ヒンディー語の重要性という記事を数年前に書いた。今でも検索にひっかかり読まれている模様。そんな私は現在、インドからずっと北部に行ったキルギスに身を置いている。ここにはインド人が多く、またインドは真下にある国なので、やはり意識がそっちに向かっているのかもしれない。
「ヒンディー語(ウルドゥー語)を勉強するメリットと需要、将来性」
さて、2011年の数字になるが、今のところこの数字が一番最新のようなので、私が今後、ヒンディー語強化期間に入るのに向けての調査として?この記事を残しておこうと思う。
インドは国土が広く、宗教、人種なども多様なので、その話されている言語系統も非常に幅が広いのが特徴。また、優秀、そうでないに限らず、世界のどこに行ってもインド人がいるので、こういう、インドにあるいくつかの言語の特徴を知るだけで、彼らの理解にもつながり、話題のネタにもなるだろう。
「「ジュガール」で豊かに?世界に散らばり、一部の国を支配するインド人(印僑)が多い国 TOP25」
というのも民族を調べるというよりも、多くの国では話す言語によって自分のアイデンティティを考えている人が多いからでもあると思う。その言葉を少し理解するだけで話が弾むという経験を何度もしてきた。
インドにはヨーロッパ以上に多様な人種がおり、言語系統だけが民族を表すわけではないが、言語系統を知ることでおおよその民族の移動をイメージすることができる。
ヨーロッパでさえも、95パーセント以上は、すべてインド・ヨーロッパ語族の言語なのに、インドの場合は、以下の4つもの言語系統が混ざり合っている。そんな国あるだろうか?
シナ・チベット語族=中国語などに近い
オーストロアジア語族=ベトナム語などに近い
ドラヴィダ語族=インド固有(特に南部に集中)
インド・ヨーロッパ語族=北部の言語に集中。ヨーロッパの言語
こういう理解でいいと思う。そして、インドには、22の公用語がある。それらには、「憲法第8附則指定22言語 ●×」のように、印をつけていくことにする。
31位 コクバラ語
話者数 101万人(2011年)
言語系統 シナ・チベット語族
話されているエリア トリプラ州、西ベンガル州、アッサム州、ミゾラム州、バングラデシュ、ミャンマー
憲法第8附則指定22言語 ×
コクバラ語とは、ミャンマーのビルマ語と同じ系統で、バングラデシュにも40万人ほど話者がいる模様。インドで話されている言語で近い言語に、シッキム語がある。話者人口が7万人(2001年)ほどとされ少ないのでランキングにも入っていない。
以下、コクバラ語を教えているインド人?(顔は中華形のようにも見える)があげている動画。
30位 ムンダリ語
話者数 112万人(2011年)
言語系統 オーストロアジア語族
話されているエリア インド、ネパール、バングラデシュ
憲法第8附則指定22言語 ×
ムンダリ語とは、インドでは大変珍しい、オーストロアジア語族の言語。この語族の言語の多くは、ベトナム語やクメール語。またマレーシアにも少数民族によって話されているが、マレー語自体は、オーストロネシア語族なので違う言語である。名前が、オーストロアジア語族と似ているので注意。
以下、ムンダリ語をヒンディー語と英語で教えているチャンネルも発見した。
learn our mundari language in hindi,english
29位 ガロ語 (シナ・チベット語族)
話者数 114万人
言語系統 シナ・チベット語族
話されているエリア メーガーラヤ州、アッサム州、バングラデシュ
憲法第8附則指定22言語 ×
ガロ語というとフランスで話されているガロ語 (ロマンス語)とは違うので注意。なんと同じ名前をした言語があるとはこの記事を書いていて知った。とはいってもカタカナ表記すると、このインドで話されているガロ語(Garo language)に対して、ロマンス諸語のガロ語(Gallo language)とはやはりスペルが違うので英語表記にすると同じ名前ではないことも分かった。
ガロ語で数字を数えたような動画も発見。やはり、これもまた中国人のような顔をしたインド人である。
Counting in Garo/A.chik One to Ten
28位 ホー語
話者数 142万人
言語系統 オーストロアジア語族
話されているエリア ジャールカンド州、オリッサ州、西ベンガル州
憲法第8附則指定22言語 ×
ホー語は、ジャールカンド州では、追加の公用語に指定されている。とはいっても影響力はほとんどなさそうなイメージ。
27位 カシ語
話者数 143万人
言語系統 オーストロアジア語族
憲法第8附則指定22言語 ×
