モンゴルと北朝鮮。この二ヶ国は、東アジアの中でもいつも忘れられてしまう存在だ。北朝鮮は飛翔体を飛ばさないと存在感を発揮できないし、モンゴルの面積は日本の4倍ほどあるが、人口が大阪市ほどしかいなく草原しかない寂しげな国のように映り、マイナス何度の世界が半年以上も続く寒い場所のせいか、経済的にも日本人の関心を寄せない。
日本人がイメージするモンゴルは、大草原、チンギスハーン、朝青龍、遊牧民とゲルくらいではないだろうか。
そのためか日本からの直行便も少なく、仁川を経由しなければならない。けれども最近、一部のフリーランス(日本人)の間でも、モンゴルに拠点を置きたい。草原の国でゆっくり仕事がしたい。という願望を抱いているブロガーも多いのが目立つ。
前回行ってきた極東のウラジオストクもそうだが、人口はそれほど多くなくても日本からすぐに飛行機で行ける国で、こんなところに快適で過ごしやすい場所があるというのは、実際に体験してみて目からうろこだった。
「日本人も韓国人のようにロシア極東「ウラジオストク」と「ハバロフスク」に行くべき理由 TOP10」
正直言って、日本人がすぐに行ける国の選択肢と言えば、中国・韓国・台湾・香港くらいしかなく、すべて中華圏だ。(韓国も本来は中華圏)。
なので私はウラジオストクやモンゴルを今後もっと活用していきたいと思っているところだ。
さて、そんな気持ちとともにモンゴルのことをもっと知りたくなったので、この記事にモンゴルが抱えている社会問題や、貧困、遊牧民などの事情を書いていきたいと思う('ω')ノ
①マンホール・チルドレンと、性感染症
私がモンゴルのことを調べていて一番衝撃的だったのが、マンホール・チルドレンだった。ストリート・チルドレンという言葉を聞いたことがある人は多いけれども、マンホール・チルドレンという言葉を聞いたのは初めての人も多いかもしれない。
マイナス何10度にもなる真冬のモンゴルでは、外は寒すぎて生きていくことができない。12~2月は-20℃以下になる日が多いと言われているように、モンゴルでは9月の下旬~4月までは、たいていの集合住宅で強制的に暖房がつく。
けれども集合住宅に住めない人や、もともと遊牧民生活をしていて家畜を失ったがためにウランバートルにやってくる一部のモンゴル人にとって、氷点下に耐えられるゲル(組み立てることができる)を失っている場合が多く、氷点下のウランバートルで生活するのは非常に困難。
※ゲルは組み立て式で3人いれば数時間で作れるので、ウランバートル以外からやってきた遊牧民たちがウランバートルの郊外にこのゲルを建てているエリアもある。
さて、どこの国でも格差があるが、モンゴルの場合、少し特殊かもしれない。格差がある国でもたいてい誰でも屋根がついた家は持っているもの。けれども上にも書いたが、家畜(財産)を失って遊牧民生活からウランバートルにやってきたもの仕事がないもの、アルコール中毒などによる虐待によって親元から家出した子供たちなどが、ホームレスになると言われている。
この問題は2001年のモンゴル映画にも描き出されている。
The Children Living in the Sewers of Mongolia's Cities (2001)
https://aeon.co/essays/the-grim-intensity-of-a-childhood-on-the-street
彼らは、マンホールに集まって一緒に住み、昼間はペットボトルなどゴミを集めたり、時には窃盗をする。目にデキモノができてしまっている少年も上のURL(映画)で見ることができる。
また光も差し込まない暗いマンホールの中で身を寄せ合って生活しているので、中学生くらいの年齢の子供たちが性感染症にかかってしまうケースが多いのだとか。
マンホール内が暖かい理由は、地中の温度が安定しているためともいわれている。例えば夏は地下に入れば涼しく感じ、氷点下の真冬であれば地下に潜ることで、夏に地下に潜ったときと同じ温度というわけである。
とはいえ、現在のウランバートルではこのマンホール・チルドレンはこの映画が公開された2001年ころとは違い、それほど多くないと、モンゴル人の友達は言っていた。(2019年9月時点)
→幼児期に両親が無くなり孤児となりマンホール・チルドレンとなった少女が、その後児童保護施設で育ち、今は医者になったという嬉しいニュースも発見。
「マンホールチルドレン」から医師に モンゴル女性、12年ぶり〝里親〟に再会
つまり、私が色々なブログを調べていても思ったことだが、マンホール・チルドレンは改善されてきているということだろう。
英語圏で調べた動画もそのほとんどが、10年前くらいに公開されたものだった。西洋諸国からの寄付や、以前に比べモンゴルの経済が成長したことが挙げられるかもしれない。
