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ロシア一危険都市と言われるトゥバ共和国の「クズル」に行くのを断念した理由

2021年7月27日

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ロシア一危険都市と言われるトゥバ共和国の「クズル」に行くのを断念した理由

2021年7月27日




現在、シベリアの首都と言われているノヴォシビルスクにアパートを借りている私。名古屋のように国内では第三の都市であるにもかかわらず、あまりこれといった見所がない都市なのだけど、これがまた気に入ってしまった。というのもこういう場所は作業に向いているからだ。シベリア・中央アジア地区におけるシンガポールと位置づけたい。

さて私は今回、ウラジオストク→イルクーツク→ウランウデ→ノヴォシビルスクと移動しては現地の生活を調査しているが、ウランウデにいた時に、ヤクーツク(サハ共和国)行きの航空券を3万円近くで取ったにもかかわらず、キャンセルした(もちろん返金なんて無し)という苦い経験がある。

その理由は、ヤクーツクでちょうど山火事が起きていたので、その大気汚染の状況や、ヤクーツクの友達から送られてきた大量の蚊がいる現状、エアコンのない部屋が多い、私が乗りたい航空機ではなかった(ロシア製はなるべく乗らないようにしている)などいろいろな懸念が重ねっての判断である。

またちょっと大きめの都市ノヴォシビルスクに行ってから決めればいいやということで現在ノヴォシビルスクが気に入ってしまってアパートの延長を試みている。

で、イルクーツクにいた時にも行こうと試みたけど決心がつかなかったトゥバ共和国のクズル。ここノヴォシビルスクからも2時間以内で直行便があるので行こうと迷っていたが、結局やめた。

ここノヴォシビルスクにいる間、クズルに行くことの判断に使った時間はおそらく10時間以上だろう。今、私にとって、トゥバ共和国が一種のブランドのようなものになっていて、常に考えている。

どうしてそんなに魅力的な場所に思えるのか?という事や、今年行くのを断念した理由などこの記事では語っていきたい。




①私がトゥバ共和国に行きたい理由

まず行きたい簡単に言うと、トゥバ共和国はモンゴロイド系の人種が80%を占めるロシア連邦内でも大変珍しい国だという事。今回、アジアの中のロシアを発見する。というスローガン?で旅たった私の理念に合致している。

これは、YouTube動画でも語った。

コロナ禍の中で、わざわざビザに4万円払ってロシア(シベリア)に3ヶ月間来た理由について(YouTube動画)

けど、端的にいえば、私はすでにトゥバ共和国よりも人口が更に多く、モンゴロイド系のブリヤート人が30%以上住むブリヤート共和国のウランウデに数週間行ってきたので、更に人口の少ないトゥバ共和国に行くのは果たして、どうなのだろうか?本当に今じゃなければならないのか?という結論に至った。

ウランウデがあまりにも自分の中で気に入ったという事もある。今年はこれ以上あっち行ったりこっち行ったりするのはどうかなという感じ。

「ブリヤート共和国、ロシアの超危険都市「ウラン・ウデ」で1ヶ月プチ生活する件」

とはいってもこの決断には相当な時間を要した。以下よりトゥバ共和国とはなんぞや?ということを軽く説明する。

 

②トゥバ共和国とは、簡単に言えば「モンゴル北西部」の事

2010年の国勢調査によると、トゥバ共和国の82%がトゥバ人。人口は30万人ほどでアイスランド程度の人口なのだけれども、ロシアの数ある共和国の中でも、これだけ現地の民族が大多数の共和国は珍しい。これは私がロシアの色んな共和国を調べてきて感じる事である。チェチェン 共和国など、95パーセントが現地人という共和国も確かに複数存在するが。非常にレア。

「ロシアって国じゃないの?なぜ、ロシア連邦には22もの共和国がある?北朝鮮は、23番目の共和国ですか?」

首都クズルの人口は、11万人ほど。この街はロシアで最も危険な都市と言われている。それは後で説明するが、10年ほど前から言われており、今もロシア語圏の記事にそう書かれてあったり、ロシア人YouTuberがそれを確かめにくるといった状態になっている。

さてもう一つ。この地図には載っていないが、西側にはアルタイ共和国がある。けれども面白いことにアルタイ共和国とトゥバ共和国は飛行機の直行便がなく、しかも道路は寸断されている。というか、これらを繋ぐ道路がない。

というのもこの二つの共和国の間には未開発の山があり、そこに道を作っていない。作って活用するだけの人口がいないということもあるのだろうが、わざわざ北部にあるシベリア鉄道の主要駅を通らないといけないようになっている理由は、これらロシアとは全く関係ない共和国が力を合わせて独立しないように。またはこれらの民族間で争いが起きないように?など色々と考えてしまった。

