イスタンブールの郊外で1ヶ月、南トルコに位置するアンタルヤで2ヶ月プチ移住した時に感じたのは、トルコ人=ケバブの料理人のような、つまりアラブ色が強い顔立ちの人というイメージから、時にはヨーロッパに見えたり、時にはアジアに見えたりと、ものすごい不思議に感じていたことだ。
日本人からすればトルコ人の中にいるそれぞれの違いはすぐには分からないかもしれないが、それはトルコ人が韓国人とインドネシア人の違いを理解できないのと同じようなものであり、実際にトルコに数日いると分かってくる感覚。
とはいってもイスタンブールに3日くらい旅行で行ってもなかなか感じづらい感覚かもしれない。
私が最初にトルコに行ったのは、エジプトでの滞在を終えて、カイロ→イスタンブールというルートだったので、トルコに降り立った時、ものすごい洗練されている。と思ったものだ。それはやはり直前に行ったエジプトがトルコよりも洗練されている場所ではなかったからだろう。
さて、この記事では、そんなトルコにいる民族を、話されている言語順に整理した後、私が思っているいくつかの顔のパターンを紹介していきたいと思う。
というのも、民族といっても、話す言語によって自分たちのアイデンティティを保っている場合が多いので、話す言語ランキング=民族というふうに考えた方が分かりやすいからである。
では、ランキング順に見ていこう。
ソース
https://en.wikipedia.org/wiki/Demographics_of_Turkey#Ethnic_groups_and_languages
13位 ポントス人
話者人口 32万人(ギリシア語ポントス方言)
ポントス人は、北東部の黒海沿岸地域ポントス地方に歴史的に居住し、ギリシャ語のポントス方言を母語とする正教会信徒(ギリシャ人)。ポントスはギリシャ語で「海」を意味する。彼らの中心都市はトラブゾン。
ちなみにギリシャ人自体は、1910年には177万人(その当時の総人口の16%)だったのが、2017年には、3000人ー5000人に激減。
それにしてもギリシャから近いイズミルなどにギリシャ人が多いかと思ったら、トルコ北東部の黒海沿のトラブゾンが拠点になっているという点も面白い。
12位 ポマク人
話者人口 35万人(ブルガリア語)
ポマク人は、ブルガリア人のイスラム教徒を表す。つまり民族的にはブルガリア人。彼らはオスマン帝国支配下でもともとはキリスト教のブルガリア人だったが、イスラム教に改宗したブルガリア人の子孫。ポマク人という名前の由来が非常に興味深く、その意味は、ポムチェーン помъчен(拷問された) あるいは ポマガーチ помагач(占領者への協力者)に由来するよう。ブルガリ語を話し、トルコ系住民や他のイスラム教徒社と交わらないらしく、独自のアイデンティティを築いている模様。
11位 ガガウズ人
話者人口 41万人(ガガウズ語)
ガガウズ人といえば、ルーマニアとウクライナの間にあるモルドバに多く住む民族。そんなモルドバにはガガウズ自治区という場所もあるくらい。トルコ側の調査ではトルコ国内のガガウズ人の人口は41万人ほど。一方、もう一つの調査では、15000人ほどとなっていた。どうして調査によってこれだけ違うのか?というところを調べてみると、トルコに住むガガウズ人は、正式にはバルカン・ガガウズ・トルコ語を話す民族という定義で、厳密にいうと、ガガウズ語やトルコ語とは異なる言語であるようだ。
ちなみに、ガガウズ語は、トルコ語と同じ言語系統(チュルク諸語)なためトルコ人からみれば、兄弟。とみなされていると言える。
10位 ロマ
話者人口 50万人(ロマ語)
ロマ語を話す人口は、50万人 (1985年)。数字はかなり古いので、もっと減っているか増えている可能性もある。もう一つのソースでは、50万人〜250万人いるのではないか。というものもあった。さて、トルコはロマが多いルーマニアにも近いので、これだけ多くのロマがいてもおかしくはない。
ロマの起源は現在のパキスタンにあるムルターンだと言われている。また、ロマ語はインド・ヨーロッパ語族の言語であり、トルコ人からすれば同胞ではない。
9位 アゼルバイジャン人
話者人口 54万人(アゼルバイジャン語)
トルコ語とアゼルバイジャン語は近い言語と言われており、両者で85%くらいは通じるという。
例えば、こんな感じ。
日本語: 私の名前はりょうこです。
アゼル: Mənim adım Ryoko.
