インド・ヨーロッパ語族に属するロシア語。よく英語もロシア語もヒンディー語もインド・ヨーロッパ語族なので言語系統は同じ!という記事を見るかもしれないが、これらもまた枝分かれてしており、英語はゲルマン語派、フランス語はロマンス諸語、ヒンディー語はインド・イラン語派、そしてロシア語はスラブ語派というように大きく分けて4つくらいに分けられる。
そんなインド・ヨーロッパ語族のスラブ語派に属するロシア語だが、このロシア語と同じスラブ系の言語は日本であまり学ばれていないのではないだろうか?
ロシア語にしても、日本では年間1121人(2022年)にしか受験されていないロシア語検定。なぜか日本ではロシア語の人気は低い。とはいってもEUにはロシアに近い国もあることからEU全体では日本語を学習する人よりもロシア語を学習する人のほうが断然多いというデータもある。
「各国別、ヨーロッパで英語の次に最も学ばれている外国語は?」
とはいっても日本では欧米人よりもむしろロシア語圏やポーランド、ウクライナなどのスラブ人に親近感を抱く人は多い。それはスラブ系の人たちの方が西欧人に比べ堀が浅く東アジア人の日本人にも近い感覚があるからだろう。
さて、この記事ではそんなあまり知られていないスラブ系の言語を話者人口順位を示すことで紹介していきたいと思う。その前にスラブ語の範囲と語源をみていこう。
スラブ語の範囲と語源
これはスラブ語派を3つのグループに分けた地図。ちなみにヨーロッパロシアをヨーロッパに含めて考えた時、ヨーロッパロシアがヨーロッパの約40%を占める面積と言われているので、他のスラブ語圏の国々も合わせると、ヨーロッパにおけるスラブ語系の言語を話す国全体の面積はヨーロッパの半分以上になりそう。
※インド・ヨーロッパ語族の中でも、スラヴ語派の言語を話す人口は、ヨーロッパ全体で、3億1500万人であり事実上、ヨーロッパ最大の民族言語グループである。
ではでは、まずこの地図の色分けをみてみよう。
ヨーロッパロシア(ウラル山脈以西のロシア)やベラルーシ、ウクライナが東スラヴ語群。
薄い緑、つまりポーランドやチェコ、スロバキアがあるところが西スラヴ語群。
南部の濃い緑の部分が、南スラヴ語群。
そしてスラブ語の語源は英語の奴隷(slave)と同じである。ラテン語のSclavusからきており、奴隷を意味する。ちなみにロシア語で「弱い」を意味するスラブウィ(слабый)はこの意味とは全く関係ないが発音が似てるので注意(笑)。
さて、これらスラブ語の世界を以下で紹介していこう。
16位 ルシン語(7.6万人)
ルシン語は、ルシン人によって話される言語であり、東スラヴ語群に分類される。セルビアのヴォイヴォディナ自治州の公用語の一つ。この地区は首都ベオグラードの北部にあり、その中心都市はノービサードとなる。普通にGoogleマップをみても国で国境が引かれているので、非常にわかりづらいのでスクショを貼っておく。
ちなみに、ウクライナ・ザカルパッチャ州、スロバキア東部、ポーランド南東部、そしてハンガリーなどでも用いられている。
ルシン語はウクライナ語との共通点も多いのでウクライナ語の方言としてみなされることがあるというが、話者の中にはルシン語がウクライナ語とは別の独立した言語であると考える者もいるようだ。
15位 カシューブ語(11万人)
カシューブ語は一般的にポーランド北部の方言と見なされているが、ポメラニア(ドイツ北東部からポーランド北西部にかけて広がる地域)のバルト海沿岸の地域にいたカシューブ族の言語から発展したと考えられている。現代ポーランド語とも親近関係にある。また低地ドイツ語の東方方言、ポラーブ語、プロシア語から影響を受けている。
カシューブ語話者が多いエリアをイメージする時、ポーランド北部のバルト海沿岸寄りと考えればいいのだが、1920年 - 1939年まで存在していた自由都市ダンツィヒと重なるエリアと覚えておけばわかりやすいかもしれない。
14位 モンテネグロ語(23万人)
モンテネグロ語は、セルビアから分離独立する形で誕生したモンテネグロで話される言語。話者数がwikipedia にも載っていなかった。その理由は2006年に誕生した新しい国家ということや、モンテネグロとセルビアはもともと一緒だったので、今現在でも人口62万人のうちモンテネグロ人(45%)と、セルビア人(29%)と、セルビア人の人口も割と多く、セルビア(685万人)との結びつきも強いことから、モンテネグロ内でもかなりセルビア語が通じるからであろう。
私もモンテネグロに1週間ほど視察に回ってきた時は英語が通じなかったので、Google翻訳でセルビア語に訳して見せていたら通じた。→Google翻訳にモンテネグロ語というものがそもそもないので・・
13位 シレジア語(50万人)
シレジア語は、ポーランド南西部からチェコ北東部にまたがる上シレジア(シュレージエン)地方で話される言語。この言語もまた一つの国で話されているわけではなく地理的にわかりづらいのだけど、ポーランド南部の都市、カトヴィツェがある場所と考えればわかりやすいと思う。チェコ側の都市は、オストラバ。
