意外に知られていない語族。それがオーストロネシア語族ではないだろうか?以下の地図からもわかるように、太平洋とインド洋の島々をほぼ独占状態の言語族。代表する話者数が最も多い言語がインドネシア語である。
もともと台湾の先住民族などから派生した?とも言われているオーストロネシア語族の言語は大きく分けると、マレー・ポリネシア語派と、台湾諸語に分けられ、このランキングに出てくる言語のほとんどが、マレー・ポリネシア語派である。私が探したソースではオーストロネシア語族の中からその国を代表する言語をかき集めたランキングだったので、台湾の少数民族に話されている言語は一番下の方に追加しておいた。またインドネシア国内にも多く話されている言葉があるので、それはインドネシア語のカテゴリに追加しておいた。
さて、この記事の目的はインド洋と太平洋を巻き込んだ言語系統(オーストロネシア語族)を知ることで、より多くの島々や先住民に興味を持つことや、注目されない国のことを知ることで、昔日本とも多く関わりのあった歴史なども掘り起こす何かのきっかけになってほしいというものである。
注目されない言語だからこそ面白い。私はそれを超マイナー言語であるキルギス語の学習で味わっている。
では、マダガスカルからハワイまでまたがる巨大なオーストロネシア語族の世界にレッツゴー!
20位 ナウル語(6000人)
話されている国 ナウル共和国
ナウル語は、ナウル共和国で話される言語。英語とともに公用語となっている。ちなみにナウルという国名は、「私はビーチに行く」を意味する"a-nuau-a-a-ororo"という文章を縮めたものであるとされている。
ナウル語で話している動画が見つかったので上に貼り付けておく。
19位 ニウエ語(8000人)
話されている国 ニウエ
ニウエ語は、言語的分類でトンガ語が最も近い関係にある。ちなみにニウエという国はクック諸島、トケラウ、ロス海属領とともに、ニュージーランド王国の構成国の一つ。
18位 ツバル語(1.3万人)
話されている国 ツバル
ツバル語はツバル、フィジー、キリバス、ナウル、ニュージーランドなどで話されている言語。
17位 ラロトンガ語(1.4万人)
話されている国 ニュージーランド
ラロトンガ語はニュージーランドのクック諸島で話される言葉。クック諸島マオリ語とも言われる。言語学分類的にはタヒチ語やマオリ語に近い関係にあり、この事実を知るとニュージーランドとタヒチ(フランス領)が同じ言語系統で繋がっていることがわかるようになる。
16位 パラオ語(1.5万人)
話されている国 パラオ
パラオ語は親日国とも言われる国の言語で、日本語の語彙も多少定着しているパラオ語。フィリピン南部のミンダナオ島から東に行ったところにある国で、フィリピンの言語とも言語系統が同じである。
15位 ハワイ語(2.4万人)
話されている国 ハワイ
以下の記事で説明したこともあるのだけれども、ハワイ語は日本語と同じモーラタイミングの言語であり、一つ一つをはっきり発音するような言語なので聞き取りが非常に簡単。またDuolingoという言語アプリの調査によると、ハワイ州ではハワイ語を学ぶ人も増加中なのだとか。
「ハワイ語を勉強するメリット(発音は日本語に近く、東南アジア言語の親戚)」
14位 マーシャル語(5.5万人)
話されている国 マーシャル諸島、ナウル
マーシャル語は、パプアニューギニアと、ハワイのちょうど真ん中に位置するマーシャル諸島(地図では探すのが難しいほど小さい)で話されている言葉。
13位 チャモロ語(9.5万人)
話されている国 グアム(アメリカ合衆国)
チャモロ語はグアム・北マリアナ諸島(北マリアナ連邦)の現地人の母語。グアムといえば小笠原諸島からすぐ下のところにあるので、地理的にも日本から非常に近いところにある言語の一つ。
12位 トンガ語(10万人)
話されている国 トンガ
トンガ語は、トンガ王国の公用語となっている。文法的な語順がアラビア語と同じ、VSOであるという点は興味深い。ちなみにトンガは地理的にフィジーとニウエの間にある。
11位 タヒチ語(12万人)
話されている国 フランス領ポリネシア(ソシエテ諸島、マルキーズ諸島、オーストラル諸島(トゥブアイ諸島)、トゥアモトゥ諸島、ガンビエ諸島)
タヒチといえばフランス領。つまりフランスの言語ということになる。タヒチ語は、子音が非常に少ないことで知られる。母音は日本語と同じ、あいうえお。のみなのだけれども、子音はたった10以下しかない。
これは非常に面白いと思う。以下に動画も載せてみた。
10位 ヒリモツ語(12万人)
話されている国 パプアニューギニア
パプアニューギニアの公用語の一つである。パプアでは英語も公用語の地位にあり、英語のクレオールでもあるトク・ピシンも話されている。ちなみにインドネシアでは同じ言語系統でもあるが外見がかなり異なるパプアニューギニア人を見下す傾向がり、社会問題にもなっている。
「独立する可能性も。インドネシアで差別されている「パプア人」がついにキレ始めた理由は「サル」や「ブタ」が原因?」
