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ロシア語とヒンディー語が似ている理由と、そのいくつかの共通点

2023年4月2日

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ロシア語とヒンディー語が似ている理由と、そのいくつかの共通点

2023年4月2日

ロシア語の学習はすでに3年以上が経過。入ってくる生徒さんの数も増え、指導する傍ら私の指導力もさらに上がった気がする。そういう段階にきてここ数年、少しずつ私のヒンディー語力が上がってきている。

おそらくヒンディー語と、ロシア語を同時に勉強する人はかなり少ないと思う。が、同時に勉強していることだから気付くこともある。

それはロシア語とヒンディー語に似ている部分がいくつか存在するということだ。この記事ではまず日本では全く話題にならないこの二つの類似について海外ではどのように言われているのか?ということを紹介しつつ、その後、私が気づいたいくつかの類似点を書いていきたいと思う。

 

 

①日本では関心すらないこの話題(ロシア語とヒンディー語の類似)

まず実際私も、色々な言語の学習が落ちついてきて、やっとヒンディー語に本腰を入れたときにある程度文法上の全体像を理解しているロシア語と比較するという体験をするまで、ロシア語とヒンディー語が似てるなんていう発想すらなかった。

なので日本語圏で検索しても何もひっかかりもしない。

けれども英語で検索すると日本語圏と同様、ロシア語とヒンディー語の類似性に語っている人はほとんどいなかったが、このような主張をしている人がいた。

この動画では、ロシア語とサンスクリット語が似てる。ということを単語を一つ一つ説明する形で紹介している。

サンスクリット語といえばまさにヒンディー語が強い影響を受けている言語である。

つまり、ヒンディー語とロシア語は似ている部分が少しあってもおかしくないということであり、私は、まさにヒンディー語とロシア語が似てると感じているのである。

その理由はまず、ご存知の通りヒンディー語はサンスクリット語から強い影響を受けた言語であること。同時に、意外なことにもロシア語も思った以上にサンスクリット語から流入した単語があり、サンスクリット語という言語を介して、ロシア語とヒンディー語が繋がっているということに気づき始めたのだ。

またヒンディー語とロシア語はインド・ヨーロッパ語族として部分的に似ている部分もあるということ。

こういう発見もあって私はこの二つの言語を学習するのが非常に楽しいと感じている。

 

①基本単語に見るロシア語とヒンディー語の類似

まず、ロシア語とヒンディー語の単語の類似から見ていく。私が気づいただけでも、これだけあった(簡潔版)。

 

日本語英語ヒンディー語ロシア語
与えるgiveदेना(dena)
давать(ダーチ)
飲むdrinkपीना(peena)пить(ピーチ)
dayदिन(din)день(ジーニ)
髪・毛hairबाल(baal)
волосы(ヴォーラスウィ)
doorद्वार(dvaar)
дверь(ドヴィェーリ)
4(数字)fourचार(chaar)
четыре(チトウィーリ)
パイナップルpineappleअनानास(anaanaas)
ананас(アナナース)

ここで簡単に説明すると、サンスクリット語語源として共有しているものと、ペルシア語語源として共有しているものがある。ロシア語はサンスクリット語の影響(より前の時代?)も受けているが、ペルシア語の影響も結構受けている。

その理由はロシアという国が陸続きで中央アジアやイランまで簡単に行ける土地柄であること。つまり中央アジアあたりはトルコ系の民族とペルシア系の民族が住んでいるのだけど、トルコ系民族もペルシア系民族も互いに双方の言語を単語レベルで交換している。

そしてソ連時代、これらの土地の多くを自国に組み込んだことや、今現在もロシアにはトルコ系の共和国が何個も存在するので、ロシア語・チュルク(トルコ系)語・ペルシア語などの言語は互いに単語レベルでかなり影響をしあっているということになる。

たとえばロシア語の意味を表すジェーニギなんかもカザフ語のテンゲという言葉からきている。また上の表にあるパイナップルもペルシア語由来の単語だ。特にロシア語では寒い地域で取れないような野菜や果物はペルシア語の単語を使っている場合も珍しくない。

ヒンディー語という言葉は、ペルシア語から強い影響を受けている言語でもあるので、こういう意味でもヒンディー語とロシア語は、サンスクリット語のみならず、ペルシア語の影響も受けていることになる。

 

※ちなみにラテン語の影響が強いスペイン語も、dar と、d からはじまる。

 

 

②ムチェー(मुझे)と、mne(мне)は、全く同じもの

note で記事化したのだけど、

ヒンディー語には、3つの I(私は)がある。能格とは?(note 記事)

英語でいう、To me, I don't like. のような、To me(私に / 私にとって)にあたる部分が与格。これは英語にないのでわかりづらいのだけど、スペイン語などにもあり、I(私は)の代わりによく使われるものだ。

ロシア語もヒンディー語もこの使い方は非常に似ている。

例えば、Give me a receipt(レシートをちょうだい)という例文を見ていこう。

mujhe raseed deejie(कृपया मुझे रसीद दीजिए)

mne day kvitantsiyu(мне дай квитанцию)