「モンゴルとカザフに挟まれた「アルタイ共和国」と「アルタイ地方」の違いと、顔立ち、家賃相場、見所スポット」




③トゥバ語にみる、トルコとモンゴルの関係

まず、トゥバを語る際に、簡単にこの知識を持っておくべきだと思う。民族の移動の手がかりとなるものにその民族が話す言語系統は何か?というのがあるが、トゥバ語というのは、トルコ語と同じチュルク語族であり、つまり中央アジアのキルギス語、カザフ語、ウズベク語、ロシアのサハ共和国などと同じ言語系統という事である。

もともとトルコ人はモンゴルあたりからトルコ方面に移動していった人たちと現在のトルコにもともと住んでいた人たちがミックスしていったと言われているのでチュルク語=中東、つまりアラブ人の言葉ではないということは先に言っておく。

ポイントは、後でまたこの話と絡めるのだけど、彼らは自分たちをチュルク語を話す民族とみなしている。という事。

 

④中国は、トゥバ共和国の領有権を主張?

色々調べていると、中国がトゥバ共和国を自国の領土だとみなしているかもしれない。というところにたどり着いた。

というのもこの共和国はそもそもモンゴルの一部。そしてそのモンゴルは中国が清王朝だった時代、外蒙古(現在のモンゴル国=その中に現在のトゥヴァ共和国も入っていた)として統治していた。

つまり現在のモンゴルにとっては、清朝統治時代(1635–1911という、275年間に及ぶ期間)という暗黒の歴史(本人たちにとってはそうなのか分からないが)があるという事。と考えればわかりやすいだろうか?

けれども、外蒙古が清国から独立すると、モンゴルという国から現在のトゥバ共和国が独立してしまった。その理由は上にも触れた、トゥバ人自身の外見はモンゴル人とそっくりなのに、自分たちの言語系統がチュルク語なのでモンゴル人とは違うアイデンティティを強く意識しているからであろう。

その隙を狙われたのかは分からないが、その後、ロシアに組み込まれる。けれども、これがまたロシア人(この記事ではロシア人=スラブ人の事)とは合わないのか、ロシア人からすると、トゥバ人はロシア人の事を嫌っている。と思っているようだ。これはグーグルマップで空港など、色んな場所の評価をみている時に、ロシア人がトゥバ人に対してこぼしていたコメントからも察することができた。

私はモンゴル自体が中国に統治されていたという歴史を知らなかったが、これを理解してから、以前クズルの街並みを紹介していた映像をロシア語で見てた時に、住宅地に、「SHANGHAI」と書かれていた意味がやっと分かった。つまり、現地のトゥバ人の若者はは、モスクワ中心のロシア人よりも、同じ外見をした中国の北京や上海を向いているのではないか?という推測。

彼らはロシア連邦にはいたくないのに独立すらできず、しかも一人当たりのGDPベースでいえばロシア最低レベル。中国に組み込まれるわけにもいかず、だからといって外見が似てるけど言語系統が違うモンゴルに統治されるのもプライドが許さない。

そういう状況に、つまり、世界に存在すらしないかのように、ひっそりと存在している共和国ということなのかもしれない。




⑤なぜロシアで一番危険と言われているのか?

下の方にURLを載せておいたが、2021年にあげられたクズルに関する動画にはたくさんのコメントが書かれていた。そのコメントから少しわかったことを書き残しておく。

トゥバには工場がない→雇用がないという意味

ゴミ問題→ゴミに対する意識が低い

アルコール依存→仕事をせずに飲み歩いている人が多い

ナショナリズム→トゥバ人であるという強い誇り

ロシア語が通じない→トゥバ語しか話せない人も多い

シャーマニズム→ロシア人のようにGODを信じない

トゥバ人が権力を握っている→他のロシアの共和国のようにロシア人が関与していない?

トゥバで過去に起きた、報じられてこなかった非トゥバ人による?強盗、殺人などは、ずっと黙認されてきた。というのも、これをロシア側が黙認することでトゥバやチェチェンのような現地の民族が大多数を占める共和国の独立を防ぐために。みたいなことが書かれていたが、よく分からなかった・・

いずれにしても、ロシア人からすれば、チェチェン共和国とトゥバ共和国は民族意識が非常に強く軍がなければ独立してしまうようなイメージのある国ということである。

その中でもチェチェン共和国は首都グロズヌイの高層ビル群を見てもわかるように繁栄している一方、トゥバ共和国は貧しい物扱い。

いずれにトゥバ共和国がロシア連邦から抜けてトルクメニスタンのような独裁政権になると思います。というようなコメントにかなりの、いいね!がつけられていたり。トゥバ人を褒めるコメントで印象的だったのは、トゥバは子供が多いので、これが最高の庭だよ。というものだった。これには、4000もの、いいね!がつけられていた。