9位 キリバス語(12万人)
話されている国 キリバス
名前が似ているということもあり、キルギス語とよく間違えられる言語。
「メリットなし!なのに「キルギス語」に惹かれ、勉強し始めた理由」
8位 マオリ語(15万人)
話されている国 ニュージーランド
マオリ語は主に、ニュージーランドの先住民に話されている言葉。つまり今でこそ英語の国になっているが、蓋を開けてみればここはマオリ語の国ということである。
7位 サモア語(51万人)
話されている国 サモア独立国
サモアで話されている言葉。ここは英語も公用語。
6位 フィジー語(63万人)
話されている国 フィジー
フィジー語は、フィジーにおける公用語の一つ。ちなみにもう一つの公用語は、なんとヒンディー語である。。
「ヒンディー語(ウルドゥー語)を勉強するメリットと需要、将来性」
ちなみにこのフィジー語を聞いていても、Rの使い方などがインドネシア語のように聞こえる。
5位 テトゥン語(80万人)
話されている国 東ティモール
テトゥン語は、東ティモールの公用語の1つである。ちなみにもう一つの公用語はポルトガル語である。あまり存在感のないポルトガル語だが、実はもっと色んな国の公用語になっているのは意外と知られていない。以下で以前紹介した事がある。
4位 マダガスカル語(1800万人)
話されている国 マダガスカル
台湾やインドネシアからは非常に離れた場所で話されているマダガスカル語。マダガスカルはアフリカだと思われがちだが、マレー半島のほうから渡った人たちが現在のマダガスカル人と言われ、顔立ちも日本人などの東アジア人に近いのが特徴。
3位 タガログ語(2000万人)
話されている国 フィリピン北部
フィリピンではいろんな言語が話されているので、フィリピンの公用語=必ずしも多くの人に話されているわけではない。とはいっても、2000万人の母語話者加え、+6000万人の第二言語話者がいるので実質的に8000人ほどに話されている言語と言われている。
またフィリピンは人口が伸びているので今後のタガログ語事情が気になるところだ。
2位 マレー語(3000万人)
話されている国 マレーシア
インドネシア語の学習者が多いのでマレー語はあまり注目されないが、マレー語とインドネシア語は非常によく似ている。それはインドネシアがそれぞれの民族を統一するためにマレー語を基礎にインドネシア語を作ったからだと言われている。なので両言語は非常によく似ている。
1位 インドネシア語(2.5億人)
話されている国 インドネシア
「インドネシア語・マレー語を勉強するメリット、需要、重要性」
この中でダントツに人口の多い言語。そもそもいくつかの言語に分かれていたインドネシアだが今後さらにインドネシア語の理解度が進んでいき、特に若い人はインターネットで情報を吸収しているので多くの人と関われる言語になるという点や、ASEANの全人口の4割ほどに相当する規模の人口を持つインドネシア語は、この20言語の中で一番優先度が高くなるかもしれない。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_major_and_official_Austronesian_languages
ちなみにこのランキングには、インドネシアで話されているジャワ語、スンダ語などが入っていない。以下参考に、インドネシアではインドネシア語が国語ながらも、それぞれの言語の話者数は結構ある。以下、300万人以上の話者数を持つ言語。
ジャワ語(8400万人)
スンダ語(4200万人)
マドゥラ語(1400万人)
ミナンカバウ語(550万人)=北海道と同じくらいの人口(一つの国できちゃう)
ブギス語(500万人)
パレンバン語(390万人)
バンジャル語(350万人)
アチェ語(350万人)
バリ語(330万人)
インドネシアは非常に多様な民族構成となっているので以下も参考に。
「日本人とも関係がある?多民族国家「インドネシア」の民族 TOP20」
番外編。台湾の固有言語
ランキングには台湾の言語は載っていなかったが、私独自に探してみた。
アミ語(20万人)
パイワン語(9.6万人)
タイヤル語(8.6万人)
ブヌン語(3.8万人)
これらも全部、マダガスカル語、インドネシア語、ハワイ語と繋がっているのである。
ちなみに台湾の民族の記事については以前書いた事がある。
「台湾(中華民国)の原住民族 TOP16 と、小さい島国にこれだけの少数民族がいる理由」
最後に
オーストロネシア語族に属するたくさんの言語の存在といくつかの音を見ていったが、やはりここで知って欲しかったのはオーストロネシア語族の言語がマダガスカルからハワイまで広い範囲に広がっていった言語であり、日本人にもあまり知られていない点である。
そしてどれか一つでもかじることで、多くの国の時事ネタだったり事情にアンテナを張るようになるため、これまた視野が広がり自分だけしか知らない情報を多く吸収できるようになるということであり、人生の楽しさが広がるはずである。