヴ語派
と分かれているので、もの凄く似ているわけではない。
ちなみに、インド・イラン語派に属されるペルシア語とヒンディー語は、語順が日本語と同じ、SOVであるのみならず、簡単なレベルであれば意思疎通できるほど似ているとも言われている。
「ドイツ語やヒンディー語も。日本語と同じ語順(SOV)をとる言語 TOP10」
ま、語族の話から入ってみたけれども、つまりはロシア語とフランス語はそもそも全く違う言語と思われがちだけれど、実は同じ語族に属しているということは先に理解していただけたと思う。
②ロシア語とフランス語が違って見える理由
(写真は、フランツ・ヴィンターハルターによる、Leonilla Bariatinskaya の絵)
そもそもフランス語とロシア語と言えば、
ローマ字→Français
キリル文字→русский язык
というように、全然違う言語だ。なので当然、フランス語とロシア語が兄弟だなんて知らなかったと思うし、ましてやフランス語とヒンディー語が同じ語族だと知らなかった人は多いと思う。
多言語をやっているとやはり多くのことに気づく。それはフランス語を勉強した後にロシア語を勉強して気づいた。
つまり「なぜロシア語の中にはフランス語の単語がこれほどあるの?」という疑問だ。
もっと言えば、ロシア語はキリル文字を覚えるのは少し多変だが、フランス語を少しかじった人であれば、ロシア語の中に沢山のフランス語彙が入っているので、ロシア語が楽しめるし、アラビア語を学ぶよりも断然簡単に感じるだろう。
③モスクワ大公国の理解がすべてに繋がる
現在のモスクワを中心とした範囲に、モスクワ大公国というものが、1283年–1547年まで存在していた。つい400年前くらいのことである。
今でこそロシアは極東はシベリア(サハ共和国)まで到達しているが、つい数百年前まではロシアと言えば、このモスクワ大公国を指していた。
現在、シベリアの大部分を占めるサハ共和国は、モンゴルや中央アジア、トルコと言語が似ており、本来はスラブ人を中心としたロシア人ではない。
「イケメンや美女も多い?ロシアのヤクート人(サハ共和国)やチュクチ人は、日本人はなぜ似ている?」
しかもモスクワ大公国は、皮肉なことに現在では超貧困な国でもあるモンゴルの傀儡だったのである。
なので当時、モスクワ大公国の貴族に伝わったモンゴル語が今もなおロシア語に入っている。
「ロシアの黒歴史「ジョチ・ウルス」と、モンゴルのロシア支配でアジア人男子がモテると思う理由」
さて、現在、ロシアの首都モスクワの中心部と言えば、赤の広場だろう。あそこに、タマネギの形をしたカラフルな聖ワシリイ大聖堂は、このモスクワ大公国が終わった、1555年に完成している。
こういうふうに考えるとものすごく、覚えやすいので、私はあえて聖ワシリイ大聖堂の話をした。またあの大聖堂を玉ねぎというふうに表現してみた。
で、このモスクワ大公国はモンゴル帝国の傀儡国だったので、これをロシア側からみると、タタールの軛と言っている。
この時代、モンゴルに間接的に支配されていたことで、ヨーロッパに対して100年以上、遅れてしまったと言われている。
④ロマノフ朝は、フランスを手本とした
でモスクワ大公国の時代が終了した後、ロマノフ朝というものが誕生した。→ここがポイントなのだ…!
