近年人気が高まっているスペイン語。これはもう年を追うごとに増している気がする。
私の外国語コーチングではスペイン語は今までそれほど応募がない言語だったが若い女性を中心に応募が増えているのには少し驚いている(去年の3倍以上の応募)。
すでに条件が合わず3名ほどはお断りさせていただく事態に。m(_ _)m →なぜかスペイン語の応募者は皆特徴の似たような人が多い。一昔前の中国語に群がるような層といえばわかりやすいだろうか。
さてこのようにスペイン語学習が増えているというのは自然な流れとも言えるかもしれない。
というのも今後やはり欧米の人気言語(フランス語、ドイツ語など)よりもグローバルサウスの言語を習得することによるメリットが増えてくると思うからである。今や世界はフラット化し、医療環境を除けばたいていどこの国でもいいアパートに住み、情報を自分で選択でき、といったことが可能となっている時代。
「グローバル・サウスの言語を習得する重要性が高まっている理由と、おすすめの言語 7選」
日本でも経済格差があり、昔のように欧米や日本だけが憧れの対象となるような時代ではなくなってきているからだ。中国の経済が減速していくと言われている中で、アメリカが工場をメキシコや中南米にさらに移動する流れもできてくる。
と考えればいまだにアメリカ経済に依存している世界各国におけるスペイン語需要は高まってもおかしくない。と考えるのが普通だろう。
この記事ではそんなスペイン語の中心地アメリカ(話者数ではメキシコが多いが、確実に将来はスペイン語の中心地がアメリカになる)では、スペイン語がどのようなイメージなのか。ということや、いくつもあるスペイン語を勉強するメリット系の記事に踊らされないように、違った面からスペイン語のことを語っていきたいと思う。
①スペイン語を勉強する「デメリット」
私が以下の記事を書いた頃(2017年)、まだ検索でヒットするのは私の記事も含め3件くらいであった。
それが現在は「スペイン語 メリット」などと検索すると、全く同じような内容の記事が何記事もあり唖然としてしまった。多くの人が誰かの記事を参考にして同じような記事が乱立してしまう状況が現在のGoogle検索である。
さて、そういう意味であえてスペイン語のデメリットを言うのであれば、動画でも記事でも結構言っていることなのだけれども、スペイン語の学習者と韓国語学習者は似ているところがあり、初級程度でやめてしまうという、あまりスペイン語に対する強い情熱がない人が多いということだ。
韓国語学習者はたくさんいるが、私の生徒さん(韓国語の辞書が友達と言っているくらい痛いオタクのママ)のような辞書を隅々まで精査しようとするような学習者は本当に一握りで、韓国のエンターテイメントなどのコンテンツや単に英語が好きじゃないから韓国語みたいな、漠然とした学習者が多い。
これはスペイン語にも当てはまる。発音が簡単だから。なんとなくかっこいいから、今ブームだから、メキシコなどで働けるチャンスがあるから(別にメキシコが好きと言うわけではない)など。
そしてダラダラ何年か勉強していて、私何やってるんだろう?スペイン語は全然話せないどころか、英語も中途半端という状況に陥るのである。
つまり何が言いたいかと言うと、発音簡単!人口多い!など色々な記事や宣伝で踊らされないで、英語をしっかり勉強したり、自分が本当に好きな言語に注力しなさい。ということだ。
もちろんスペイン語に情熱を持っている人もたくさん知っているので、そういう人は別ね。
さて、物凄く上から目線で書いてきたが、 英語メンターや外国語コーチをやっていても、スペイン語学習者の場合はこういうすぐに投げ出す、約束を守らないなどの大雑把な生徒さんが多いので、敢えて強く書いた。外国語コーチは7年目だけれども、フランス語の応募者とスペイン語の応募者の層は全くといっていいほど異なる。
②世界におけるスペイン語のイメージ
※写真はスペイン北部のサンセバスチャンのオールドタウンで撮影した建物。=2022年10月
世界におけるスペイン語のイメージ。その代表的なものがまずヨーロッパにおけるスペイン語のイメージだろう。まずヨーロッパ、そしてヨーロッパの周辺にある国々ではドイツ語という言語ができると周りからすごいと思われる。と私は考えている。
