近年、リモートワークの普及や、PCだけで仕事ができる環境の人も増えたため、ノマドとして海外で生活する人も増えている。私もその一人だ。私の場合、ロシア語圏やチュルク語圏にいることが多いが、その中でもまだ行ったことがない国もあり、その一つとして最近アゼルバイジャンが気になっているところだ。
twitterなどではジョージアでノマド生活!みたいなキラキラ系が流行り出してちょうど2年になる。私もかつて2020年の春くらいに、こんなに安くて高層階の部屋に住んでまーす。みたいなツイートをしていたことがあったけれども、そんな私の本命は、キルギスである(笑)
「格安タワマン都市、ジョージアの「バトゥミ」に住むメリットとデメリット」
「もう一つのキルギス。「オシュ」で生活してみて感じた「ビシュケク」との違い」
さて、ジョージアだったり、トルコだったりは割と聞くけれども、アゼルバイジャンでノマド。という話は全然聞かない。
これはルーマニアでノマドとはあまり聞かないくらいにだ。アゼルバイジャンといえば、アルメニアとの間で、ナゴルノ・カラバフ紛争(2020年)があったりなど、当時2020年にジョージアにいたときも、この時期に行くのはやめておこう。ということで、放置したままだった。
とはいっても、カスピ海を望めるバクーの公園でゆったり散歩をしてみたいし、チュルク語系の言語大好き人間でもあるキルギス語やトルコ語を学習している私からすれば、アゼルバイジャン語の環境にも少し住んでみたい。など色々な欲があり、この記事を書くことにした。
さて、この記事では私がアゼルバイジャンでノマドをするという想定で、私にとって重要そうなことをダラダラと書いていきたいと思う。
①アゼルバイジャンの概要(人口、言語など)
アゼルバイジャンの人口は、1011万人(2020年時点)ほどで、同じコーカサスでもあるジョージア(371万人)やアルメニア(296万人)よりも断然多い。せいぜい500万人くらいの国ではないか。と思ってたらその二倍だった。
また人口の90%ほどは、アゼルバイジャン人であり、レズギ語を話すレズギ人は、人口の2%ほど。かつてソ連でもあったので、ロシア人もいるが、それでも全体で2%以下であり、10万人程度である。このロシア人率は、中央アジアのカザフやキルギスよりも低いかもしれない。その割には、記事の中で書いていくが、ロシア語の使用率も高い国であることもポイント。
https://en.wikipedia.org/wiki/Demographics_of_Azerbaijan#Ethnic_groups
また後にも紹介するが、アゼルバイジャンは「火の国」とも呼ばれている。
そしてアゼルバイジャンの基本知識として、アゼルバイジャン人はトルコ語に近い言語を話し、ロシアがウクライナを兄弟だと思っているように、トルコからは兄弟扱いされている国。トルコとアゼルバイジャンの友情は非常に強く、この辺に詳しい人からすれば、トルコ+アゼルバイジャンで一つであり、コーカサスの3か国で一つは間違い。と思っている人もいるかもしれない。
それくらいこの二つの国には強い絆がある。
②主要な都市(バクーだけではない)
首都のバクー(230万人)は、都市圏人口も含めれば500万人ほどになり、アゼルバイジャンの人口の約半分がこの首都圏に住んでいることになる。なんとアルメニアやジョージアの人口よりも多いね。
バクー北部にあるカスピ海に面したスムガイト(35万人)は、東京における横浜のようなものであり、アゼルバイジャン第二の都市だけれども、バクーの衛星都市のようなもの。バクーのような都会が苦手な人にはちょうど良い場所かもしれない。
また内陸のほうにタクシーで2時間ほど行くと、シャーバン(8万人)という街もある。ここはウィキペディアでも日本語版がまだ出ていなかった。
そして、アゼルバイジャンにおける第二の都市的な位置づけになるのが、アルメニア国境にやや近いギャンジャ(33万人)。位置的に言えば、ちょうど、ジョージアのトビリシ、アルメニアのエレバン、そしてバクーのちょうどど真ん中にある。
周りにいくつもの衛星都市があり、都市圏人口は、ガンジャ-カザフ経済地域(カザフスタンのカザフではないので注意)として、130万人ほどになる。ペルシア語で「宝物」を意味するこのギャンザは、日本語の「銀座」にも似ていて覚えやすい。
