アラビア語を最初に学び始めたのは、2015年頃。全く新しい言語にウキウキで、今まで全く知らなかったイスラムの世界を除くようになってきた。今現在、私はインドネシアやマレーシアでの生活を終え、次は中央アジア(カザフやキルギス)に行こうとしている。中央アジアもまたイスラム教国家の集まりである。最終的にはアラブにも行きたいが、私のイスラム教の知識はまだまだだ。
ということもあってか、多くの人が「イスラム教=●●だよねぇ?」と勘違いしていることをきちんと調べてみることにした。
イスラム教のイメージといえば、テロリスト、ヒジャブ(スカーフ)、割礼、セックスジハード、児童婚など、日本にはほとんどないものが多いが、そういうものを一つずつ取り上げて、解決していきたいと思う。
おそらく、ここに書くことって、多くのイスラム教徒も知らないことなのではないか。と思う。なぜならイスラム教徒の人口は多いが、彼らの皆がコーランを全部理解しているとは限らないからである。
この記事を読み、少しでも誤解を解き、イスラム教には色々なものが絡み合っている。ということを理解してもらえたらと思う。
また新しい世界を開くきっかけ(アラビア語を学びはじめる)などにも、役立ててもらえればと思う。
①コーランに、FGM(女性器切除)は言及されていない
コーランには、FGMについて言及されていない。というのがイスラム教徒が口を揃えて言っていることだ。けれども、ユダヤ教には旧約聖書以外に、タルムードという本もあるように、イスラム教にも、コーラン以外にハディースという、ムハンマド自身が日常生活の中で語った言葉やその行動についての証言の本があり、これにはFGMが言及されている。
以下の記事でも書いたのだけれどもその内容とは、
「男は切除されていない女を選ぶのよ。という声も。イスラム教徒の間で行われている、FGM(女性器切除/割礼)の実態 TOP10」
ムハンマドは、”FGMはしてもよい”が、私のところへもうちょっと寄ってちゃんと聞いて欲しい。”切除は過剰にはやってはいけない。なぜなら、それは顔により多くの輝きをもたらし、夫にとっては最高の喜びの元なのだから”
つまり、FGMはコーランに記されていないだけでなく、ムハンマドはFGMが義務だとは言っていない。むしろ、切除は過剰にはやってはいけない。と言っているのだ…。
けれども、アフリカや中東にはイスラム教が入ってくる前の独特な風習があり、そういうものがイスラム教という名の下、行われている可能性のほうが高い。
「アフリカ・中東・インド(南アジア)の奇習、迷信、不思議な民族 TOP10」
②一部のムスリム(インドネシア人など)はヒジャブを被らない理由
イスラム教徒の女性と言えば、ヒジャブを被っているイメージがあるだろう。イスラム教の国は、北アフリカ、中東、南アジア、東南アジアと範囲が広いが、特にマレーシアとインドネシアに短期的に住んだことのある私は、マレーシアでは皆ヒジャブをつけていて、インドネシアではつけていない人もいたので、少し疑問に思っていた。
この答え。英語圏で、コーランの解釈専門のサイトを読んで、やっと分かってきた。Sam Gerrans氏によると、コーランには、ヒジャブの着用を義務付けたような文言は一切なく、ドレスコードに関してコーランから見つけられたのは、以下だけだという。
・イスラム教を信じる女性は、人を凝視することを慎まなければならない。(男性も然り)
・イスラム教を信じる女性は、謙虚さ・貞節を守り抜くこと。(男性も然り)
・イスラム教を信じる女性は、胸元をきちんと覆い、胸元を露出するような歩き方をしてはならない。
・イスラム教を信じる女性は、上に記したような方法で、挑発的に歩いてはならない。
・イスラム教を信じる女性は、長い服を着ること。(ショートパンツやスカートがダメだという意味)
結論(簡単に説明)付けると、以下のようになる。
Q: コーランはイスラム教を信じる女性に対して頭に何かを巻くことを義務付けていますか?
A: いいえ。Q: コーランはイスラム教を信じる女性に対して、控えめな服を着ることを求めていますか?
A: はい。そうです。Q: 頭をスカーフなどで覆うことが謙虚さの要件である社会は存在しますか?
A: はい。存在します。Q: 伝統的な「イスラム」のドレス(ロングドレスとスカーフなど)は、コーランを信じる女性の要件を満たしていますか?
