12言語目の学習に突入のマルチリンガールです。(@_multilingirl_)さて、現在エジプトにアラビア語留学をしにきているので、2015年から学習を開始したアラビア語についてこの記事で書いていきたいと思う。
そう。ずばりエジプト方言とフスハー(fusha)どちらを学ぶべきかということだ。結論としては、フスハーを学びそのあとにエジプト方言を学ぶのが正しい順序と言える。
けど、なぜそうなのか。ということや、英語圏での意見なども踏まえじっくりこの意味を理解していきたいと思う。
①エジプトの人口は、突出している
アラビア語圏は西は北アフリカのモロッコから、東はUAE(アラブ首長国連邦)まで、かなりの国で公用語に指定されている国連用語だ。
それに加え、南インド、東南アジアなどのイスラム教徒の間でも、神の言語として扱われ、ちょっとした表現なら知っている場合も多い。
これは以下の記事でも書いた。
で、これだけ広いわけだけど、この中で一番人口が突出して多いのはエジプト(1億人)である。以下の記事でも書いたけど、サウジを含めない湾岸諸国(クウェート、カタール、バーレーン、UAE、オマーン)の人口を全部合わせても、エジプト最大の都市圏カイロ(2000万人)と同じである。
かといって、西ヨーロッパに近いモロッコやアルジェリアはフランス語の影響も強く、これら全体を合わせたマグレブ(アルジェリア、リビア、モーリタニア、モロッコ、チュニジア、西サハラ)の人口は、エジプトと同等である。
またエジプトは地理的にアラブの中心に位置し、文化・エンタメの意味でもアラブ全域で人気なので、大阪がテレビ(ドラマなどの)の中心になって関西弁がドラマや映画で溢れているイメージを持つと分かりやすいかもしれない。
つまり方言を勉強してできるだけ多くの人口と話したいのであればエジプト方言がいいに決まっているのである。
とはいっても、ヨルダンや湾岸諸国、モロッコなど、その国の人としか関わらないという人はもちろんそれぞれの方言を勉強したらいいだろう。
②フスハーは古典ではない
で、フスハーと言えば、古典アラビア語ともいわれたり、MSA(Modern Standard Arabic=現代標準アラビア語)とも言われたりする。
日本では古典を使ってニュースを流したり、本を書いたり、ビジネスをしたり、テレビやアナウンスを流したりはしないので、日本人がイメージする古典は既に死んでいて、フスハーとは比較の対象にならない。
アラビア語圏ではどこの国に行っても、例えばアルジャジーラなどを視聴するときはフスハーで話されているし、新聞や書籍なども、フスハーで書かれている。
つまり生まれ育ってすぐに両親が話す方言を身に着けるが、その後、義務教育でフスハーを少しずつ身に着けていくということであり、フスハーのレベルが高いほど、教養が高いと解釈していいだろう。
なぜならフスハーで語彙力があればあるほど、多くの本を読むことができ、賢くなれるからである。
とはいっても、注意したいのが、エジプト人とサウジ人が一緒に話す場面になったとき、フスハーは使わない。
③エジプト方言と、フスハーの違い
アラ語学習者にとって現代標準アラビア語を最初に学ぶことは重要。いわゆるアーンミーヤ、エジプト方言などが簡単に思えてくる。省略しても通じるし語順も堅苦しくないし発音も簡単。この感覚が最近よくわかってきた。〜できる?