ギャンジャ郊外には、北西部にシャムキル(7万人)、ミンゲチェヴィル貯水池のあるミンゲチェヴィル(10万人)、その溜池の北部、ロシアの国境にさらに近くなるあたりにシャキ(7万人)、ミンゲチェヴィルのちょうど下にあるイェブラフ(7万人)などの都市がある。
地図上ではわからないけれども、ギャンジャはかなりの大都市圏となるのがポイント。
この辺は、沿岸のバクーなどよりも本当の意味でのゆったりしたアゼルバイジャンが楽しめるかもしれない。また、この街はニザーミーという、ペルシア語圏では知らない人はいないというくらい有名な詩人が生まれ育った場所で、ニザーミー廟もある。
現在はペルシア語圏ではないが、イラン、アフガニスタン、タジキスタンでも有名な詩人なので、ギャンジャと言えば、この詩人を思い浮かべれば良いかもしれない。いずれにしても、アゼルバイジャン人と交流する中で、一つアゼルバイジャンのことをよく知っているというネタになるので覚えておいた方がいい。
ちなみに、ギャンジャのすぐに下には、ナゴルノ・カラバフというアゼルバイジャンではあるが、住民の9割がアルメニア人という複雑な場所があり、ナゴルノ・カラバフ紛争(2020年)からもわかるように、近寄ってはいけないエリアとなっている。
このアルツァフ共和国(ナゴルノ・カラバフ共和国)の首都は、ステパナケルト。
そして最後にもう一つ注目したいエリアが、アゼルバイジャン南部、イラン国境にあるレンキャラン県(23万人)。ここは、イランのすぐ近くでこじんまりとしたカスピ海沿いの街。
で、行くことはないであろう、アゼルバイジャン内にあるナヒチェヴァン自治共和国の首都ナヒチェヴァン市。
だいたい、このくらいでアゼルバイジャンの都市の骨格がわかってきたのではないだろうか。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_cities_in_Azerbaijan
③ゾロアスター教
私がアゼルバイジャンに強い価値を見出している理由の一つは、このゾロアスター教のアテシュガ(火の神殿)がバクー郊外にあるということである。またもや、日本語版のwikipediaでは出てこない。
ヤナル ダグ(Yanar Dag)(燃える丘。という意味)という場所もあまり日本語圏では知られていないが、炎がずっと出続けている場所がある。これは地下の天然ガスが地表の割れ目から漏れ出し、自然発火しているらしい。
2000年近く燃え続けているそうで、アゼルバイジャンの豊富な地下資源の象徴とも言えるのと同時に、トルクメニスタンの地獄の門まではいかないが、そういう強いエネルギーを感じさせる。
ゾロアスター教は、世界でも最も古い宗教とも言われ、アヴェスター語(ゾロアスタ教の経典)は、サンスクリット語よりも古い。この点から、気軽にイランに行けない身(ただ面倒なだけ)としてはアゼルバイジャンでこういうものに触れられるのは非常に美味しいと考えている。
アゼルバイジャンもイランもイスラム化してしまったが、私にはこのもともとこれらの土地にあったゾロアスター教のことに非常に関心がある。
④人種観察と、アゼルバイジャン語
アゼルバイジャン人と言えば、あまりしっくりこないかもしれないが、この地域大国としてあげられるイランの人口の20%近くが実はアゼルバイジャン人であり、イランの最高指導者ハメネイ氏もアゼルバイジャン人だという衝撃の事実がある。
「イランに住む民族 TOP8(ホラサンに住む、日本人似の民族も含む)」
また、キルギスとトルコのちょうど間にあり、この国が地政学的な意味で、トルコ系民族のちょうどど真ん中なのではないか?という好奇心。現在、すでにビギナーレベルのトルコ語を終え、キルギス語に没頭している私としては、その中間に位置する言語もみてみたいという好奇心もある。
特にトルコ語とは90%同じと言われているので、その実感も得たい。
アゼルバイジャン人、そして街の雰囲気がわかる動画も貼り付けておく。トルコとはまた少し違った雰囲気があり、そこも面白い。なんだろう。トルコほどは中東っぽい顔立ちが少なく、よりロシア人っぽい人や中央アジア人っぽい顔が多いイメージなのかもしれない。
⑤英語やロシア語は通じる?
