ロシアという国をどれだけ知っているだろうか。なぜか日本のメディアではロシアの現状はあまり届いていない気がする。ま、そもそも日本人がロシアに関心ないのだろうけどね。
私は色々な記事を書く際に、wikipedia の英語版で様々な数字を見ているのだけれども、その中で記事にせずにはいられないものを見つけてしまった。
それがロシアの北極圏に位置するネネツ自治管区のGDP(ここでは1人当たりの購買力にあたるPPP)が、世界で1位のカタールの購買力の2倍ということである。
①ネネツ人の住む「ネネツ自治管区」をまず知ろう
広大な土地を持つロシアには実にさまざまな民族がいる。まずロシアの人口は、1.4億人と日本よりも少し人口が多い国ではあるが、そのうちの1.1億人がモスクワ、サンクトペテルブルク一帯を中心したヨーロッパ・ロシア地区(ヴォルガ川以西)に住んでいる。
なので多くの人がロシアをイメージするとき、簡単に言えばモスクワ一帯をイメージしてしまうのである。
またスラブ人口が多いロシアではあるが、民族数は世界の中でもずば抜けて多いこともまず知っておこう。
「ロシアの少数民族の人口順位 TOP57(イケメン、美女写真付き)」
そのうちの一つがネネツ人であり、彼らの多くは「ネネツ自治管区」に住んでいる。人口は4.4万人ほどで、最大の都市はナリヤン=マル。
ちなみにネネツ人の画像を上に載せたが、イヌイットを思い起こさせる、つまり日本人と同じモンゴロイド系であること、近しく感じる理由の一つかもしれない。
「なぜ、グリーンランドの【イヌイット】は日本人に似ているのか?」
さてこの民族は、フィンランドや、ハンガリーなどとも同じ「ウラル語族」に属するネネツ語を維持してはいるが、ネネツ自治管区人口の19%ほどしかいない。というのもポイント。
つまり、ネネツ自治管区=ネネツ人のものではなくなりつつあるのだ。なので、これから書いていくが、1人当たりのPPPが世界一クラスだからといって、格差が存在している可能性もあるし、原住民であるネネツ人が豊かなのか?というのは疑問でもあるのだ。
②1人当たりのGDPがシンガポールの2.5倍
さて。私も驚いたのが、このネネツ自治管区の1人当たりのPPP(購買力平価)が、2937万円にもなるというとんでもない事実だ。
1人当たりのGDPは、自分のところに入ってくる収入を日本の国民で割った数。なので、平均年収に若干近いのでイメージしやすい。一方、購買力平価は国民一人当たり年間どのくらいお買い物したか。つまりどれくらい購入できる力があるのか。ということを示す指標。
つまりPPPで考えた場合、ロシアには、世界で1位であるカタール(1300万円)規模のエリアが3つもあり、日本人が平均時給2000円羨ましい!などと言っているスイスと同等のエリアが9つもあるということになる。
以下は2018年のデータ
1位と2位は、上の地図で真ん中より少し左側にある濃すぎる紫と濃い紫である。北海道の真上にあるサハリンも濃い紫になっていることが分かるよね?
で、以下はアメリカ合衆国のPPP以下。
List of federal subjects of Russia by GDP per capita
20位ほどで終わりにしたいと思う。ロシアの州・共和国はかなりの数なので。ちなみに83位まであったが、約57の州などは、ロシアの平均(290万円)以下となっており、この部分から考えれば、やはりロシアは全体的に見れば貧しい。
上の一部の州や都市の、その一部の人たちが豊だけ。という見方もできる。ちなみにウクライナ(92万円)ということを考えればロシアってまだ豊かな人多いのだな。と思うよ
ちなみに、ロシア平均の典型例として、日本からもすぐ行ける沿海州(ウラジオストク)が、280万円なので、ウラジオストクこそ本当のロシアを表しているとも言えるかもしれない。
「日本人も韓国人のようにロシア極東「ウラジオストク」と「ハバロフスク」に行くべき理由 TOP10」
衝撃の事実と言えば、貧しいと思っていたサハリンの人々が豊かだという点である。これは沿海州にあたるウラジオストクと比較するとよくわかるし、北海道の人は、サハリン人=貧しい人と思っているかもしれないけれども、結構稼いでいる人が多い。
サハリン州の購買力はなんと、東南アジアの資源埋蔵国家ブルネイと同等。サハリン州は49万人しかなく、ブルネイも、42万人しかいないので、人口も似ていて非常に興味深い…。
サハリン州には、石油、天然ガス、石炭採掘、林業、漁業など豊富な資源があり人口が少ないので、1人当たりのPPPが高くなるのだろう…。→北海道人はこの事実を知らないだろうね…。
さて、上のロシアのエリア別1人当たりのPPPを世界の国々と比較してみよう。するといろんなことが見えてくる。以下、2018年版。
List of countries by GDP (PPP) per capita
皆が凄いと思っているカタールやルクセンブルクは1000万円レベル。ネネツ自治管区は人口4万ちょっとと言えど、その3倍…('ω')ノ
ちなみに日本のPPPは442万円(2018年)。これが富裕層や高所得のサラリーマンも多い東京都限定だと、シンガポールと同じくらいの1003万円にはなると思うが、日本の平均はこんなものである。また、購買力の面では韓国と日本はもうほとんど変わらないよね…。
で、話はロシア国内のPPPに戻そう。そこを見ても分かるように、そのほとんどがモスクワを中心としたヨーロッパ・ロシアではないエリアだ。自治管区、共和国、などというものも多い。
そこには日本人と同じようなモンゴロイド系の民族も多く住んでいる。以前書いたよね、日本人が、「自分は日本人です」と言わなかった場合、ロシアで見下されるのか?みたいな記事。
「日本人も下に見られてる?ロシア語圏(中央アジア・極東シベリア含む)における人種のヒエラルキー」
つまり、面白いことにそういうモンゴロイド系の多い人たちが住んでいるエリアで1人当たりのPPPが高いっていうことでもあるのだよね。
特に6位のチュクチ自治管区や、8位のサハ共和国や、なんて、もう東アジアの仲間じゃん…
「イケメンや美女も多い?ロシアのヤクート人(サハ共和国)やチュクチ人は、日本人はなぜ似ている?」
③ネネツ自治管区はロシア経済を支えている?