A: はい。満たしています。Q: 伝統的な「イスラム」のドレスは、コーランが求める要件と全く同じですか?
A: いいえ。
A headscarf does not make a woman a Muslim
つまり、イスラム教徒といっても、コーランを全部読めていない人が多く、情報が錯綜していて、ヒジャブを被ることはコーランに書かれていると勝手に思い込んでいる人も多いのかもしれない。
③セックス・ジハードの意味
イスラム教におけるセックス・ジハードとはつまり慰安婦みたいなものなの?と思っている人は結構多い。というのも、戦場にイスラム女性が誘拐され、そこでレイプされて殺されてしまうような、そういうイメージがある言葉だからである。
そもそもジハードという言葉を思い出してほしい。ジハードと聞くと、戦前の日本人が特攻隊といって、自殺するようなイメージがある。特に有名なのが自爆ベルト…。というのも、「ジハード=聖戦」。と訳されることが多いからだ。また、聖戦=敵をぶっ倒す。というようなイメージもある。
けれども厳密にいうとこれは間違いで、アラビア語ではジハード=「努力」「奮闘」の意味であり、ムスリムの主要な義務である五行に次いで「第六番目の行」といわれることがある。
以下、コーランにあるジハードの記述(日本語版)
。
8:72 本当に信仰して移住した者たち,財産と生命を捧げて,アッラーの道のため奮闘努力〔ジハード〕した者たち,またかれらに避難所を提供して援助した者たち,これらの者は互いに友である。また信仰した者でも,移住しなかった者については,かれらが移住するまであなたがたは保護する義務はない。只し,かれらがもし宗教(上のこと)であなたがたに救援を求めるならば,あなたがたと盟約のある間柄の民に逆らわない限り,これを助けるのはあなたがたの義務である。アッラーはあなたがたの行うことを御存知であられる。(ジハードより)
自殺する、つまりテロリストになれ!というような記述はどこにもない。あくまでも奮闘努力という意味なので、これは努力した意味でいろいろ使われているのが現状。
ジハードの語根は、 effort 努力を意味する جهدであり、多くのイスラム教徒は、自爆テロをするイスラム教徒に対して、「彼らはイスラム教徒ではない」とまで言うことがある。
とちょっと長くなってしまったが、以下にセックスジハードの意味を書いていきたいと思う。
セックスジハードとは、これから戦争に赴く男性や、テロで死を覚悟した男性のところに行き組織的にその男性とセックスをすることによって、性的な快楽を用いてイスラム戦士たちの士気を上げることを目的とした行為だそうだ。
これが本当であれば、まさに慰安婦と同じようなものなのであろう。また、このセックスジハードは強制的に連れていかれるものもあるが、自分の意志で、ジハード。つまり奮闘努力のために、自ら赴くことが多いようだ。
とはいえ、戦争中はどこも慰安婦のようなものがあったということからも、どこの国でもこういう女性を物扱いする文化は変わらないのかもしれない。とも思えてしまう…。
④サウジアラビアで行われている斬首刑
サウジアラビアと言えば、斬首刑のイメージである人も多いのではないだろうか。
1977年に、世界中が驚いた出来事があった。まさかだけれども、サウジアラビアの頂点に立つ王室関係者が王室関係者によって処刑された出来事である。
サウジ王室のプリンセス(マシャイル・ビント・ファハド・アル・サウード)→上の写真が、ジナ(私通、婚外・婚前性交渉)、つまり、結婚前にいかがわしい行為をしたことを理由に、死刑になったのである。
その時の映像は、ユーチューブに載っていたのを私は以前見たことがある。頭に焼き付いて消えないような映像だった。
さて、2018年10月には、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で、サウジアラビアの著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が生きたまま切断された、つまり斬首されたという事件があった。これには、サウジアラビアの時期国王になるとされているムハンマド・ビン・サルマーンが関与していると言われている。
さて、コーランこの斬首について言及しているのだろうか。ということを以下に書いていこう。
ヨーロッパで昔から斬首刑というのが行われていたように、イスラム教圏でも行われていた。20世紀の終わりころには、多くの国でこの斬首刑が廃止されたが、サウジアラビアだけはまだ残っている。
コーランの記述に関しては、以下の二つが代表的なもののようだ。