②モンゴル経済の急激的な成長
2001年にこのようにマンホール・チルドレンという衝撃的なドキュメンタリー映画が公開されたわけだが、そのころのモンゴルは、1人当たりのGDPが、5.2万円ほどであった。
1年間に5.2万円稼ぐという意味である。(※1人当たりのPPP→購買力平価は38万円)それが、2017年には、1人当たりのGDPが37.3万円、つまり7倍以上も上がり、購買力平価は110万円になっている。
ちなみに、1人当たりのGDPは短絡的な為替変動によって左右するのに対して、PPPは一物一価の法則が適用されるため、PPPをみるほうが実生活の参考になる。
さてこれを見ても分かるように、モンゴルは最近急激に成長したことがわかる。
私が現在この記事を書いているキルギスとモンゴルは、2000年前後はほぼ同じ1人当たりのGDPだったが、モンゴルはそれを飛び越えてしまったというのが、上の図からも分かるだろう…。( ゚Д゚)
「住みやすさ抜群。日本人の兄弟国家キルギスの「ビシュケク」に2ヵ月住んでみた件」
ちなみに、キルギスの場合は、輸出の50%以上がゴールド。つまりゴールドが取れないと経済が成り立たない。
そしてモンゴルもアラブ首長国連邦を代表とする中東の産油国のように、70%以上が資源によって成り立っている国だ。
銅(37%)
石炭(19%)
非貨幣の金(8.3%)
原油(7%)
亜鉛(4.1%)
鉄鉱石(5.1%)
などまだ細かい項目はあるが、およそ80%以上は資源であり、モンゴル人は考えない民族として日本人やイスラエル人とは全く逆とも言える( ゚Д゚)
「アラブ人国家に囲まれた技術大国「イスラエル」がヨーロッパ扱いされる理由と、日本と違う部分」
つまり、たまたまラッキーだったアラブの成金と同じ。とも言えるということがここで分かったと思う。
③ゾドが原因?草原の首都が、大気汚染になる理由
日本人がイメージする大気汚染(PM2.0など)都市と言えば、中国の北京だろう。また、あまり強調されないが韓国のPM2.0も深刻化していて、私が11月に大邱に住んでいた頃はかなり酷かった。とはいっても私にとっては4月前後にやってくる黄砂(中国の砂漠から飛んでくる砂)のほうが花粉症と同じ症状を引き起こしたので深刻だった。
さて、ウランバートルの大気汚染の理由は何なのだろうか。ロイターの記事(2019年)では、以下のように書かれている。
ウランバートルの大気汚染深刻化、子どもを郊外に避難させる動きも
私にとってもウランバートルにはそんなイメージはなかったので意外だった。で、この原因となっている根源をお話しよう。
現在モンゴルでは、ウランバートル都市圏に国全体の人口半分が住み、モンゴルにいくつかある小規模都市などもあるので、遊牧民の割合は国民の2割程度とも言われている。
ウランバートル中心部には集合住宅や日本で言う高層マンションも多いが、それが郊外になると、都市定住用のゲルも多い。
https://www.theguardian.com/cities/2014/sep/03/mongolia-ulanbaatar-ger-yurt-tent-city
Photographs: Dan Chung
1998年当時65万人に過ぎなかったウランバートルの人口が最近は130万人に達し、また、近年のウランバートルの人口増加率は2000年以来年平均およそ4%と、日本の高度経済成長期の三大都市圏のそれ(2%台)を上回る大移動が起きている。
と他のブログでも書かれていたがまさに物凄い大変動が起きている。
で、ゾド。とは、モンゴル語で寒雪害を意味する。つまり極寒に耐えることのできなかった家畜が死んでしまい、家畜という財産を失った遊牧民がウランバートルにゲルを建てて、廉価な石炭で暖をとったり料理をしたりして、その石炭から汚染物質が出てしまうわけだ。
真冬になるとウランバートルには肺炎などで患者が増えるという。これが、ゲルから排出された煙は、富裕層らが住む地区に流れることが多いようで、富裕層から唾を吐かれたゲル住民もいるそう。
これらゲルに住んでいる住民は本音は、遊牧民に戻って自由に家畜と生活がしたい。けれども、それができないので窮地に立っているようだ。
④日本人が知らない二つの2つの「モンゴル」
※モンゴルと内モンゴルが一緒になってくれれば、東アジアのパワーバランスが変わるかもねとか思いながらこの地図をみてた…( ゚Д゚)
中華人民共和国に組み込まれてしまった内モンゴル自治区は、チベット自治区や新疆ウイグル自治区のように話題にはならない。そのため日本人にとっても内モンゴル自治区は影の薄い存在となっている。
とはいっても、内モンゴル自治区は中国の中でも大変豊かなエリアだということはご存知だろうか。