ハル ユムキヌ(アスタティーァ)
↓
ムムキヌだけで⭕️#アラビア語 pic.twitter.com/gyjLh339uW— マルチリンガール@🇹🇷(12言語目学習中) (@_multilingirl_) February 4, 2020
エジプトはそもそもイスラム教徒の国ではなかった。610年頃から誕生するイスラムに征服される前までは、ローマ帝国に組み込まれたこともあったし、1517年-1867年の間は、オスマン帝国に属していた。
その上、エジプトにはコプト語(4世紀以降のエジプト語でギリシャ語の影響を強く受けた)という基層言語もあった。このコプトというのはコプト教(エジプトにあるキリスト教)などにも使われる言葉だけど、ギリシャからみたエジプト人をコプトと言う。
よってエジプト方言は歴史的に多くの人種がミックスしまくってできているのでエジプト方言にもそれが表れていて、ギリシャ語、英語、フランス語、アラビア語などの語彙がミックスして使われているのがポイント。
一方フスハーは全て単語もアラビア語だ。つまり西洋語の単語も多少は入っているエジプト方言のほうが簡単。
とはいっても、現在のエジプト方言は、フスハーと多くの単語を共有している。違いはもちろんあり、それはフスハーのほうが文法が難しいということである。
この本を見ても分かるかもしれない。右にあるフレーズは、左側がフスハーで右側がエジプト方言。フスハーのほうがちょっとばかし単語が多いことが分かる。
で、
・fi hammam?(英語にすると、at toilet)→エジプト方言
・hal yujad hammam?(Do you have toilet)→フスハー
このように、どちらも「トイレはありますか?」という表現を出してみたけれども、エジプト方言のほうが簡単なのである。
なので、数年間ダラダラとだけれどもアラビア語の文法に慣れ親しんできた私にとっては、エジプト方言は多分3ヶ月もあればかなり流暢になれるのではないか。と思い始めてきている。
やはり英語ができる人がフランス語の単語の50%が分かるというように、アラビア語とエジプト方言はどちらとも同じアラビア語なので、もっと簡単にできるようになるのである。
で、フスハーとエジプト方言のおおまかな違いを以下にまとめておく。
フスハーは、VSO、つまり、最初に動詞が来て動詞の語尾に私はを意味する部分がくっついていることが好ましいとされているのに対して、エジプト方言では英語の「I」のようにアナ(私は)から始められるSVO言語である。
なので英語に慣れ親しんだ人にとっては発しやすい。しかも、フスハーは上にも書いた通り、動詞の語尾に私はがくっつくのに対して、エジプト方言の場合は、動詞の語尾に、目的語がくっつくのでこっちのほうが簡単。
また疑問形も少し変わってくる。フスハーの場合は英語と同じように一番最初に来るのだけど、エジプト方言の場合は、一番最後に来る。つまり、~は何ですか?という日本語の感覚に近い。
英語で表せば、
What is this?(フスハー)が、This what? (エジプト方言)のような感じだろうか。
もう一つ、少し分かりづらいけど、フスハーの場合、否定形の際、lā aʿrif(No know=I don't know)のように、最初に否定がつく。これは英語のように頭に否定が来るのと同じ。
一方エジプト方言は、動詞「ʿraf」をmaとshで挟む。つまり、maʿrafshというようになる。ここは少し複雑に思えるかもしれない。
そして、最後に、ing 系は動詞の前に、bをつける形となる。→ana ba'ra al kitab da.(私はこの本を読んでいる)
また、以下、私がカタカナでまとめた言い換え
What are the grammatical differences between Egyptian Arabic and Modern Standard Arabic?
