この記事では韓国生活を通じていつも疑問に思っていた、"なぜ韓国にはキリスト教が根付いたのか?"ということを書いていきたいと思う。
というのも、日本と韓国は近い国なのに、なぜ韓国にはあれほどもキリスト教徒が多いのか?と思ったからだ。また、多くの人が疑問に思っていても、あまり調べたことがない。というのが実情だろう。
これは韓国でも同じで、私が韓国人に、なぜ韓国にはクリスチャン(キリスト教信者)が多いの?と聞いたところ、ほとんどの人が答えられなかった。
また、いろいろ曖昧な回答もあったりなどで、歴史的な流れを説明できる人はほぼいなく…。
①韓国の宗教割合(2005年、韓国統計庁が発表したもの)
■韓国の人口に対する宗教人口
・宗教人口=総人口の53.1%
・非宗教人口=総人口の46.9%
■以下、宗教人口の内訳
・仏教 (22.8%)
・プロテスタント (18.3%)
・カトリック (10.9%)
・儒教 (0.2%)
これを見ても分かる通り、プロテスタントとカトリックはキリスト教なので、韓国の宗教人口におけるクリスチャンの割合は、29.2%となり、本来に韓国にあった仏教よりも多いということになる。
韓国でのキリスト教信者数は約1376万人いると言われていて、
■アジアでの信者絶対数
01位 中華人民共和国
02位 フィリピン
03位 インド
04位 インドネシア
05位 韓国
■国民全体に占めるキリスト教信者の割合(東アジア、東南アジア)
01位 フィリピン
02位 東ティモール
03位 韓国
となっている。
韓国におけるキリスト教の影響力がいかに強いか?ということがこの数字をみても明かなのである。で、日本の場合どうだろう?
■以下、日本の宗教人口の内訳
・無宗教 (51.8%)
・仏教 (34.9%)
・キリスト教 (2.3%)
Reference Site
https://ja.wikipedia.org/wiki/日本の宗教
ざっくりみても、やはり日本にはクリスチャンは少ない。仏教のほうが力がある。
・創価学会
・立正佼成会
・顕正会
・霊友会
・佛所護念会教団
・真如苑
と、よく聞く新興宗教のほとんどが仏教系だ。日本ではこのように仏教優位(また生活習慣や風習として神道が取り入れられている)である一方、韓国では仏教とキリスト教という対立構造ができているとも見れる。
いずれにしても、韓国にキリスト教が入ってきたのは、日本や中国に伝わるよりも先のことなので、なぜこれだけ韓国にはクリスチャンが多いのか?ということは気になるところであろう。
それでは歴史を紐解いていく。
②グレゴリオ・デ・セスペデス(文禄・慶長の役に同行)
朝鮮半島に初めてキリスト教の宣教師が足を踏み入れたのは、文献で確認できる限りでは、1593年に文禄・慶長の役に参加していたキリシタン大名小西行長(こにし ゆきなが)に同行したイエズス会司祭グレゴリオ・デ・セスペデス(Gregorio de Sespedes)が最初だと言われている。
ちなみにザビエルが日本に初めてキリスト教を伝えたのは、1549年である。
「日本史では語られない「日本人女性の性奴隷」がポルトガル人の間で売買されていた史実と、豊臣秀吉との関係」
けれども、彼が同行した理由は、日本軍の従軍司祭としての活動に限定されていたので、当時の朝鮮の人々に布教をしたわけではなかった。
この戦役で、小西はジュリアおたあ(安土桃山時代の朝鮮人女性)と呼ばれる朝鮮人養女を得ることになり、彼女は小西によって行き届いた教育を受け、養父にならって受洗した。と言われているので、
歴史上初の朝鮮人キリスト教徒(受洗者)はジュリアおたあであると考えられている。
Reference Site
www.catholictimes.org/article/article_view.php?aid=150412
また、その後も、李承薫(イ・スンフン)という人物が、朝鮮史上初のキリスト教礼拝所(北京)で洗礼を受けたという記録も残っているようである。
韓国史上初のキリスト教礼拝所が北京?と私も思ったが、おそらく朝鮮半島では礼拝所がなかったため、北京にあった礼拝所までわざわざ赴いたということなのかもしれない。
彼の写真はやはり、韓国語のサイトでも見つけることができた。
Reference Site
jwisdom.or.kr/lee_seung_hoon/1670
また、その後、他の人たちによって活発的に布教が始まることになる。
③キリスト教に対する二つの弾圧
などが、韓国でキリスト教の布教を始めるなどしている。
金大建(キム・デゴン)が上海で朝鮮最初の司祭になって帰国し、朝鮮で布教を始めたが、当時の朝鮮社会では儒教が社会の根本思想となっていたため、カトリックは邪教と見做され弾圧が加えられていた。
実際に、1846年、巡威島において外国人宣教師密航計画を進めていた金大建(司祭)は捕縛され、金大建と103人の信者は「キリスト教棄教」を拒否し、処刑される。