「話者人口ではなく、世界で学ばれている本当に強い外国語 TOP5」
多くの貧しい国々にとって雇用が多く、また北に位置し、人口も割と多く、寛容な社会が気づけているドイツという国はまさに夢のような国。しかもドイツに住めればヨーロッパの国々は全て行けるという特権まで。
また余裕のある人にとってはフランス語がやはり強い。ヨーロッパの周辺国、特にアラビア語圏などでのフランス語のブランド力は非常に高い。ヨーロッパ各国の中でもやはり多く学ばれているのがいまだにフランス語。
とはいってもスペイン語の学習者も近年増えてきている。
「各国別、ヨーロッパで英語の次に最も学ばれている外国語は?」
その中で驚くべき事実は、ヨーロッパの中で英語に次いでなんの言語を学ぶか?という調査では、ノルウェーとスウェーデンがスペイン語を選択していることである。それ以外の多くの国が、英語の次にフランス語を学ぶ。にもかかわらずだ。
やはり北欧の寒い国なのでスペイン語を駆使して中南米に自由に行けるようになりたいと思う人が多いのだろうと思う。彼らは経済的にもそれほど不自由がないのでフランス語やドイツ語を学ぶ必要もない。
つまりヨーロッパでは少しずつスペイン語の学習熱は高まってきているし、今後もアメリカにおけるスペイン語話者の割合が多くなるということや、中南米の発展とともに高まっていくのは当然の流れとも言える。
③アメリカにおけるスペイン語のイメージ
アメリカにおけるスペイン語のイメージはヨーロッパにおけるスペイン語=スペイン人とは少し違ってくる。それはアメリカに住むラティーノと深く関係しているからだ。ラティーノ、いわゆるラテン系。というのはアメリカ社会において中南米の人たちのことを指す言葉であり、ヒスパニックなどという言葉も用いられる。
メキシコの国境を超えてやってきた不法移民や、カリブ海などからやってきた移民、このようなスペイン語を話す移民はアメリカの音楽界などでも多く活躍している。そしてアメリカの歴史上長い間、やはり黒人に対する差別ほどはいかないが、それでもやはりヒスパニック系の犯罪率の多さや、貧困などでスペイン語を話す人たち。にとってアメリカは住みづらい社会が続いてきた。
またヒスパニック系の中にはそんな母語であるスペイン語を少しでも話さないようにしつつアメリカ英語のみで生きている人もいるという。
よくある話として、英語話者の前でスペイン語を話すことによる劣等感。こういうものがアメリカ社会に根付いている部分もあり、スペイン語は恥。とまで言っている書き込みも発見した。とはいっても時代は変わりこのようなスペイン語差別、劣等感のようなものは以前よりはマシになってきているようである。
ラティーノの間におけるスペイン語使用の減少なども一部指摘されているが、アメリカにおけるヒスパニック系の人口は年々増えており、2000年頃まではヒスパニック系の人口は3000万人ほどだったが、2050年には1億人になり、つまり4人に1人はスペイン語ネイティブということになると言われている。そのためアメリカ合衆国においてさらにメディア、音楽、出版物などでのスペイン語の露出が増えると予想される。
U.S. Population Will Look Different in 2050
ちなみにアメリカ合衆国だけでなく、北米・中米・南米をすべて合わせると、今現在においても英語話者よりも断然スペイン語話者の方が多く、スペイン語というのはアメリカ大陸の最大言語であり、今後はさらに影響力が高まると予想される。
④G7、常任理事国にスペイン語圏は入っていない
※サンセバスチャンの中心部に流れる川。
このようなスペイン語の盛り上がりはそのスペイン語話者の人口増加とともに欧米を中心に少しずつ広がっているとは言え現状はスペイン語というのはG7の言語でもなければ、常任理事国の言語でもない(国連の公用語の一つではある)。
とはいってもG7や先進国などに対して使われるグローバルサウスで最も話されている言語のうちの一つでもある。今後世界情勢が変わり色々な流れが変わっていく中で今よりもさらにスペイン語の地位が上がる可能性は否定できない。
⑤中国語ブームとの違い、そして今後のスペイン語の地位は?
