この記事では私が2017年に掲載したランキングと、2023年7月現在の中国の投票状況を比較することで、中国における外国語学習の変化を理解していこうと思う。まず2017年時点のランキングは、以下のサイトをみて私が2017年に一度数字もつけて私のブログに掲載したもの。
http://m.ttpaihang.com/vote/rank.php?voteid=1131
あれから5年も経っているので若干数字にも変化がおきている。
私がこの記事を書こうと思ったきっかけは、キルギスやモンゴル、ベトナムなどの国において韓国語の人気が非常に高まっていると感じているので、そういう中で経済規模も大きい中国では一体どうなっているのか?ということを確かめたく過去(2017年)に書いた記事をリノベーションする形で、最新のランキングと比較してみようと思った。
さて、私が中国で日本語教師をやっていたのは2011年頃。この年、北京郊外にある張家口と南京で日本語を教えていた。この当時は北京オリンピックが終わって3年後であり、まだまだ中国にとって日本は稼げる国だったので、中国では日本で働きたいという人たちがまだ多かった時期。
ネットを見れば日本語教師案件も多く需要が高かった。それから10年以上も経った今、中国はGDPでいえば今や日本の四倍である。→実際8億人ほどの人口が年間60万円ほどしか稼いでいないとも言われているが・・。
さてそんな状況でさえ、果たして日本語は人気を保っているのか。ということがこの記事のポイントであり、また日本における人気外国語ランキングと中国における人気外国語ランキングは若干違うという点にも触れていきたいと思う。
2017年6月時点での数字
10位 スワヒリ語(11)
9位 ポルトガル語・アラビア語(12)
8位 イタリア語(17)
7位 ロシア語(35)
6位 スペイン語(44)
5位 ドイツ語(55)
4位 韓国語(91)
3位 フランス語(94)
2位 日本語(124)
1位 英語・タイ語(153)
2017年、私のブログでも公開した時点での上記のサイト(投票型)における中国における人気外国語ランキングではまずタイ語の人気に驚いた。この時点で韓国語の人気はフランス語以下である。当時もKPOPが流行っていたとは言え、今ほどの人気はなかった。
とはいってもこの時点でも私が中国に行った時は韓国語を勉強している若い人も結構いた。ましてやタイ語を勉強している人なんて聞いたこともない。さてそれは以下読み進めていく中で書いていこう。
以下より、2023年時点での中国における人気外国語ランキング
10位 アラビア語(39)
日本での人気外国語ランキングの場合アラビア語はTOP10には入っていない。ここがポイント。これは一帯一路などで中国ではアラビア語ができると得られる仕事が多いからではないだろうか。
特に中国は中東、アフリカなどとの関係にも力を入れているので、アラビア語検定が廃止されてしまう日本とは違い、さらに需要があると私は思っている。
「「アラビア語検定」が廃止されてしまった理由と「6級」レベルで十分な理由」
また国内にいるムスリムの影響も強いかもしれない。西安にはイスラム教徒が多く住むエリアもあるくらいだし、中国西部の新疆ウイグル自治区ではウイグル語が話され(2019年視察時点でも街の至る所にウイグル語の看板があった)、中国には日本以上にイスラム教徒がいるため、日本よりもさらにイスラム教に対する近さがある。
また、モロッコやエジプトで感じたのは中国語が話せる若者が増えているという点であり、こういう日本人にはあまり馴染みのない国と中国が接近している感がある。変な話、中国でアラビア語を勉強するという選択肢もありかもしれない。
9位 イタリア語(43)
日本においても中国においてもそれほど実用的ではなさそうなイタリア語はやはり人気。これは世界における外国語ランキングにイタリア語が上位に来るのと同じで、経済や人口規模というよりは文化的な憧れ、美しい音の響きなどで学ばれているというものだと思う。
8位 ロシア語(82)
日本国内の場合、このポジションがイタリア語となる場合が多い。日本ではロシア語よりも断然イタリア語の方が人気である。
というのも日本からみてロシア語とはウラジオストクなどの極東ロシアで使われる言語という位置付け。ロシアと貿易が中国ほど盛んなわけでもなく政治的にも対立しており、モスクワまでの距離を考えても多くの人はロシア語に何もメリットを感じないのでヨーロッパの人気言語を選んでしまう。
けれども中国の場合、隣国ロシアだけでなく、ロシア語が多く学ばれているモンゴル(年配者はロシア語教育を受けている人が多い)、隣国のカザフスタン・キルギス・ウズベキスタンがロシア語を話すので、地政学的にも必要に迫られた言語である。
また中国の場合、やはり日本よりもロシアとの結びつきも強いので日本よりロシア語の人気が高いのは当然とも言える。
7位 ドイツ語(99)
いまだに多くの中国人がドイツ留学を夢見ている。
その理由はやはりまずヨーロッパにおいて一番人口が多く、GDPも高く、世界的な大企業も多く、何よりも言論の自由が保障されているからだと思う。またドイツと中国の経済的な結びつきも関係している。
実際にドイツ語という言語は、貧しい国であれば貧しい国であるほど崇拝される言語であり、アフガニスタンやタジキスタンなどでのドイツ語学習熱はものすごい高い。タジキスタンの首都の中心部にはドイツ語センターがあるくらい。