子供が多い国は確かに素敵だ。

'https://www.youtube.com/watch?v=6CJrIhsR23I




⑥プーチン大統領や、科学者リチャード・P・ファインマンがトゥバ共和国に惚れる理由

とにかくトゥバ共和国は遠い。ブログの情報だが、クズル南部とモンゴル北部にある国境は外国人は通れないらしい。なので、クラスノヤルスク、イルクーツク、ノボシビルスクあたりから飛行機で行くか、何十時間もかけてバスで行くしか方法がない。

それでもプーチン大統領にとってのお気に入りの地ともなっているトゥバ共和国。

https://www.rbth.com/history/329662-tuva-republic-russia

また、『ファインマンさん最後の冒険』において、ノーベル物理学賞受賞者のリチャード・P・ファインマンが、当時鉄のカーテンの向こうにあったソビエト連邦治下のトゥバ共和国をなんとかして訪れようと、あの手この手を使って努力した。とも語られている。

晩年、友人との談話中にたまたまソ連の「クズル」(現・ロシア連邦トゥバ共和国)という地を知り、どうにかして訪れたいと、何年にもわたって交渉を重ねていた。肝心の理由は「変わった地名だから」というものであった。

Tuva or Bust: Richard Feynman's Last Journey Paperback – Illustrated, May 15, 2000

これはなんと、本にもなっているのである。

ちなみにトゥバ共和国は、アジアの中心と自称しているのだとか。つまり、ロシアの共和国の中でも、アジア意識が非常に強い。一説では、ロシアは、この土地が徐々にロシア化されるのを待つために、現地の民族を放っておいている。そのため、治安が悪化している。なんていうコメントも見られた。

Тыва стала первой по убийствам в России,Кровавый край

 

⑦トゥバ人の外見。トゥバはロシア国内で完全に差別されている?

昔、ロシアの民族!みたいな記事を書いた。3年ほど前だろうか。その時に貼り付けたこの動画。

「ロシアの少数民族の人口順位 TOP57(イケメン、美女写真付き)」

けどロシア語がわかる今、色々見ていると、実はこの動画は、トゥバ人を差別する人たちに向けて作られたような、ポジティブキャンペーンのような動画だった。この記事でも書いたように、トゥバは色々な事情によりモスクワ側からみれば、東京人が沖縄人を見下す以上に偏見を持っている(狭い日本国内とは比較にならないレベル)。

我々から見れば同じように東アジア系の顔立ちをしたトゥバ人は見下すような対象にもなり得ないように思えるが、ロシアのスラブ人が一番上。みたいな空気から考えれば、まずこれは有り得るだろう。

「日本人も「スラブ人」に見下されてる?ロシア語圏(中央アジア・極東シベリア含む)における人種のヒエラルキー」

その上、同じようなアジア人率高めのサハ共和国とは違い、アフリカレベルの一人当たりのGDP。ここもかなり大きいと思う。そういう事情は、私も今回こうやって色々調べていて初めて知った感覚である。

で動画でどんなことを言っているのか?ということを簡単に書いていくと、

私たちは異なっていて当たり前です(ロシアにはスラブ人だけでなく色んな民族がいるのでそれぞれの民族を尊重するべきだ)。ここトゥバには、アルメニア人、ユダヤ人、タジク人、アメリカ人、タタール人、キルギス人などが住んでいて多様です。

トゥバ共和国に住んでいるものはモスクワに住むロシア人のように、テレビも見るし、ピザも食べます。そして同様に、ロシアを愛しています。けど歴史的に物理的に、色々な部分でロシアとは異なります。外見も、やり方も、宗教も。

私たちに否定的な人たちも多いかもしれないけれども、例えばバリ島はインドネシアの中でも異なった宗教を持つ民族が多くを占めています。そしてインドネシアのジャワ人はバリ人に対して、ケチだと言いますが、一人一人がユニークであっていいのではないでしょうか。

というような内容。少し脚色したけれどもこんな感じだ。つまり自分たちはロシア人を憎んでいない。ただ平和的にロシアに残りながら生活したいんだ。色眼鏡で見るのはやめてくれ!というメッセージのように感じられた。

この動画に対して、同じ言語系統のアゼルバイジャン人から、トゥバ人よ、愛してる!とか、クズルの犯罪や、治安の悪さは誇張されすぎ、実際に行ったけど、夜にホテルまで戻った時、私のことを指差す人すらいなかったなど、トゥバに対して、肯定的なコメントで溢れていた。




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