一昔前、中国の経済発展とともに中国語が英語を超えて世界の公用語的な地位になるなどと本気で思っている日本人もインターネット上にかなりいた。今じゃ笑い話くらいなのだけれども、時々いまだにYouTubeの書き込みなどでも時代遅れの思考を持ったコメントを見ることがある。
中国語は中華系の人たちの言語であるのに対して、スペイン語は多くの国で公用語のみならず第一言語として話される言語という意味では中国語とは全く違う。
とはいってもこれらスペイン語圏が今後強い力を持っていくのか?ということは疑問的な部分もあり、それらがEUのような形として強く結びつかない限り、スペイン語の地位は今以上にさらにあがっていくことはないのではないか?という疑問も残る。
⑥フランス語圏の動向がカギ?
2050年におけるスペイン語とフランス語の人口はそれぞれざっくりおよそ8億人になると言われている。そしてその中身を見るとスペイン語は多くの国で第一言語として話されているのに対して、フランス語はもともとそれぞれの民族の言語が第一言語にあり、国としての公用語がフランス語という場合なので、母語としてという意味であればスペイン語のほうが実質的な意味での8億人である。
とはいってもロシア語圏のようにロシア語が廃れると思いきや、ロシア語をなかなか手放さない国も多くあるように、アフリカの旧フランス植民地の間でも現在はエリートや教育を受けている層を中心に使われているフランス語の復活がさらに広がる可能性もある。
アフリカの旧フランス植民地の国々ではフランス資本を追い出そうという動きもあるが、そう簡単にできるものではないし、中国に頼ろうとしているアフリカが、今度は中国の経済が減速したらどうなる?という話もあるので、なかなかフランス語という一度根付いてしまった言語はそう消えることはないだろう。
⑦フランス語学習者と比較した場合
上にも少し書いたが、フランス語学習者はスペイン語学習者に比べ、労働を目的、将来のチャンスを目的などで勉強しているというよりはフランス文化やフランスが好きだからという意味で勉強する人が多い。なのでそう簡単にはその言語学習を手放さないし、投げ出したりもしない人が多い。
またフランス語の場合、フランスは常任理事国に入っており、アフリカを中心にスペイン語圏よりも多くの大陸、島々などの国家をまとめあげている英語に次ぐ実質的なグローバル言語である。さらにヨーロッパの王室はフランス語を好み、国連の公用語、G7の国、核保有、世界の国際機関の多くがフランス、またはその周辺の小国(フランス語圏)にあるという意味で、フランス語というのはスペイン語よりも格上の言語と考えることもできると思う。
さらに上でも書いたアメリカにおけるスペイン語差別的なもの。これはフランス語に対すると全く逆で、アメリカ人はフランス語にちょっとした憧れを持つ。と言う意味で、スペイン語学習かフランス語学習かで悩んでいる人は、もっと多くのことを調査し、自分がどちらの言語の方が長く続けられるか?というのは真剣に考えた方がいい。
⑧それでも、スペイン語学習者は増加
もう一度言うけれども、それでもスペイン語学習者は増加中。とはいってもどこかでそれがストップがかかる時が来るだろうし、中国語ブームのように数十年で消えるレベルのものになるかもしれない。結局英語以外の言語を勉強するなら自分が好きな言語にしっかり集中するべき。と私はいつも生徒さんに言っている。
ちなみにアメリカでは、スペイン語学習者が増えているが、いまだに70%の州では2番目に学ぶ言語がフランス語となっている。