そのため、金大建と103人のクリスチャンは1984年5月6日、ローマ教皇によって列聖された。(列聖とは、主に死んでしまった人に対して模範となるべく相応しい人として地位をあげること)
その後、1866年にも、処刑されるということが起こったとされている。このとき、大院君政権下であった。密入国していたフランス人司祭9名と、カトリック信徒約8,000名が捕縛・処刑される丙寅教獄(へいいんきょうごく)が起こった。
この絵は、逮捕され、尋問されるベルヌー司祭を描いたものである。
で、なぜ興宣大院君(こうせんだいいんくん)は、このような処刑をしたのだろう?それは、興宣大院君がもともとクリスチャンを擁護しているという非難を受けていたからだ。
つまり、1866年時点では、その当時の朝鮮半島の人口は、802万人であったことを考えると、8000人というのはかなり少なかったものの、私が思っていたよりも結構多かったという結果だった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/日本統治時代の朝鮮#人口推移
ちなみに、このような感じで、連続してキリスト教に対する弾圧が続いてきたようである。
1801年 - 辛酉教獄: 清国人宣教師周文謨・進士黄嗣永ほか300名あまりを処刑
1839年 - 己亥教獄 : フランス人宣教師ローラン=マリ=ジョゼフ・アンベールほか200名あまりを処刑
1846年 - 丙午教獄: 金大建ほか20名あまりを処刑
④開国によって宣教師が増えるが…
この時期は、李氏朝鮮時代末期であり、韓国の歴史でもたびたび取り上げられる興宣大院君(こうせんだいいんくん)の政権だった時期である。
興宣大院君政権では、攘夷策(鎖国の意味)をとっていた。1875年には日本軍が開国を求めて江華島に侵入してきたことなどをきっかけに、1876年に日朝修好条規(江華島条約)を締結する。
それに続いて他の欧米諸国も、締結するという流れになり、このときくらいから朝鮮の開国が始まる。
すると、国を開いたことによって欧米諸国との外国関係が樹立され、それらの国からプロテスタント諸派の宣教師が続々と朝鮮に派遣された。
そして、ここから時代が大きく変わる。
李氏朝鮮時代は終わり、1897年に興宣大院君の息子である光武帝を皇帝とした大韓帝国が成立する。けれども、この大韓帝国というのは、1897年~1910年までしか続かなかった。
その後、1910年→日韓併合が行われる。
つまり朝鮮の国家元首が、光武帝(皇帝)→昭和天皇に変わったのがこの時だ。(大韓帝国と日本統治時代がごっちゃになっている人も結構多い…)
朝鮮総督府が置かれ、日本統治時代になったということは、この時代から上の立場になる人が日本人になるということである。
朝鮮総督府は、日本基督教会の指導者植村正久に朝鮮宣教を断られている。植村正久といえば、日本のキリスト教教会の形成に大きな役割を果たした植村は田村直臣、松村介石、内村鑑三と共にキリスト教界の四村と呼ばれたていたと言われている。
植村正久に断られた朝鮮総督府は、日本組合基督教会の指導者海老名弾正に朝鮮宣教を命じた。
ちなみに、
は別組織。
⑤キリスト教徒が、三・一独立運動(抗日運動)の中心となる
日韓併合下では外国との接触を持つキリスト教徒が抗日運動を担うようになった。特に、1919年に発生した三・一独立運動ではキリスト教徒が主要な役割を果たした。
が、ここまでは、よかった。
時代も変わり、1937年になると、皇国臣民ノ誓詞(こうこくしんみんのせいし)というものが朝鮮で発布される。(盧溝橋事件以降)
つまり、朝鮮総督府は、キリスト教徒に対しても、神社参拝を強要することになる。
当然こうなると、キリスト教では偶像崇拝がダメなので、神社参拝を拒むものも出てくるわけだ。同時に、1938年6月末、日本政府は日本基督教会大会議長富田満を派遣し、神社参拝を拒む朱基徹牧師ら朝鮮の長老派を説得させている。
富田→”神社参拝は宗教ではない”
朱→”神社参拝は十戒に反する偶像崇拝”
この神社参拝拒否事件で、朱基徹は殉教者となり、韓国でもよく知られている人物となっているようだ。
⑥敗戦後(日本統治時代終了後)に受けたキリスト教の厚遇
敗戦後、連合軍軍政期になると、マッカーサー(国連軍最高司令官)は韓国人に対して信教の自由を認めた。
その後、「神社法」を廃止して皇民化政策の残滓となる神道を排斥。その際に、朝鮮伝統の巫俗信仰等の宗教に対しても規制政策を行った。とされている。
これに対して、キリスト教は厚遇を受けることになる。たとえば、ソウル放送で福音放送を流すことや、刑務所に牧師を置くことが認められるなど優遇されたのだ。
⑦朝鮮戦争後にキリスト教が伸びた理由
朝鮮戦争後、厳しい生活条件の中で暮らす韓国人の間でキリスト教は着実に広まった。とされている。