カシ語とは、主にインドのメーガーラヤ州に居住するカシ族の人々によって話され、話者数の多くは、メーガーラヤ州で865,000人ほどと言われている。メーガーラヤ州に州境をもつアッサム州やバングラデシュのインドの国境近くにも話者がいる模様。ホー語や、ムンダリ語と同じように、オーストロアジア語族
26位 ボド語
話者数 148万人
言語系統 シナ・チベット語族
憲法第8附則指定22言語 ●
ボド語は、北東インドとネパールに住むボド族が話す言語。アッサム州の公用語の一つである。さすが、シナ・チベット語族もあってか、見つけた動画でボド語を話している人はインド人なのにもかかわらず東アジア系の容貌である。
25位 マニプリ語
話者数 176万人
言語系統 シナ・チベット語族
憲法第8附則指定22言語 ●
マニプリ語(メイテイ語、マニプル語、マニプール語、マニプリー語などとも呼ばれる)はインド北東部のマニプル州の主要な言語。 とも表記される。 話者は、インドのアッサム州、トリプラ州、バングラデシュ、ミャンマーにもいる。
文字表記はベンガル文字を使用しているが、 マニプリ語の音韻組織に合わないところもあるため、18世紀まで使われていたメイテイ文字(マニプル文字)を復興させる努力がなされているようだ。この動画でも、マニプリ語は独自の文字を持っていると言っていた。
24位 トゥル語
話者数 184万人
言語系統 ドラヴィダ語族
憲法第8附則指定22言語 ×
トゥル語の動画を聞いている限りは、結構優しい響きだ。
23位 カーンデーシュ語
話者数 186万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ×
カーンデーシュ諸語(カーンデーシュしょご)はインド語派に属する小言語グループである。ビリー語地域とマラーティー語地域の間にある。カーンデーシュ諸語は3つ言語からなる。
22位 クルク語
話者数 198万人
言語系統 ドラヴィダ語族
憲法第8附則指定22言語 ×
クルク語は、ドラヴィダ語族に属する言語。話者はオラオン族、アディワシ族の人々であり、インドのビハール州、ジャールカンド州、オリッサ州、マディヤ・プラデーシュ州、チャッティースガル州、西ベンガル州、およびバングラデシュ北部に居住する。ブラーフーイー語、マルト語(パハリア語)と言語分類的に近い関係にあり、クルク語は、別名オラオン語と呼ばれる。
この動画を見て感じたのは、やはりインド・ヨーロッパ語族の言語ではないので、話している人もアジア人に近い顔立ちに見える。
21位 コンカニ語
話者数 225万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
コンカニ語は、1987年以来ゴア州の公用語であり、1992年以来インド憲法の第8付則言語の一つでもある。ゴア州は、16世紀から20世紀半ばまでポルトガル領インドの一部であるので、一応この言語の存在くらいは知っておいた方が良いと思われる。
なので、こうやってコンカニ語を学ぶチャンネルがあるくらいなのである。→LEARN KONKANI With Saurabh
20位 ドーグリー語
話者数 259万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
ドーグリー語は、ジャンムー・カシミール州のジャンムー地域、パンジャーブ地域、ヒマーチャル・プラデーシュ州、カシミール地域で話されている言語。 ジャンム・カシミール州の公用語の一つでもある。
簡単なフレーズを紹介した動画は以下。
19位 シンド語
話者数 277万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
シンド語は、パキスタンにあるシンド州の公用語。パキスタンなどを合わせると、3000万人以上に話されている言語。
18位 ネパール語
話者数 292万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
ネパール語は、ネパールの公用語。インドではシッキム州などにも話者がいる。ネパールも合わせると1600万人ほどに話されている言語である。
17位 ゴーンディー語
話者数 298万人
言語系統 ドラヴィダ語族
憲法第8附則指定22言語 ×
ゴーンディー語は、マディヤ・プラデーシュ州、グジャラート州、アーンドラ・プラデーシュ州、マハーラーシュトラ州、チャッティースガル州およびそれらの州が隣接する地域に居住している。
とはいっても、ゴーンディー語はゴンド族の半分程度が話しているに過ぎない。とも指摘されている。
16位 カシミール語
話者数 679万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
インド語派の大部分の言語の語順が SOV であるのに対し、カシミール語はドイツ語と同様のV2語順を取る。