トルコ: Benim adım (ismim) Ryoko.
ほとんど似ている。つまり読む場合に限定すれば、もっとお互いに理解度が高いかもしれない。
英語: 今何時ですか?
アゼル: Saat neçədir indi?
トルコ: Saat kaç şimdi?
このフレーズに関しても少しの違いしかなく、トルコ人からすれば、アゼルバイジャンという国はトルコが一番優先するほど大事な同胞であるということがわかると思う。
トルコ人は自分たちはモンゴルあたりから中央アジアを抜けて、カスピ海を通り越してアゼルバイジアン→現在のトルコに来たと信じているので、特にカスピ海もあり外見も割と近く、言語も他のチュルク語の中で飛びっきり近いアゼルバイジャンは、トルコ人が兄弟と思っている国の中でもダントツトップに入る。
8位 イラク人
話者人口 72万人(アラビア語イラク方言)
1980年9月22日 〜 1988年8月20日まで続いたイラン・イラク戦争による流入と、2003年イラク侵攻による流入によりトルコ国内におけるイラク人が増加。とはいっても、イラン・イラク戦争による流入が最も多かったようで、その時の教訓をいかして、2003年イラク侵攻による流入は最小限にとどめたようである。
ちなみにソースによっては、トルコ国内におけるイラク人は、15万人ほどしかいない。というのもあった。
7位 チェルケス人(カバルド人)
話者人口 106万人(カバルド語)
チェルケス人(カバルド人)が話すカバルド語は、ジョージア北西部に位置するアブハジア自治共和国でも話されているアブハズ語と同じ、北西コーカサス語族に属する言語。つまり、ジョージア語との言語系統は一致していないが、簡単に考えてジョージアから来た人という意味で、ジョージア人と考えてもいいかもしれない。
これとは別にジョージア語を話す人たちは、15万人ほどいるとも言われているので、やはり隣国ということもあってジョージアからの人たちは多いということになる。
また、チェルケス人(カバルド人)は全世界に530万人ほどいるうち、200万人〜300万人ほどがトルコにいると言われている。とはいってもトルコ側からみた数字は100万人ほどになっているが・・。
余談だけど、私がジョージアのバトゥミから国境越えしてトルコに入った時、ジョージア人は物凄く田舎者で、トルコ人は大国の民族に見えたのを今でも覚えている。
6位 レバノン人
話者人口 113万人(アラビア語レバノン方言)
レバノンはトルコから近く、特にシリアとトルコの国境あたりに多く住んでいるとも言われている。また、ソースによっては、トルコにおけるレバノン人口をもっと低く見積もっていた。
5位 ザザ人
話者人口 115万人(ザザキ語)
ザザ人とは、ザザキ語を話す人たち。トルコ国内では115万人ほどがこの言語を話すよう。その多くはトルコ東部に集まっているようだ。
ザザ人の中には、キルマンジュキ語という言語を話す者もいるようで、どちらの言語もインド・イラン語派に属している。インド・イラン語派の代表的な言語といえば、ヒンディー語(インド)、ウルドゥー語(パキスタン)、ロマ語(ジプシーの言語)、ペルシア語(イラン)など。
このことがわかるだけでも、トルコ東部(ギュミュシュハーネ県、シャンルウルファ県、アドゥヤマン県)には、面白い組み合わせの人種のミックスが見れるかもしれない。というロマンもある。
4位 シリア人
話者人口 358万人(アラビア語シリア方言)