ソ連に組み込まれていた時代もあり、ロシア語のできる人は多い。外国語の中ではダントツでロシア語ができる人が多く、最近はバクーなどの大都市でも感覚として5%くらいは英語が通じるのだそう。
ロシア語に関して言えば、年々ロシア語の人気は減り、英語学習者が増えているが、アゼルバイジャンにはまだロシア語で教えている学校が200近くあり、また仕事を得る際に、ロシア語が必要とされる場合もあるという。その理由は、アゼルバイジャンが取引している国の多くが旧ソ連圏の国だからだそう。
また、ロシア語を話せる年配者は多いが、必要がない時は話さないという。もう一つ気になるのが、おそらくこの国ではロシア語が話せるというのは一種のステータスなのではないか?と思う点。以下のような英語版の書き込みを見ていてもそれは感じた。
ロシアといえば日本人からすればGDPが低い、ただ面積が大きいだけの国に見えるが、ロシア語圏に囲まれたアゼルバイジャン人からすれば、美女や、モスクワの都会的なものを思い起こさせ、多くの周辺国で話されているロシア語は、アゼルバイジャン語よりもステータスが高いに違いない。ような気がしている。→ジョージアではジョージア人としてのプライドが非常に高く、民族団結心もアゼルバイジャンよりも強いので、ロシア語がかっこいいというイメージはなかったけれども。→ジョージアの文字、言語にかなりの自信を持っている感じ。
What languages do people speak in Azerbaijan?
Do people in Azerbaijan still use the Russian language?
ちなみに、かなり前に書いた記事だけど、以下の記事にアゼルバイジャンにおけるロシア語の使用率を書いてあったのを思い出した。それによると、だいたいキルギスと同じくらいである。
⑥カスピ海最大の都市
黒海(ジョージアのバトゥミは現在、ロシアによる地政学的リスクは大きいが・・)に拠点を作った私としては、カスピ海にも同じように拠点を作りたいという欲が・・。その候補地としてやはりイスタンブールから片道2万円くらいで行けるバクーと、カザフスタンのアクタウだ。
この二つの都市はフェリーで結ばれてはいるが、地獄のフェリー(何日も待たされるらしい)らしい。なので飛行機で1時間のフライトでも行けるので、私はそっちを選ぶと思う。
このスクショをみると、どこの国にも属していない国々?の集まりという感じがして、西洋でもなく、東洋でもない、中東、アフリカ、ユーラシアでもない、コーカサスと中央アジアのちょうど真ん中という、日本人の99パーセントが目を向けないエリアという感じで非常に面白い。
バクーはオイルマネーによって、沿岸部の開発が進んでいるので、家で仕事して、疲れたらカスピ海沿いをゆっくり歩きたい。→天然資源多い割には、ジョージアとGDPが同じというのが不思議でならないけど・・。
とても綺麗に撮影された映像があったので貼り付けておく。→規模的にいえば、みなとみらい。に近い感覚があるのでは?と思っている。
⑦家賃(アゼルバイジャンと郊外や地方都市)
一人当たりのGDPは、42万円(2020年時点)。これは面白いことに2020年時点ではジョージアとも、アルメニアとも同じ。どんな偶然が重なってこうなるのかはわからないが。コーカサスの3か国がほぼ同じ一人当たりのGDPであるということは興味深い。
以下は昔書いた記事ではあるが、何かしらの参考にはなるかもしれない。
「アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアの言語、経済、人種、物価の比較 TOP7」
誰もが気軽に1週間、1ヶ月単位で借りれるAirbnbで調べていくと、バクーの中心部には、5万円くらいのアパートも沢山あるが、この上の写真のようにパッとしないアパートが多い。そして、内装や条件が高くなると、カスピ海沿いに10万円前後でいいアパートは結構多い。→時期によっても価格は変動する。
ジョージアであれば、バトゥミやトビリシでも、5万円払えばかなり質の良い(高層階で眺めも良い場合もある)アパートが借りられるので、そういう意味では、バクーは少し高くつく。やはりジョージアのほうがそういう意味では投資が進んでいるのかも。
アゼルバイジャン第二の都市ギャンジャは貸出しているアパート自体が非常に少なく、Airbnbでは5件くらいしかひっかからなかった。アゼルバイジャンは、これからというところだろうか。少なくても、トルコやジョージアのように、外国人にとって快適なお部屋が、適切な価格で提供されていない印象を受ける。
もちろんお金を払えばいいお部屋はたくさんあるけれどもね。
とりあえず調査はこのくらいにしておく。少しずつ追記する予定。ちなみに、アゼルバイジャンに興味がある人なら、以下の記事にも興味持てるかも。
「タジキスタンでノマドは可能か?都市と物価、タジク語(ペルシア語)事情を調べてみた」