ロシア語は英語よりの語順(SVO)、ヒンディー語は日本語よりの語順(SOV)なので動詞の順番は違うのだけど、最初にムチェー(कृपया)と、mne(мне)がきている。

この二つの言語は、インド・ヨーロッパ語族として同じグループなので同じものがあってもおかしくはない。

特にヒンディー語の代名詞の多くは英語と同じ語源であることが多く、基本単語レベルにおいては英語やロシア語とは似ていないが、やはりどこかでインド・ヨーロッパ語族として、ヒンディー語とロシアや英語はつながっているということがここから分かると思う。

 

 

③ロシア語と、ヒンディー語の動詞は、話し手の性別によって語尾が変化

ロシア語の生徒さんといつも不思議だねぇ。と声を合わせて唱えているロシア語の文法が、ロシア語の動詞は現在形では、男性・女性を区別するような文法がないのに、過去形の動詞になると、話し手が男性か女性かで、動詞の語尾が変わる点だ。

例えば、

I speak English.(私は英語を話します) = Я говорю по-английски. だと、現在形なので、男性が発しようが、女性が発しようが、I(私は)の情報となる「-ю」という語尾をくっつけるだけ。

つまりこの時点で、この文言を男性が言っているのか女性が言っているのかは分からない。

けれども過去形になると、

Я говорил по-английски. 男性が発する場合。

Я говорила по-английски. 女性が発する場合。

となる。

こんな文法なぜ必要?と思ってしまうくらい不要な文法でだと思うのだけれども、確かに主語を省略できるし、男か女、誰が言っているのか分かるので文面を見る時は便利で、楽しい。というメリットもある。

さて、このような不要とも思われる文法が、ヒンディー語にもある。

ヒンディー語の場合はロシア語と違い、現在形だろうが、過去形だろうが、男性がいう時と女性がいう時では語尾が違う点。→ロシア語がおかしい。なぜ現在形動詞の時はそのような区別がないのか。元々あったのかもしれないが廃れたのかもしれない。

で、ロシア語とヒンディー語が、インド・ヨーロッパ語族という共通点があるので、文法的に少し似ていてもおかしくはない。と感じるが、インド・ヨーロッパ語族でも多く学ばれているスペイン語、フランス語、ドイツ語にはこのような特徴はない。

フランス語には、形容詞が、男が発するか、女が発するかで語尾が変わるなどがあるが・・。

とはいっても、このように男が発するか?女が発するか?によって、動詞の語尾が変わる。これは日本語で言えば、

話した

話したわよ

みたいな違いだと思えばいい。と生徒さんに説明している。

ちなみに私は、ロシア語にしても、ヒンディー語にしても、まずは男性形を覚えて会話に参入できることを目標にする方が良いと考えている。会話に参入できるようになれば、女性が男性形使ったとしても、誰かが直してくれるので・・。

また女性形の場合は、最後の -a の音をつけるだけ。ということが多く、これはヨーロッパの言語やアラビア語の語尾にも共通するところである。

 

④サンスクリット語の影響力

人はなぜサンスクリット語を勉強するのか。とはよく言われるものだが、この言語自体、いろんな言語の基礎となっていることが多く、その影響範囲は地図にあるように多くの東南アジア諸国、現在の中国南部にあたるチベット、アフガニスタン、パキスタンなどまでに及ぶ。

上の地図はサンスクリット文化圏の地図なので、この地図にはないが、実際にはサンスクリット語は英語やアラビア語にも強い影響を与えている凄まじい言語なのである。

英語の love(愛)でさえ、サンスクリット語からきているものである。ということは以下の記事で語った。アラビア語の語源や英語の語源を調べていると、最終的にはサンスクリット語由来だったということが多々あり、いつかそのまとめ記事を作りたいくらいだ。

「サンスクリット語を勉強するメリット」

多言語学習で勉強する言語が増えるほど、このサンスクリット語の偉大さを感じ始めてきている次第である。

 

⑤サテム語として共通しているという点

インド・ヨーロッパ語族に属する言語の、音変化による分類に、ケントゥム語とサテム語というものがあり、ヒンディー語もロシア語も、こういう意味では同じ分類がされるということ。そしてそのうちのサテム語のほうに、スラヴ語系の言語や、インド・イラン語系(ヒンディー語やペルシア語)の言語が入っているということだ。

 

⑥最後に

ロシア語とヒンディー語。日本人にとってはほとんど学ばれない言語であるかもしれないが、この二つの言語が分かると、西洋と東洋のちょうどど真ん中あたりの時間帯の国々をノマドできる(実際に私がやっている)し、アラビア語のような西洋から離れた価値観の国々が多いエリアなので、言語学習によって得られる楽しさ、喜び、発見、通常繋がらないような人との繋がり。色々あり、ぜひ私はどちらかの言語の学習をお勧めしたいと思う。

また最終的にサンスクリット語やペルシア語などにたどり着くという意味で、現代ペルシア語の学習もお勧めだ。

 

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