現在、15億人以上もの人口を抱える中国には、もともと文化的には漢民族の土地ではなかったと言える場所がいくつかある。
それが、新疆ウイグル自治区、チベット自治区、内モンゴル自治区などではあるが、古代から全く漢民族がいなかったというわけではないので、そこは後に解説しよう。
この記事では先日私が行ってきた新疆ウイグル自治区とトルコの関係を中心に語っていきたい。というのも私はカザフスタン行きの乗り継ぎ便でウルムチに8時間滞在し、ウイグル人などをこの目で見てき、彼らがトルコ語の曲を聴いているのを感じて、物凄く興味深く思ったからだ。
また、以前から新疆ウイグル自治区で何か問題が発生すると、トルコでデモが起きるというようなことも知っていたので、この記事でなるべく腑に落ちるようにまとめていきたいと思った。
①まずは新疆ウイグル自治区の位置を確認
https://www.uyghurvoice.com/brits-blacklist-east-turkestan-islamic-movement/
新疆ウイグル自治区とは現在、中華人民共和国の自治区になっている地区である。ヒマラヤ山脈を越えてインドのちょうど北方に位置する。
また西側には中央アジア5ヵ国がある。これらの地域はソビエト連邦だったこともあって、今もなおロシア語が使われているが、ウイグルではロシア語は使用されていない。
「中央アジア(キルギス、カザフ、ウズベク、タジキ、トルクメニ)の言語・経済・文化・物価・人種などを比較 TOP10」
で、面白いのが新疆ウイグル自治区が見事に、トルコと日本のちょうど中間に位置することだ。ちなみに、ウルムチのタクシーの運転手は、「トルコか日本に行きたいけど、行けないので残念」と言っていたのを思い出す。
彼らにとって、同胞(以下で説明する)であるトルコ人と、アジアでウイグルと全く対照的で、民主主義国家である日本は、どちらも憧れの地なのだろう。
まさに上に示したような地図は、常にウイグル人の頭の中にあるのかもしれない。
つまり、トルコーウイグルー日本。というように…。( ゚Д゚)
②チュルク語族の国々=同胞
https://en.wikipedia.org/wiki/Turkic_peoples
ヨーロッパでは、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、ヒンディー語(インド)に至るまで、インド・ヨーロッパ語族という言語系統として一つになっているということは以前も述べた。
「欧州なのに「インド・ヨーロッパ語族」には属さない異端の「ウラル語族」と日本語の関係」
その中でも、フィンランド・エストニア・ハンガリーが、ウラル語族であり、ヨーロッパでは不思議な存在として扱われている。
一方、中東や北アフリカでは、ほぼ全域が、アフロ・アジア語族に分類されるのに対して、ヨーロッパと中東の間にあるトルコ(トルコ語)だけは、チュルク語族であり、トルコから東へ、ジョージア・アルメニアを超えて、アゼルバイジャン、そして更にカスピ海を超えて中央アジアのカザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタンがチュルク語族である。
また地図にはシベリアの大部分が青色になっている。ここがサハ共和国であり、以下の記事でも紹介した人たちが暮らすエリア。
また新疆ウイグル自治区で話されるウイグル語も、チュルク語族に分類されるため、これがつまり、ウイグルの人々がトルコ人に親近感を抱く理由である。
ちなみに、チュルク語族間の言語は、お互いに方言のように通じるとも言われている。これらチュルク語族の言語を纏めると以下になる。
トルコにはクルド人も多いため、全人口ではないが、チュルク語族国家の盟主となっている。トルコの1人当たりのGDP(93万円)は、カザフスタン(92万円)と同等だが、やはりトルコのほうが人口も多く、力があるので、トルコが盟主と言えそう。
これらすべての国を合計すると、1.5億人もいる。
つまり、韓国人が世界に散らばる韓国人を同胞と見なすように、これらの言語圏で暮らしている人たちも、俺らは皆同胞だぜぃ。と思っている可能性は十分にあるということなのだ。
また、これらの国々は皆、言語系統だけでなく、イスラム教という共通の価値観も持っていることもポイント。
③チュルク語=トルコ語ではない
歴史学の成果から本来このチュルク語族を話す人々は中央アジア・モンゴル高原からシベリアのあたりにいたと考えられる。と、ウィキペディアに書かれてあったが、私もまさにそう思う。
中央アジアに住んで感じるのは、ここに住むものの顔は、明らかにシベリアからやってきた人たちの顔なのである。ソビエト連邦時代にやってきた白人との混血も多いが、私が思うに、中央アジアに住む生粋の人たちは、もともと遊牧生活をしていたので、シベリアのほうからやってきてて移住したのだと思う。
そしてそれが何らかの形でトルコのほうまで行った。(モンゴル帝国を思い出してほしい)
以下はモンゴル帝国が最大で支配した領土。これを見れば、韓国・中国・中央アジアに北方系人種が非常に多い理由や、ロシア人が白人とモンゴロイド系のハーフに見える理由もわかるような気がしないだろうか。
面白いのは、日本はモンゴル帝国に支配されていなという点でもある。
いずれにしても、ここで言いたかったのは、チュルク語(Turkic languages)とは英語で読むと、いかにも、Turkish に似ているためか、トルコから派生した言語と思われそうだが、実は違って、現在のトルコ語は、シベリアの方から渡ってきた可能性があるということを言いたかったのである。
④トルコではウイグル関連のデモが度々起こる