④フスハーが読めても話せない人は多い
フスハーはメディア、本、新聞などで使用されているとは言え、日常生活では使うことがないので、話せない人も多い。
これは英語のリスニングはできるけど、英語が話せない日本人の感覚に近いだろう。なので、フスハーを話したがらない人がいたとすれば、しっかり勉強していないのでフスハーの文法が分からない層の人たちである。
私にフスハーを話してくれる人はやはり英語ができる人のほうが多い。それだけアラビア語圏でもフスハーは格式が高く、皆ができるわけではない言語だという認識も必要かもしれない。とはいっても日常アラビア語会話に出てくるような旅先で聞いたりする質問程度であれば皆普通に理解してくれる。
つまり、フスハーをある程度勉強して慣れ親しむことで、あとは単語をエジプトの固有単語に変えたり、文法を省略するというイメージでいいかもしれない。
ちなみにラテン語から派生したフランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語は、ラテン語=フスハーで、そこから派生した湾岸方言、モロッコ方言、エジプト方言、シリア方言などというイメージに近い。けどやはり一つ違うのは、フスハーは今でも生きているし、会話では使わなくても毎日耳にするようなものであるということだ。
⑤方言から始めるべき人
この記事を読んでいる人は、おそらく英語も勉強しなければならないのに、フスハーとエジプト方言どっちもやらなければならないなんて辛い。と思っている人かもしれない。
多くの人が英語を片付けないうちに違う言語をやってしまうのでこういうことになってしまうのだけど、エジプトに数年住むことが決まっている人ならエジプト方言を学ぶべきだろう。
別にフスハーでニュースを聞いたり、本を読んだりしなくても良くて、エジプト人と生活が楽しめればいいだけだ。
⑥私はフスハーを選んだ
エジプト人と楽しく会話を楽しみたい。それは確かにエジプトに来て強く思った。彼らは非常に人懐っこくて話しているだけでも楽しい。また押しが強いのでそういうのが好きな日本人にはたまらない国民性でもある。それは以下でも紹介した。
「旅行後、日本人女子がイスラム男子やバリ島男子(アラブ含む)に惹かれる理由」
しかもエジプト方言のアラビア語ってなんだか音もかっこいい。こんな言語真似できたら、絶対かっこいいだろうなって思っちゃうほどだ。
フランス語なんかより絶対にかっこいい。私はそう思っている。
けど、私はエジプトに何年も住むつもりもないし、エジプトにはかなりハマったけど、コーランが書かれている現代標準アラビア語(古典アラビア語)に興味がある。
また私はジャーナリズムが好きなのでアラビア語で多くのメディアを視聴するのが好き。しかもエジプト方言はフスハーよりも端折っている言語だということもエジプトに来て再確認した。
すると、フスハーをもっと勉強してからエジプト方言を簡単なレベル程度学習するほうが良いと判断したわけだ。
なぜならエジプトで絡む人って結構英語ができる人も多いし、彼らは英語を話したがるわけなので…。
⑦英語圏もフスハーを勧めている
Egyptian Arabic vs. Modern Standard Arabicというアラブアカデミーという権威あるサイトでも、エジプト方言は簡単なのでフスハーできちんとアラビア語を勉強するべきと言っているし、quora のスレッドでも、Is it better to learn standard Arabic or Egyptian Arabic?やはり、ほとんどの人がフスハーを先に勉強するべきだと回答。
ちなみにエジプトでもよく言われるけど、フスハーで話すと笑われる。彼らにとっては話すアラビア語は方言なわけなのだから、当然だ。しかも彼らはしきりにアラブの中心である俺らのエジプト方言を学べ!と強く勧めてくる。でもここに簡単に惑わされてはならない。
また面白いことに、エジプトの書店でさえ、トラベル会話(アラビア語版)はほとんどがフスハー。旅行で使う程度の質問などは、フスハーで言えばいい。けど、エジプト方言で返ってくる場合があるということも覚えておくといいかもしれない。(笑)
⑧フスハーの利点をまとめる
・難しいがきちんと文法を覚えると方言が簡単に見える
・ニュースや新聞で何を言っているのかわかる
・教育を受けられる層が今後増えていくと、もっと通じる
・教養のある層との繋がりが増える
将来的に見ても私はフスハーのほうが、方言よりも勉強するべきだと思う。
⑨フスハー完全200フレーズ暗記
私の紹介した以下の方法でもアラビア語を学ぶことはできる。けれども、忙しく時間があまり取れなく、人の助けを借りたいという人は、プログラムを用意している。
「エジプト大使館主催のアラビア語講座、4か月でたったの10000円!」
とはいっても現在、エジプトに旅行、滞在していた方を中心にこのレッスンへの応募者が多い状態なので定員に達している場合もあるので、まずはご連絡いただけると助かります。
「1名限定。アラビア語3ヶ月で「頻出200~300フレーズ」暗記サポート
ダラダラとレッスンして先生の話聞くよりも、どんどん暗記して発してもらうので、ほとんどの方がこのレッスンで200フレーズ覚えて満足されて終了されています('ω')ノ
さて、今日はこのくらいにしておこう。fromカイロ