写真はよくロシアが発展していると主張するときに使われるモスクワ・シティの写真。このビル群、うまくデザインされていて私結構好きなんだよね。大阪とかにも、こういうバランスの良い設計にしてほしいな。って思うけどね…。
さて、この繁栄。一体どこから来たのか。と疑問に思った人はいないだろうか。そう。ロシアの輸出の50%ほどは、天然ガスや石油であることを考えると、天然ガスについては、北極圏に位置するヤマロ・ネネツ自治管区(ネネツ自治管区の東側にある)が8割のシェアを占める。このような北極域(バレンツ海)が、石油・ガス大国ロシアを支えているのである。
と、ロシア北極域の経済発展を考える(日本極地研究振興会)の記事で、田畑 伸一郎氏(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授)が語られているように、このロシアの北極域にある天然ガス、石油などが、ロシア経済を支えているという見方もできる。
そのため、北極域には人口は少ないが、資源が多いので、1人当たりのGDPが高くなるということなのだろう。ちなみに、天然ガスの油田情報はいつもWIKIでは日本語で書かれていないのだよね…。
・ウレンゴイ・ガス田
・ユズーノ=ルスコイ油田
・ナホキンスコイ・ガス田
・ヤンブルグ・ガス田
・エチ・プロフスコイ油田
これら全部英語が読めないと分からない( ゚Д゚)
下の写真は、ネネツ自治管区のナリヤン・マル(人口1.8万人程度)に立つ立派なコンドミニアム。
«Аквилон Инвест» получил престижную премию
この街のユーチューブ動画をみても、それほどパッとした街ではないのだけど、なんか広々とした道路に、大きな家が結構建っていて、北極圏にこんな街があるのだと、改めて驚かされる。
ま、ここではこのような北極圏にある自治管区などがロシア経済を支えているという側面がある。ということを覚えておこう。
④ロシアの天然ガス埋蔵量
ロシアは資源国家。西側諸国から制裁を受けていて天然ガスを思った以上に供給できないこともあってか、GDPが229兆円(2013年)のピーク時に比べ、128兆円(2016年)と約半減する現象も起きて、ロシア人はより貧しくなったとも言われている。
けれどもこの埋蔵量を知ると、ロシアの資源を買ってくれるお客さんさえいれば、ロシアは経済発展することになる。ということが分かる。
プーチンとしては、もっと多くの国に天然ガスや石油を輸出して、ロシアに依存してほしい。というのが本音なのかもしれないね…。
ロシアはパイプラインを使ってヨーロッパや中央アジアのお多くにガスを送っているし、LNGによって日本にも輸出している。
また、こちらをみてもわかるように、ヨーロッパにもまだ結構多くの割合のガスを供給していることが分かる。この割合が、増えたら、ロシアの経済めっちゃよくなるってことだよね…!?( ゚Д゚)→北方領土返ってこなくなる!なんてね‥。
こういう数字を見るとき、私はロシアという国全体を考えていたのだけど、北極圏の一部の地域にある油田から、この資源がでてきていたのだということが、やっとわかってスッキリした気がする。
つまりもう一度言うけれども、ロシアは資源があるエリアの一部の人たち、政府関係者は物凄く儲かっていている一方、ストリートチルドレンなど、物凄く貧しい人たちまで日本では考えられないような差があるってことなのだよね…。
また私も含め、ネネツなんていうキーワードすら聞いたことのなかった人は、これで一つロシアに関する知識が増えたかもね('ω')ノ
ちなみに、2008年の情報で少し古いが、いわゆるこのネネツのある広範囲なエリアを西シベリア経済地区と言うのだけど、人口は約1656万人ほどなのにもかかわらず、ロシアのGDP(国内総生産)の21%を占めていたということが、日本語版にも書かれてあった。
ちょっとしたトリビアになっていただけたのなら幸いだ。
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