「話者人口ではなく、世界で学ばれている本当に強い外国語 TOP5」
中国も一人当たりのGDPでいえば日本の半分にもまだ満たなく、1~3億人いる富裕層(中間層含め)の数字があってやっと日本の半分だが、80%の人口は年間60万円も稼いでいないというふうにも言われているので、こういう意味で考ればやはり中国でドイツ語が一定の人気を保っているのは当然とも言える。
6位 スペイン語(150)
中国とスペイン語圏(南米)との結びつきは強く、今後さらに中国においてスペイン語学習者が増える可能性はあると思う。
5位 フランス語(182)
やはり西洋の言語で英語に次いで人気が高いのは中国でも同じ。けれども中国の場合、アフリカを意識したものも含まれた数字だと思う。
4位 韓国語(193)
※写真はニャチャンで1ヶ月ほど借りていたアパートのロビーにあった絵画
やはり韓国という国が日本人口の約半分とことを考えれば、この数字には驚くと言わざるを得ない。これはこの記事の下にリンクしてある英語圏における人気外国語(Duolingo調査)にも載っているが、韓国は国の規模が小さいにも関わらず、Duolingoで韓国語を学んでいる英語使用者は日本語を学ぶ英語使用者に接近中であり、いつ逆転されるかわからない状態。
3位 タイ語(209)
タイには華人が非常に多く、また日本人が南国に憧れるように中国でも南国の自由な国で長期滞在したいという夢がある。これが韓国語に勝っている理由ではないだろうか?
また日本ではタイ語はほとんど人気がないのにもかかわらず、タイに移住したい人は多いという矛盾な国でもある。実際にタイやマレーシアで出会った日本人はなぜか韓国語を勉強していた・・。
さて、若い中国人にとってタイは欧米の教育を取り入れた国として知られており、タイに留学すれば欧米に行かなくても欧米流の大学教育が受けられるというふうに言われている。
とは言っても以下のように、
https://zhidao.baidu.com/question/1882818236963565308.html
なぜタイ語を勉強する人は少ないのですか?というスレッドも存在するほどなので中国にいたこともある私が思うのは、タイ語は韓国語よりも全然人気のない言語だと思う。けれどもこの投票型ランキングページにおいてなぜタイ語だけがこんなに突出して多いのかは不明。
https://m.hujiang.com/th/p1332494/
このような記事に、なぜ我々は英語、タイ語、漢語など学ばなければならないか?となっていたが、そこにはチャットのウィンドウが突如でてきたが、タイ語はなかった。。。
このスクショの順番は、英語、日本語、韓国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語。であり、この順番が割と中国で人気のある外国語の順番に近いのでは?とも思ったりする。
2位 英語(315)
普通、1位になるはずなのだけれども、2位止まり。韓国や東南アジアと違い、中国では英語を使うと嫌がれることがよくある。日本と同じように英語嫌いが多く、中国でもやらされている感のある言語。という位置付け。
そして余談だけれども、中国のサービス従業者(店員や空港のスタッフなど)に英語で話しかけると嫌がられることもある。その理由は、英語ができないことが他のお客さんにバレてしまうのが怖いからだと思う。中国語で話しかけた途端、いっきに優しくなるというのを何度も私は経験済。
1位 日本語(319)
7年ぶりに見た同じサイト。このサイトに投票する人自体は少ないが、やはりこれが中国全体の意見な気がする。私が昔中国に行った時に、特に上海や東北などのエリアでは困った時に必ず日本語ができる中国人がいるという感じだった。
それから時代も変わり、中国自体が国全体として発展。以前はほぼ出稼ぎなど出世のために日本語を学んでいる人が多い印象だったが、現在はそれに加えて嗜みとして日本語を勉強している層も少なからずいる気がする。
で、やはりこの日本語人気が昔も今も変わらないという事実、つまりこの数字はあながち間違っていないようだ。
以下のDuolingoの調査においても、やはり日本語は英語以外において圧倒的に中国で今もなお学ばれている言語とされている。世界の多くの国で、英語の次にスペイン語、フランス語、ドイツ語が学ばれているのとは対照的と説明されている。→つまり英語圏では中国という大国でなぜこれほど日本語熱が高いのか?ということが囁かれているというわけだ。
https://radii.co/article/china-duolingo
今や世界のアメリカに対抗するところまで上り詰めた大国で英語の次に学ばれている言語が日本語というのは誇らしいものである。また、英語圏における日本語の地位も上がっている。それは以下に書いた。
従来の貧しい国の人たちの出稼ぎのために学ぶ言語から、趣味で時間に余裕がある人が文化的な尊敬のもと学ぶ言語+出稼ぎ言語に切り替わっている。
「2023年、英語圏で人気のある言語 TOP10(Duolingo調査)」
とはいっても韓国語学習者もその分伸びており、いつ逆転現象が起きるかわからない状態でもあるので、今後の動向を注視していきたいと思う。