アラビア語シリア方言を話す人口は、なんと358万人。もともとトルコにいたシリア人もいるだろうけれども、そのほとんどが、シリア内戦により逃れて来た人が多いのだと思う。私も路上で暮らしているシリア人を何人も見て来た。また、トルコではシリア人が多い都市は危ない。と言われる一方で、優秀なシリア人はビジネスにも長けているため、トルコで成功している人も多いと聞く。
3位 チュルク系クルド人
話者人口 588万人(トルコ語)
チュルク系クルド人とは、クルド語を話すクルド人と区別するために使用される言葉。クルド人としての民族性は保ちながらも、トルコ語を母語としていきている。特にトルコ人とクルド人の異人種間結婚が、270万人ほどもいると言われているので、もうこの辺は複雑。。
2位 クルド人(クルマンジー)
話者人口 812万人(クルド語)
2020年3月に行われた調査ではトルコ全体の20.4%が自らをクルド人と名乗っているという情報もある。3位のトルコ語を話すクルド人と2位のクルド人を合わせると、1500万人いかないくらいなので、だいたいそのくらいなのだろう。
つまりトルコでは5人に1人がクルド人。トルコに行って、いろんな人たちを見て来たが、この知識がない頃だったのでどれも同じトルコ人だと思っていたが、私もたくさんのクルド人をこの目でみてきたということになる。
ちなみに、これを日本で考えてみると、5人に1人が韓国人だったらどうだろうか?そういうふうに考えれば恐ろしいことがわかる。この地図を見てもわかるようにトルコの西に行けば行くほどクルド人率が上がる。ちなみに、クルド語も、ザザキ語と同じように、イラン語派に属している。
1位 トルコ人(トルコ語)
話者人口 5340万人(トルコ語)
トルコ語を話す人口は5340万人。とはいっても母語レベルで話す人口なので、実際はもっと多い。と思う。
まとめると・・
言語別に見ていったのだけど、この中で気になったのはクルド人の多さ。1500万人近くいるのではないか。トルコがクルド人に対して物凄い危機感を感じているのがわかる数字。これは日本に例えていうのなら、九州の1300万人の人口がすべて韓国人くらいの勢い。
次に、アラビア語を話す人たちの多さである。これは難民としてやって来たというのもある。またトルコ東部におけるアラビア語の話者人口がものすごく増えているのもポイント。
上のアラビア語方言(レバノン、イラク、シリア)を全て合計すると、500万人近くの数字になる。→上の地図では、トルコ南部の赤くなっているところが、アラブ人率が非常に多い地区。
https://en.wikipedia.org/wiki/Minorities_in_Turkey
特に、トルコ南東部のアダナあたりにいくとアラビア語を母語とする人口の率がグンとあがる。まさに西トルコのアラブ化である・・。→クルド人のほうが断然多いけど。
で、以下より、顔のパターン。
タイプ1(完全ヨーロッパ型)
このタイプはトルコで一番目立つタイプ。特にイスタンブールなどの大都会の地下鉄などではかなり目立つ。身長が高く、けれどもどことなく完全にEUで見るような感じの平均顔ではないのが特徴。こういうトルコ人もいるんだ。という感じ。
トルコの音楽を聴くと、ダンス系ミュージックのイケイケのお姉さんはだいたいこのタイプだと思う。
また私はロシア系の女性っぽい人も何度か見た。トルコはロシア人にとっての観光地なので観光客はたくさんいるが、私がたまたま理由があって入った宝石店で話したトルコ人女性はトルコ人男性と結婚していると言っていたので、ロシア人ではなくトルコ人なのだろう。
調べてみると、トルコは昔ブルガリアなどとも繋がっていた時期があったようで、オスマン帝国時代にスラブ人も取り入れていた名残からなのかなと思う。ブルガリア語を話すポマク人もいれば、トルコ人に同化していったスラブ人も多いのかもしれない。