https://www.youtube.com/watch?v=3FNgJH72ByM
2015年イスタンブールで起きた中国領事館でのデモ。これはあまり知られていない。中華人共和国の旗を燃やすデモ隊。そして、トルコの国旗と東トルキスタンの国旗(両国旗は色だけ違って非常に似たデザインとなっている)をもったデモ隊が行進。
実はこのような、似たデモは2009年にもイスタンブールで起こった。それが以下の動画。東トルキスタン(現在のウイグル)の旗を持ったデモ隊が警察と衝突している。
https://www.youtube.com/watch?v=9LkX-CjH-ow
なんだろう。こうやってよくよくトルコ人の顔を見ていると、明らかにアラブ人とは顔が違うということが分かるかもしれない。アラブ人は、もっと彫が深いようなイメージがあるのに対して、トルコ人は少しだけ、モンゴロイド系の血を受け継いでいるようにも見える…。不思議でならないね…( ゚Д゚)/
で、これらのデモ。トルコ人が起こしているというよりは、トルコ在住のウイグル人が中心となっていいるデモである。以下を見ても分かるように、ウイグル人は現在世界に散らばっている。とはいっても、限定的な範囲なのだけどね。
⑤海外に暮らすウイグル人の人口
ウイグル人人口のほとんどが中国の新疆ウイグル自治区。その隣にあるカザフスタン・キルギス・ウズベキスタンなどの中央アジアの中心3ヵ国にも、ある程度のウイグル人が住んでいる。
また、ウイグルからかなり離れたトルコにも、4.5万人ものウイグル人が住んでいる。サウジアラビアには、労働者として、~5万人くらいのウイグル人がいるとも言われ、全体的に見ると、西洋ではなく、中央アジア周辺の国にウイグル人が散らばっているというようにもとれる。
で、なぜサウジアラビアなのかと言えば、ウイグル人はイスラム教徒なので、サウジアラビアからすれば、低賃金で、イスラム教徒の肉体労働者を沢山受け入れたいのだろう。
⑥ジュンガル帝国の存在
もともとこの地区は、ウイグル人が多く住む土地ではあるが、漢代と唐代には、中国の直接支配下に置かれた時期もあったり、13世紀、モンゴル帝国の勃興によりその支配下に組み込まれ、チャガタイとその子孫による支配が行われたこともあり、ウイグル系の人たちと、モンゴル系の人たち、漢民族系の人たちがミックスしている。
これは私が実際にウルムチに行って感じたことでもある。
また、伝統的にはペルシア語で「テュルク人(突厥)の土地」を意味するトルキスタンと呼ばれていたことからもわかるように、東トルキスタン=ウイグル、そして、西トルキスタン=現在の中央アジアというように、まさにこの一帯が、チュルク語圏の中心地だった。
それが、中央アジアはロシアの支配下になり、清・ジュンガル戦争によって、ジュンガル盆地(上の図)を中心に存在していたジュンガル帝国は、1884年に中国内地並の省制がひかれて新疆省となってしまった。
つまり、中華人民共和国成立後に、新疆ウイグル自治区が支配されたと思っている人は、この事実を知っておいたほうがいいかも( ゚Д゚)←私は漠然と同じように思っていたので…。
⑦ウイグル族が暴動を起こす理由
1960年代よりロプノール地域は核実験場として使われ、1996年までに核実験が45回実施された。そのうち23回が大気圏内核実験でロプノールの北西約100km地点、22回が地下核実験でロプノールの北西約220km地点で行なわれた。1950年代から1960年代にかけてロプノール付近は軍事上の立ち入り禁止区域となり、1980年代に立ち入り禁止が解除された。
と、ウィキペディアにも書かれている通り、この新疆ウイグル自治区では昔から核実験を何度も行われてきた。つまり、空気が汚い。汚染されている。そして簡単に言えば、有害だということ。そんな中国の核実験にウイグル人のみならず、トルコ人も怒っている。
またカザフ人などに中国の評判を聞くと、やはりこの件のこともあってか、かなり印象が悪く、中国人と一緒にされたくない。と嫌がる様子。
もう一つ、世界各国から非難されているが、最近あまり話題にならないものの一つとして、臓器狩り。が挙げられる。これは、NEWSポストセブンも、2018年に再び話題に出していた。
⑧ウイグル人がついにブチギレた
このようなことが重なり、ウイグル人がすでにブチギレてしまい、天安門広場自動車突入事件が起こってしまった。
これは、2013年10月28日に中華人民共和国の天安門前の歩道に自動車が突入し、炎上した事件。5人が死亡、38人が重軽傷を負った事件である。
このデモを行った人たちは、東トルキスタンイスラム運動の関係者であり、新疆ウイグル自治区の独立を求めている人たちである。
それ以降、中国ではウイグル人に対して神経質になっており、ホテルなどでは中国語とウイグル語でテロのポスターなどが貼られていたり、また私がウルムチの税関でパソコンを見られたように、警戒態勢が敷かれている。
「新疆ウイグル自治区の「ウルムチ」にイケメン・美女が多かったことと、超監視社会になっていた件」
⑨世界ウイグル協会と、日本ウイグル協会は別物
最後に。日本ではよく日本ウイグル協会の人たちが、ウイグルの解放を呼び掛けている映像が出ることがある。けれどもこれは、世界ウイグル協会とはまた別物。
もともと日本ウイグル協会は、世界ウイグル協会の傘下団体として活動をしていたが、世界ウイグル会議の決議により、2015年10月18日から同会議の参加資格を失い、解散を勧告された。となっている。
つまり、上の画像のように、ドイツでデモが行われたときは、世界ウイグル協会のひとたちが関与していて、日本でウイグル関連のデモが行われたとすれば、日本ウイグル協会が関与していると思えばいいかもしれない('ω')ノ