ロマノフ朝(ロマノフちょう)は、1613年~1917年までロシアに君臨したロシアの歴史上最後の王朝である。
1613年にロマノフ家のミハイル・ロマノフがロシア・ツァーリ国のツァーリに即位して成立した。その後1721年にピョートル1世がインペラトールを名乗り体制をロシア帝国に改め西欧化を推進し、1917年にロシア革命で滅亡した。
このピョートル1世というのが、ポイントである。
このピョートル1世というのは、ロシアの歴史を語るうえでものすごく重要になってくる人物だ。ちなみに、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクのペテルの部分は、このピョートル1世の名前であり、彼自身が1703年に、この都市の名前を決めたとされている。
このピョートル1世が、今までのロシアのやり方を変えた人物だ。当時、ヨーロッパはパリを中心とするフランスが中心地だった。なのでフランスにいろんなことを学びに行った。
また、当時世界で統一基準の概念が現れた最初の言葉だったとされているフランス語を学ぶことで、その言語を通じて様々なことをフランスから取り入れ、またロシアの貴族内でもフランス語使われるようになったのだという。
そしてフランス大革命(1789~1799)のときに、フランスから逃亡してきた人たちが、ロシア皇帝に仕えて高位に上る者もあったそうだ。そうでないものは、フランス語の家庭教師になったりなど、この時代にも、ロシアにたくさんのフランス語が流入したとされる。
これは英語にもあてはまるだろう。
英語にも多くのフランス語の単語が存在するのは、やはりこの当時、統一基準の概念をもったフランス語の強みだったのかもしれない。(このとき、ドイツはまだ小さい国の集まりだった)
ちなみに以下の、ロシア語から日本語に訳された媒体にも同じようなことが書かれていた。
なぜロシア貴族はフランス語で話したのか?(なぜロシア)
⑤以下、ロシア語とフランス語の類似リスト
で、以下に、ロシア語のサイトから拾ってきたフランス語とロシア語で同じ単語のものを、簡単に書いていきたいと思う。
Слова, заимствованные из французского
このフランス語由来のロシア語単語リストをみても、もうキリがないくらい多いくて驚いてしまう。
私もフランス語を1000単語ほど勉強しているので思うのだけれども、ロシア語より先にフランス語を学んだほうがいいと思う。と思うのだ。
さっきも書いたが、そうすれば、ロシア語(キリル文字)の読み方さえ覚えれば、すんなり覚えやすいと思う。
Душ – une douche
Этаж – un étage
Вояж – un voyage
Багаж – les bagages
Несессер – le nécessaireРежим – le régime
Инаугурация – inauguration
Импрессионизм – l’impressionisme
Пижон – un pigeon
Парад – une paradeАнтрепренёр – entrepreneur
Балет – le ballet
Девиз – la devise
Дилижанс – une diligence
Меню – menuОмлет – une omelette
Карамель – le caramel
Шанс – une chance
Рандеву – un rendez-vous
Курьер – un courrierПавильон – un pavillon
Пасьянс – la patience
Променад – une promenade
Резюме – un résumé
Аллея – une alléeБульвар – un boulevard
Директор – le directeur
Иллюзия – une illusion
Иммитация – une imitation
Калория – une calorieМагазин – un magasin
Reference Site
http://multilinguablog.com/2015/04/03/100-французских-слов-в-русском-языке/
これらの単語は、ほんの一例であってまだまだある。もう書きすぎると記事がいっぱいになてしまうのでこれくらいで終わりにしておこう。
ちなみに私がロシア語の基礎単語で一番印象的だったのは、海がフランス語とロシア語で同じで、mer(メル)だったということだろうか。
いずれにしても、軽くこのように大雑把に歴史を把握していると、ロシア語の学習速度も速くなるかもしれないと私は思うのだよね。
頻出1000単語をエクセルで検証してみたが、1000単語のうち、おそらく200単語近くはフランス語の単語と同じなのでは?と思ったのだ。
⑥その他に似ている部分
単語以外に似てるところもある。
そもそも上にも書いたが、上位グループでは同じインド・ヨーロッパ語族の言語であったとしても、ロシア語はスラブ語派であり、フランス語はロマンス諸語である。
にもかかわらず、代名詞の形が非常に似ている。
その例を言うと、あなたは。という代名詞に対して、フランス語は、友達に使う場合と、あまり距離が近くない人に使う二パターンがあるが、これがロシア語にもあり、子音の音までそっくりなのである。
ここまでくると、ロシアがジョチ・ウルスの時代を経て、ヨーロッパにかなり遅れを取って、フランス式をかなり取り入れたことが分かってくる。
また現在のロシアを知るには、このロマノフ王朝時代に取り入れたフランス式もそうだけど、モンゴル帝国がロシアに残した専制的なやり方も注目してもいいかもしれない。
ロシアが分かると、ヨーロッパがもっと理解しやすくなるのでお勧め。