タイプ2(完全中東型)
中東系といっても、イラク、サウジアラビア、エジプトなど範囲は広いのだけど、簡単にいえば、顔立ちが非常に濃く、髭が濃いめの人たちと言えばいいだろうか。中には本物のアラブ人も多いので、トルコ人なのかアラブ人なのかは区別がつかない。
この話をトルコ南部で知り合ったモロッコ人に話すと、その彼はベルベル人で、アラブ人とは全く違う、もっというと割と東アジア系にも近いような顔立ちなのだけど、その彼でさえ、トルコ人だと思われるよう。その理由はトルコ人自身が、トルコには多様なバックグラウンドの人たちがいるので、あからさまに東アジアから来たよね?とか、あからさまな黒人ではない限り、トルコ人と見なすのだそう。
「白人とアラブ人(ベルベル人)のハーフなのですか?に怒りの声も。スペイン人が認めたがらない理由」
タイプ3(中東よりもやや薄い系)
このタイプがトルコ人の多くを占めると思う。ヨーロッパ系にも見えないし、中東系にも見えない。ある意味、同じ経度にあるロシアも、ヨーロッパ人からすればヨーロッパ系にも見えないし、アジア系にも見えないという感じなので、その南版と考えればいいかもしれない。
スラブ人を濃くした感じ?と言えばいいのか、なんなのかうまく説明できない。
タイプ4(中央アジア系が混ざった感じ)
完全な中央アジア人型は非常に少ない。つまり東アジア系かな?と思えるような顔立ちは、イスタンブールのショッピングセンターをかなり回っても、本当に数える程度だった。
フィリピン人を見かけた時に、一気に親近感を覚えたくらいである。そのくらい東アジアや東南アジア系の顔立ちは少ないのだけど、中東よりもやや薄い系の顔立ちに、さらに中央アジア系の薄さを入れたような顔立ちの人も多々いた。
わかりやすく言うのなら、ウズベク人に少し近い感じだと言えばよいだろうか?ウズベキスタンとキルギスは地理的に隣にあるにもかかわらず、ウズベク人は西洋寄りの顔。キルギス人は完全に東アジア系の顔だったりするので、そこもまた面白いけど・・。
なのでこのタイプの顔立ちは、日本人からみれば西洋人扱いなのだけど、西洋人やアラブ人の顔立ちも多いトルコからすると、東アジア系の顔に見えるのかもしれない。
※ちなみにウズベク人の中にはもともとタジク人だった人たちも多いので注意が必要。。
「親日ウズベキスタン人と日本人は似てる?両国が持つ共通の話題と、関係の重要性、ハプログループの種類」
タイプ5(ギリシャ型)
南欧系と呼べばいいだろうか。毛は多く、目が大きく、南ヨーロッパにいそうな感じの顔立ち。私が思うに、トルコにおいてギリシャ系の顔立ちをした人たちは、偉そうにしている感がある。なんだろう。タイプ1(欧米型)にも近いのだけど、タイプ5はそれに加えて毛深さが目立つといった感じだろうか。
最後に
トルコといえば、チュルク語を話す人たちの中では中心的な国なので、私はキルギス人も結構多いのではないかと思っていた。実際キルギス人たちは公用語ともなっているロシアのモスクワか、同じ言語系統でもあるトルコのイスタンブールに出稼ぎに行くと言われている。
「住んでみて分かった「キルギス人」の外見(ハプロ)と、性格・気質 TOP5」
イスタンブールとビシュケク、アランヤとビシュケクなど、トルコとキルギスは定期便の往来がきちんと整備されているにもかかわらず、人口ランキングでは出てこなかったのは謎。
唯一あった情報として1600人ほどのキルギス人がトルコに暮らしているというものを見つけたが、実際は出稼ぎ労働者としてもっと多いような気がしている。