あなたの主が,天使たちに啓示された時を思いなさい。「われはあなたがたと一緒にいるのだ。信仰する者たちを堅固にせよ。」われは不信者たちの心の中に,恐れを染み込ませよう。その時あなたがたはかれらの首を刎ね,またそれぞれの指先を打ち切れ。 (8:12)
あなたがたが不信心な者と(戦場で)見える時は,(かれらの)首を打ち切れ。かれらの多くを殺すまで(戦い),(捕虜には)縄をしっかりかけなさい。その後は戦いが終るまで情けを施して放すか,または身代金を取るなりせよ。もしアッラーが御望みなら,きっと(御自分で)かれらに報復されよう。だがかれは,あなたがたを互いに試みるために(戦いを命じられる)。凡そアッラーの道のために戦死した者には,決してその行いを虚しいものになされない。(47:4)
つまり、コーランには斬首についてきちんと書かれている。けれども、イスラム教の国々で斬首刑をまだやっているのは、サウジアラビアだけのようだ。
⑤児童結婚
以下の記事でも紹介したのだけれど、日本に住んでいると分からないが、世界の多くの国で児童結婚が行われている。
「児童婚が行われている国 TOP20 と、欧州・アフリカ・中東・アジアで児童婚が消えない10の理由【海外の反応】」
児童婚に関しては、児童婚をしても良いという記述はないが、以下のような記述がある。
ムハンマドは、メディナ時代の初期(50代のとき)に9歳の少女アーイシャと結婚した
このため、多くのイスラム教国家では、じゃ、俺らもいいじゃないか。ということで広まっているのではないだろうか。
というのも、あのシャリーア(コーランと預言者ムハンマドの言行(スンナ)を法源とする法律)を基本としている国でもある、サウジアラビアでは児童婚の禁止に努めている国でもあるのでね…。
⑥女性は、車を運転してはいけない?
2018年6月24日、サウジアラビアでは、今まで長らく続いてきた女性が車を運転できない。という禁止令を解除した。そもそも、自動車ができたのは近代に入ってからなので、車を運転してはいけないという記述はコーランにはない。
Why are many Muslim women prohibited from driving?
サウジアラビアはイスラム教国家の中でも、唯一女性の運転を禁止してきた国である。他のイスラム教国家からも、おかしいと言われていた。
⑦一夫多妻制
イスラム教では、最大4人の妻を持つことができる。その理由は、戦争によって男性の数が減った場合、全く結婚できないという女性を作らないためだと言われていて、それは過去にアラビア半島という砂漠の地において、衝突が何度も起き、子供を抱えた女性が寡婦として生き残った歴史からきているようだ。
なのでそもそもは、このような理由からだけれども、現在は自分の好きな妻を何人か選び結婚するケースも当然あるだろう。
⑧「ヒジュラ」の意味
ヒジュラはアラビア語で聖遷(せいせん)の意味である。聖戦(せいせん)ではないので混同しないでね。現在のサウジアラビアがある辺りには昔、国というよりも部族が多く集まった感じで、モンゴルのように色んな遊牧民などが一緒に暮らしていた。
けれども、簡単に言うと彼らはまさに野蛮な存在であった。そこで商人であったムハンマドがこれら全域の部族をイスラム教に入信させ、今現在まとまった形となっている。
当時ムハンマドが登場した時代、ビザンツ帝国(現在のトルコなど)と、ササン朝ペルシア(現在のイラン)が対立をしていて、ビザンツ帝国から東にずっと行けばササン朝ペルシアなのに、通行できないという事情があった。
けれども、メッカというのは現在のアジアで言えばシンガポールのように、そこを通るだけで貿易が成り立つような地理的条件であったため、商業の街として栄えていた。
ムハンマドは自身が生まれ育ったメッカでイスラム教を広めようとしたところ、そこの住む富裕層に迫害され、北部にある都市メディナに移ってしまう。
これがイスラム教徒にとって、メッカとメディアという都市が有名である理由だ。つまり聖遷(聖域的な都を他の地に移すこと)だ。
ここでのポイントは、イスラム教的な考えでは、以下のような富裕層による富の独占を非常に嫌っているという事である。
「大富豪上位8人(そのうち半数はユダヤ人)だけで、世界人口の半分以上の純資産を持つ事実と、日本の上位10人の資産が国民3000万人分である現実」
一方、ユダヤ教は、自分たちが勉強することが美徳という考えがあるので、大富豪になることは悪くはなく、ユダヤ教には頭を使って成功した人がたくさん輩出されている。
まだまだあるけれどもこの辺で…。次回、ホモセクシャルに関してなども追記していきたいと思う。
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