以下は今年山東省で書いた記事だが、内モンゴル自治区は、中国全体の省、直轄市という立場では、1人当たりのGDPは国内9位で、104万円となっている。
「中国(省・都市)と世界(国・都市)の1人当たりのGDPを比較して明らかになった事実 TOP31」
これは、モンゴル(40万円)の2倍近く。また、都市別で言えば、中国国内でも有数の高級取り都市として、オルドス市(257万円)は北京市(211万円)以上に高く、包頭市(193万円)も、北京市と肩を並べられるレベルである。
特にオルドスは資源が豊富な都市で天然ガス、石炭、カシミア、風力発電など何でもあり、1人当たりのGDPが高くなっている。
また人口に関しても、内モンゴル自治区の人口は2471万と、モンゴル(307万人)の10倍近くもある。とはいっても、内モンゴル自治区人口のすべてがモンゴル人というわけではない。人種分けをすると、このうち漢族(79%)、モンゴル族(17%)、満州族(2%)となる。
つまり、420万人程度のモンゴル人が住んでいるわけだ。なのでモンゴルよりも100万人も多い。とはいっても、モンゴルも出生率が高いので、2050年には人口が402万人程度になるという予測もある。
また2050年頃には、内モンゴル自治区の人口が減って漢族だらけの自治区になるかもしれないので、人口に関してはモンゴルも、内モンゴル自治区のモンゴル人人口も同等と言えるかもしれない。
https://www.populationpyramid.net/mongolia/2050/
そして、モンゴルと内モンゴル自治区の違いはもう一つある。それは同じモンゴル語でも表記文字が違うことだ。
内モンゴル自治区ではモンゴル語が失われてゆき、モンゴル語を話す人口が減少してきている一方、表記文字は伝統的なモンゴル文字を維持している。
一方モンゴルではロシアと同じキリル文字を使用。一見、モンゴル語はロシア語に近い言語なのか?と錯覚してしまうが、これはソ連時代の名残。当時のモンゴル人民共和国は同じ社会主義国家として、ソ連の衛星国と言われていた。
現在中華人民共和国に完全に組み込まれてしまっている新疆ウイグル自治区のウイグル語も、モンゴル語のように公共の場所でアラビア文字を表記しているが、もともとウイグル語を表記する文字はモンゴル文字と同じものだったのに対して、現在はウイグル語はアラビア文字で表記されている。
というトリビアも忘れないでね。( ゚Д゚)
ちなみに、私は数カ月前、新疆ウイグル自治区のウルムチに行ってきたけれども、その時衝撃的だったのは、この地にはウイグル人だけでなく、中国北部にもあまり多いタイプではないモンゴル系の顔をした人たちも多いことだった。
道理でと思った。それは、ウイグル語とモンゴル語がかつては同じ文字表記だったことからもわかるように、13世紀、モンゴル帝国の勃興によりその支配下に組み込まれ、チャガタイとその子孫による支配が行われた。という歴史があるからだ。
つまり新疆ウイグル自治区とはウイグル人だけのものではなく、その昔に現在の新疆ウイグル自治区に渡ったモンゴル人のものでもある。という言い方もできるかもしれない。
なぜなら彼らにとってはそこが生まれた土地なのだからね…。
「新疆ウイグル自治区の「ウルムチ」にイケメン・美女が多かったことと、超監視社会になっていた件」
⑤日本人と正反対の性格
日本は農耕民族と言われ、畑仕事などでご近所さんと仲良くする必要があったことから、協調を重んじる文化となっている。これはインドネシアのスンダ人にも感じたことだ。
一方遊牧生活を長く続けていたモンゴル人は個人主義的な考え方の人が多いという。つまりそれほど他者と強調する必要がないからだろう。家畜さえ育て、住む場所を移動して自分が属するファミリーとうまくやっていけば生きていける。という部分では日本人とは、正反対なのかもしれない。
またモンゴル人は、中国国内でも、モンゴル人とチベット人は物凄く個性が強すぎて疲れると言われているくらいで、自我が強い。とも言われている…( ゚Д゚)
ので、日本人が思うキツいイメージがある中国人より更に上を行くのがモンゴル人。と思っておいてもいいかもしれないね…。
またモンゴル人は車を運転すると馬に乗っているかのように暴走してしまうので危ないとか、日本企業がモンゴルに進出してもルールが度々変わってやりづらいという話も聞く。
いずれにしても、10月に一度日本に帰国するので、その際、モンゴルかドバイ経由で帰ろうと思っている。モンゴルになった場合、もっと詳しくモンゴル人についての情報もここに付け足していこう。
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