ちなみに、カシミール地方は、14世紀以降イスラム国家の支配を受け、イスラム化が進んだ。1907年まではペルシア語が公用語であり、それ以降はペルシア語の影響を強く受けたウルドゥー語が公用語になった。このため、カシミール語はペルシア語の強い影響を受けている。キルギス語と同等程度の人口を持つ。やはりカシミールという国ができてもおかしくない感じもする。
この動画では、カシミール語の音がどんな感じなのか。という感じで基本的な数字や、読み物を話している。発音を聞いてみたい人にはおすすめ。個人的には聴き心地が良く、耳に優しい言語な気がする。
15位 サンタル語
話者数 736万人(2011年)
言語系統 オーストロアジア語族
憲法第8附則指定22言語 ●
サンタル語は、インドのジャールカンド州、アッサム州、ビハール州、オリッサ州、トリプラ州、西ベンガル州に、またバングラデシュ、ネパール、ブータンに話者がいる模様。この動画でもサンタル語の音が聞ける。
14位 ビリー諸語
話者数 1041万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ×
ビリー諸語と一緒くたにされているが、日本語版wikiはなかった。ビリー人によって話されている言語のようだ。ちなみに、ビリー族の儀式映像は以下。
|| भील जनजाति समूह के संस्कार || Rituals of Bheel tribes ||
13位 マイティリー語
話者数 1358万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
マイティリー語の名前は古代インドのガンジス東部のミティラー王国が由来であり、インドビハール州のほか、ネパール南部、タライ平原(マデス地方)で話される。ネパールではネパール語についで話者が多く、国民の12.1%が話しているというのもポイント。
簡単なフレーズを覚えたい場合は以下の動画。
12位 アッサム語
話者数 1531万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
アッサム語は、アッサム州以外にもアルナーチャル・プラデーシュ州をはじめインド北東部やブータン、バングラデシュに話者が存在する。話者の人口はインド以外も合わせれば2000万ほどいる。この動画でもアッサム語の音がわかる。
11位 パンジャーブ語
話者数 3312万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
パンジャーブ語は、インドでは3300万人程度であるが、パキスタンも合わせると、話者数で言えば、南アジアの言語のうち、ヒンディー語・ベンガル語に次ぐ規模になる。つまり、世界的に見ても大言語ではあるが、パンジャーブ語の社会的な地位は必ずしも高くない。のもポイント。
10位 マラヤーラム語
話者数 3483万人
言語系統 ドラヴィダ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
マラヤーラム語は、南インドのケーララ州などで話される言語である。
9位 オリヤー語
話者数 3752万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
オリヤー語は、ベンガル語、アッサム語などと近い関係にある言語。西ベンガル州にも話者が相当数いる。西インドグジャラート州の都市スーラトは、オリッサ州からの労働者の増加によりインドで二番目にオリヤー語話者の多い町。
8位 カンナダ語
話者数 4370万人
言語系統 ドラヴィダ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
カンナダ語のポイントは、ドラヴィダ語族の中でもっとも古い言語の一つ。と覚えておけば良いと思う。ちなみに、カンナダ語では、「iru」は、日本語の「いる」と同じだよね。という動画も話題になっている。
Similarities Between Japanese & South Indian Dravidian Languages
7位 ウルドゥー語
話者数 5077万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
ウルドゥー語はパキスタンで話されている言語。パキスタンも合わせると、7000万人のネイティブがいる言語。また、パキスタンの公用語はウルドゥー語だが、パキスタン人全体でネイティブなのは意外と少ないのもポイント。
6位 グジャラート語
話者数 5549万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