12位 マケドニア語(200万人程度)
マケドニア語は、主として北マケドニアで使用されている言語である。古代マケドニア王国では古代ギリシア語のマケドニア方言が話されていたがそれとは全く異なる。現在のマケドニア語は隣国のブルガリア語とかなり近い関係にある。
ちなみに言語系統が異なるアルバニア語、現代ギリシア語なども合わせて、これら南スラブ語系の言語も合わせたバルカン半島で話される言語は、言語系統の枠を超え、バルカン言語連合。とも言われたりする。
11位 スロベニア語(250万人)
スロベニア語は、スロバニアで話される言葉。スロバキア語と名前が似てるので注意。名前が似ているので紛らわしいと思っている人も多いかもしれない。
10位 ボスニア語(250万人)
ボスニア語は少しややこしいのだけどボスニア・ヘルツェゴビナで話される言葉。ややこしい理由は、旧ユーゴスラビア諸地域において、特にセルビア・クロアチア諸語を話すイスラム教徒の多くは自身をボシュニャク人と規定し、その母語をボスニア語と考えている。
9位 スロバキア語(500万人)
スロバキア語は、実は日本語とも共通点がある。それは、ハワイ語、日本語、スロバキア語はモーラタイミングの言語と言われ、日本人にとってスロバキア語の音は非常に聞きやすい。またスロバキアという名前自体、スラブ人のスラブからきている。
スラブ人の発祥の地がこの辺という情報もあるが、地名そのものがスラブ人であるので非常にわかりやすい。
8位 ベラルーシ語(510万人)
ベラルーシ語はロシア語に非常に近い関係にあり、ベラルーシにおいてもロシア語を流暢に話せる人の割合が旧ソ連国の中でも一番多い。このベラルーシ語を聴いていてもロシア語の響きにものすごく似ているので、ロシア語を標準とした場合、方言レベルの違いなのだろうと思う。
7位 クロアチア語(700万人)
クロアチア語は、クロアチアで話されている言語。南スラブ系の言語だが、子音を聞いててもロシア語に近い感じがして面白い。
6位 ブルガリア語(800万人)
ブルガリア語は、南スラヴ語群だがロシア語に非常によく似ている。それは私がロシア語の単語の語源を調べている時にwiktionaryを開くときにいつも思うことだ。ロシア語とブルガリア語は同じスペルで同じ意味ということが非常に多いと感じる。
試しに上の動画を見てみたが文字でみた場合、おそらくロシア人は半分以上理解できるのでは?と思った。
またキリル文字の誕生地がブルガリアとも言われることや、ロシア語などにはギリシア語源やラテン語源なども多いのでブルガリアを経由してロシア語に入ったのかな?などと想像するとそれもまた面白い。
5位 チェコ語(1100万人)
チェコ語は、チェコで話される言語。軽く聞いてみてもロシア語で使われている単語がそのまま使われている。ロシア語をやっている人なら、「také」「Bylo」「člověk」など、30秒くらいしか聴かなくてもわかる単語がぽんぽんでてくる。
4位 セルビア語(1200万人)
セルビア語は、セルビアで話されている言語。チェコ語と同様ロシア語に似てる単語がいくつか出てくる。さて、チェコ語はロシア語と同じようにキリル文字を使っているのでロシア人からすれば学びやすい言語かもしれない。
3位 ウクライナ語(4000人程度)
ウクライナ語は、ロシア語に非常に近いと言われている言語。実際に聞いてみると文字で見るとかなり近いと感じる。
2位 ポーランド語(5800万人)
ポーランド語は、全世界の話者数を合計数すると5800万人となる。スラブ系の言語の中ではロシア語についで人口が多い。ちなみにロシア語が堪能なキルギス人を連れてウズベキスタンのホテルに泊まったときに朝食の際、隣のポーランド人が会話をしていて、そのキルギス人は、この言語なんだろう、50%くらい理解できる。と言い出したので、私がポーランド語じゃない?と言ったら正解だったという記憶がある。余談だけどそのポーランド人は日本語が流暢な人で英語で話しかけた後逆に日本語で話されたのは驚いた。
ちなみにこのEasy Polish は独自のチャンネルもある。Easy language のシリーズでスラブ語の言語で独自のチャンネルを持っているのはおそらくロシア語とポーランド語だけだと思う。
またポーランド語の音を聴いてるとロシア語が慣れている人にはものすごく心地よく聞こえるのもポイント。
1位 ロシア語(1億5000万人)
ロシア語は、以下の記事にも詳しく書いてあるが多くの国を巻き込んだ言語。L2(第二外国語としても話せる)を合わせた合計は2億5000万人にもなるとも言われ、日本では不人気ながらもかなりの話者がいる言語となっている。
ロシア語に関しては記事をいくつか書いてるので、割愛。
最後に
ロシア語以外の言語は私もまだ手をつけていない状態なので、今後それぞれ理解力が高まった時点でそれぞれの言語の記事も書いていきたいと思う。