これは、朝鮮戦争において、マッカーサーが上陸作戦を敢行した後、北朝鮮軍との地上戦が住民を巻き込み熾烈を極めた中で、
ブリキや木片で十字架を作って首から掛けることで、国連軍(とりわけ米国軍)の庇護を受けることが出来た。
ということ理由もあったのだとか。もちろん北朝鮮(北朝鮮は東洋のローマとまで呼ばれている)から多くのカトリック信者が韓国に逃れてきたことも一つの要因である。
これらの結果、終戦後キリスト教の発展に繋がった。とされている。
また、日本統治時代と同様に、朴正煕政権の軍事独裁期には、キリスト教会が反独裁運動の重要な拠点となった。代表的なものとして、金大中を支援し共闘した天主教正義具現全国司祭団などが挙げられる。
民主化闘争を担った金大中や金泳三らは現実の政治闘争への参加を呼びかける民衆神学の信奉者であった。
⑧キリスト教が広まったそのほかの要因TOP3
(現在のソウルはどこをみても、教会のネオンだらけ)
m.newsnjoy.us/news/articleView.html?idxno=1936
以下は、日本語のサイトなどでまとめたものを私なりに整理してみた。
3位 法事との関係
韓国では「祭事」と呼ばれる法事が多いため、「法事」から解放されるために、クリスチャンになるというもの。
先祖を敬う韓国社会では、親以外にも、親戚の法事などにも行くことがあり、毎月法事が行われる家などもあるのだそう。
クリスチャンになることで法事はしなくてもいい。ということになるため。という声もあった。
2位 欧米人に近づけるため
韓国人の中には、欧米諸国の宗教でもあるキリスト教を信仰することで、仏教中心の日本人よりも“高い文化を持っている”と感じることができる。のだとか。
ちなみに、北朝鮮の首都平壌は、東洋のローマと言われるほど、20世紀前半には、キリスト教の中心地だった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/朝鮮民主主義人民共和国の宗教#キリスト教
1位 両班(ヤンパン)との関係
李氏朝鮮はそれまで主力だった仏教を廃止、国策として儒教を普及させる。結果的に多くの仏教寺院は徹底的に破壊された。(例外的に慶州の仏国寺などは残る)
けれども儒教は宗教というよりは、上に逆らってはいけないといった支配階級にばかり都合の良い教えだったため、為政者や支配階級であった両班(ヤンパン)は横暴を極め、儒教は民衆から反発をかうことになり、一般には根付かなかったともいわれている。
このため、一般大衆は何を信じたらいいのか?となり、今までずっと続いてきた迷信的なものにすがるしかない状態であった。
そんなときにやってきた教えが、キリスト教である。李氏朝鮮が外国に扉を開いて宣教師が続々とやってきてから、宣教師の教えに民衆は新鮮さを感じて飛びついたのだ。それが日本などとは比較にならないほど、キリスト教が強く根を張っている大きな理由ではないだろうか?
という声も聞かれた。
⑨私が韓国で体験したキリスト教や教会での出来事
最後に、私の体験を少しまとめて終わりにしたいと思う。私が韓国に合計で2年くらい住んでいて間に、結構いろんな教会に行ってみた。
①高麗大学で知り合った中国人女性が通っていた教会
②大田にある外国人向けの教会
③クラスで仲良くしていたアメリカ人と韓国人のハーフの通っている教会
④中国語のクラスで同じだったクラスの韓国人の通っている教会二つ
⑤統一教会のある鮮文大学校の友達のところに行った(下の広大な土地にあるキャンパス…)
⑥上の中国語のクラスだった友達の紹介によるその東京にある教会
てな感じで、韓国では教会に気軽に出入りできる。ここは社交場?友達作るところなの?と思うくらい。韓国には教会がいくつもあることを考えればそういう役割をしているのかもしれないと思ったりする。
どこの教会に行っても日本語と英語を話す私は若い韓国人から日本語やら英語などの外国語で話しかけられて暇をすることはなかった。(笑)
⑩日本に進出している韓国系教会一覧
lily.sunmoon.ac.kr/MainDefault.aspx
・世界平和統一家庭連合(統一教会)
・クリスチャントゥデイ
・ホーリネス教会
・国際福音キリスト教会
・小牧者訓練会
・在日大韓基督教会
などなど…。
Reference Site
https://ja.wikipedia.org/wiki/韓国のキリスト教#歴史
https://ameblo.jp/yukimari-8121/entry-11528116260.html
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1058189435
online.sbcr.jp/2015/10/004119_2.html
www.circam.jp/book/detail/id=3692
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