グジャラート語は、名詞は、男性名詞・女性名詞・中性名詞の3つの性を持つのがポイント。
5位 タミル語
話者数 6902万人
言語系統 ドラヴィダ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
インドの言語といえば、英語、ヒンディー語、タミル語と思っている人が多いのだけど、なんと5位となっている。インドでは南部で多くの言語がドラヴィダ語族ということからもわかるように、北部とは人種的に違うと言われている。
「インド人が白人のような顔をしている理由と、インド北東部に日本人のような民族がいる理由」
そのため、タミル語はヒンディー語のライバルとも言われることがある。この言語の話者数は、韓国と北朝鮮を合わせた韓国語人口ほどあり、一国の言語にも相当する数。
同じドラヴィダ語を代表する言語にテルグ語があるが、テルグ語がアーリア人などの影響を受け、サンスクリット語、ヒンディー語、ペルシア語、アラビア語などの借用語なども多いのに対して、タミル語はそのような影響が少ないのが特徴。
ちなみに、タミル語の「illai」と日本語の「いない」が似てると話題になっていたりもする。
4位 テルグ語
話者数 8112万人
言語系統 ドラヴィダ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
テルグ語は、インド固有の言語であるドラヴィダ語族の中でもタミル語を超えて、一番話されている言語。これは覚えておいた方がいい。
3位 マラーティー語
話者数 8302万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
インドといえば、ヒンディー語とタミル語と思っている人も多いが、このマラーティー語の人口が多いのはあまり知られていないかもしれない。マーラーティー語はこの地図を見てもわかるように、インドの真ん中のエリア、ムンバイ(インド最大の都市)を周辺としたエリアで話されている言語。
独自のメディアももちろんある。ニュースで勉強したい人は→TV9 Marathi
2位 ベンガル語
話者数 9723万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
ベンガル語は、バングラデシュの公用語ではあるが、インドでも第2位の話者数を誇る言語。将来はかなり話者数が多くなると予想されている言語でもある。つまり、SNSなどが浸透した時代においては、ブランディング化できるチャンスともなる言語。
1位 ヒンディー語
話者数 5億2834万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
「ヒンディー語(ウルドゥー語)を勉強するメリットと需要、将来性」
やはりインドといえばヒンディー語。2位のベンガル語とはかなりの差がある。ヒンディー語については詳しく書いた記事があるので、詳細は割愛。けれども、この地図が示すように、ヒンディー語というのはインド全体の言語というよりは、北部の多くを占めるエリアで話されている言語である。とはいってもインドでも一番権威のあるヒンディー語は南部でも教育を受けている人には通じるので、インドに行く場合は、まずヒンディー語を覚えるのが先ということを、インドに20回以上言っている生徒さんがいつも私に言っている。
サンスクリット語(おまけ)
話者数 2.8万人
言語系統 インド・ヨーロッパ語族
憲法第8附則指定22言語 ●
ヒンディー語の単語を調べていると、サンスクリット語の語源がよくでてくる。英語を学んでいるときにラテン語の語源が出てくるのと同じだ。ラテン語や、人工言語であるエスペラント語のように普通は話されない言語だけれども、2021年には白水社から、ニューエクスプレスプラス サンスクリット語 《CD付》が発売されたりもした。
一応この言語も、使われていないにしても、インドでは公用語22に指定されているのも面白い。
インドにおいては権威ある言語であることは間違いない。ちょっと値段は高いが、かじってみるのもありかもしれない。
最後に
いかがだったでしょうか。インドではヨーロッパ以上に、言語系統、民族、人種が多様。これはこの言語数を見ても明らかであり、つまりその分、面白みのある国だということだ。また、ここに出てきた言語の多くは日本では学ばれていない言語だけれども、だからこそ、興味を持って追求して、自分から近づいてみるのもありかもしれない。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_languages_by_number_of_native_speakers_in_India