インドと言えばまず英語、そしてヒンディー語というイメージが強いのではないだろうか?
とはいっても実はタミル語はヒンディー語よりも多くの国で公用語の位置を確立している言語でもあるということはあまり知られていない。
さて、そもそも私自身「タミル語を勉強するメリット」という記事は実は2018年くらいに書いたものがあったのだけど、あまりにも記事の内容が浅すぎたので削除してしまったという痛い過去がある。なぜならタミル語なんて学ぶメリットがないのは誰がどうみてもわかる事じゃん!と思いながらも書いていた記事だったからだ。
それから5年以上が経ち私も色んな国に回り色んな言語に触れて調べることで、タミル語ってかなり重要な言語なのではないか?ということを感じるようになってきた。
この記事はそういうタミル語のことをなるべく詳しく理解できるように紹介していきたいと思う。
①タミル語は、インド固有の古い言語であり、ブランド価値が高い
インドにはイランのほうからインドに入ってきた白人のアーリヤ人とインドの土地にもともといたドラヴィダ人がいる。インドに行けば分かるのは、肌が浅黒くても骨の形はヨーロッパ人の北部系とアジア人に近く肌もさらに浅黒い南部系がいるということ。
もちろん多くの歴史を超えて色んな人がミックスをしてるので、北部が、南部がとかは言えないのだけど、言語の流入過程からこのように大きく分けて二つの人種が交わっているのはほぼ確実と思われる。
「インド人が白人のような顔をしている理由と、南北における言語対立」
このように北部のヒンディー語、南部のタミル語やテルグ語と言われることもあり、南部の言語を話す人たちのほうが自分たちの言語に強いプライドがある傾向もある。そして人口ではテルグ語のほうが多少多いが、タミル語は他の国も巻き込んだ言語なので、タミル語の方が知名度が高い。
その上、タミル語は世界で最も古い言語、つまり今話されている語彙や文法などがあまり昔と変わらないまま残っている珍しい言語ということで話題になることも。世界一というのは怪しいが、数本の指で数えられるほどではある。
日本語なんかを見てみると、昔の日本語と今の日本語は全く違っているが、そうイメージしてみればわかりやすいかもしれない。
また、ヒンディー語はアラビア語やペルシア語の影響を強く受けている一方、タミル語はインド固有の言語なので、少なからずアラビア語と同じ単語も流入しているがヒンディー語ほどではなく、実質的にインドを代表するような言語であると言われることが多い。
ちなみに、Britaninica という辞書によると以下のことが書かれている。
2004 年、タミル語はインドの古典言語として宣言されました。これは、タミル語が 3 つの基準を満たしていることを意味します。 独立した伝統があります。 そして、かなりの量の古代文学を所有しています。 21 世紀初頭には、6,600 万人以上がタミル語を話していました。
https://www.britannica.com/topic/Tamil-language
私に言わせると、インドの中でタミル語こそがブランド価値の高い言語ではないか?とも最近思えてくるのだ。
②ドラヴィダ語族の言語
タミル語都同じ言語系統で、3000万人以上話される言葉には、テルグ語(8112万人)、タミル語(6902万人)、カンナダ語(4370万人)、マラヤーラム語(3483万人)がある。
これはインド人口14億人に対して、2.5億人ほどの規模である。このように並べると少なく思えるかもしれないが、日本の二倍の人口、ASEANの半分近くを占めるインドネシアの人口などと同等である。上の地図をみると、赤くなっているところがそのエリア。ちなみに上の地図からもわかるように、パキスタンの一部でも、ブラーフーイー語というドラヴィダ系の言語を話す人たちがいる。
つまり、タミル語がわかると、これらの言語話者への理解がつながるのと同時に、相手に強い親近感を与えることができる。
特にインドで一番過ごしやすいと言われているバンガロールを拠点とする場合、英語+ヒンディー語はもちろんのことだが、ドラヴィタ語族の言語を一つ軽くでも理解しておく事で、自分自身がその周辺の州や都市に興味を持っていくだろう。
特にバンガロール(カンナダ語)、ハイデラバード(テルグ語)、チェンナイ(タミル語)、コチ(マラヤーラム語)など、南部には快適な大都市が非常に多く、バンガロールを拠点とした場合、これらの都市に飛行機で1時間ほどでアクセスすることが可能。
もちろんインド全体でヒンディー語は通じるが、その中でも自分だけの南インドを楽しめること間違いなし。
タミル語話者にとって、マラヤーラム語はゆっくり話せば60%ほど理解でき、カンナダ語は25%ほど理解でき、テルグ語が10%ほどしかわからない。という。
https://www.quora.com/Can-a-Tamil-speaker-understand-Telugu-Kannada-and-Malayalam
③タミル語は、インドだけの言語ではない
私がタミル語をヒンドゥー語と同じくらい重要だと最近思ってきた理由は、ヒンディー語はそれは5億人以上に学ばれている言語で便利なはずだが、私自身、夏は暑すぎで冬は大気汚染が激しいデリー周辺には頻繁に行かないし、もちろんチベット人が多く住んでいるダラムサラなどでは沢山使えたので便利とは思っているけれども、日本からインドに旅行に行くとなると、冬の寒い時にインド南部に行ったり、マレーシアやシンガポール、スリランカにいることの方が多いので、そうなるとタミル語が一番楽しめるのではないか?と思っているのだ。
以下、タミル語が公用語扱いとなっている国。
タミル・ナドゥ州、スリランカ、シンガポールなどで公用語、またインドでは、ポンディシェリ(ここはフランス語も一応公用語となっている・・)などでもタミル語が公用語となっている。
上の写真はポンディシェリ。ここは昔フランス統治されていた場所で、フランス語の学校が多くあり、インド国内でもフランス語を学習する人たちの拠点にもなっている。このポンディシェリでも公用語はタミル語。
またシンガポールやクアラルンプールの空港には必ずタミル語をみるし、最近は成田空港でも一部のパンフレットではタミル語をみることができる。
④国別タミル語話者数
6902万人(インド)
313万人(スリランカ)
180万人(マレーシア)
29万人(アメリカ)
25万人(南アフリカ)
19万人(シンガポール)
この数字を見ると、特にマレーシアに180万人もいるということに驚くはずである。マレーシアの人口(3357万人)からみればかなり多い。特にクアラルンプールなどの都市に行けばより増えるので、マレーシアでもタミル語話者と練習する事が可能である。
ちなみにマレーシアのインド人のほとんどがインド南部からの移民。なので、ヒンディー語話者はたったの6万人ほどしかいない。マラヤーラム語(34万人)や、テルグ語(12万人)なども合わせると、マレーシアのインド人移民のほとんどは南インド人ということになる。
https://en.wikipedia.org/wiki/Languages_of_Malaysia#Tamil
⑤日本人学習者が歓迎される理由
白人系のヒンディー語話者とは違い、上記からもわかるようにタミル語話者はインドにもともといた人たちの言語と考えればわかりやすいと思う。彼らは日本語や韓国語に対して、自分たちの言語や習慣、文化は似てると思っている。そのような動画が出るとかなりの再生数を稼ぎ、友好的なコメントで溢れる。
特にタミル語と韓国語同祖論的な動画は、インドでも韓国でもかなり視聴されている。以前は日本語とタミル語の同祖論が日本でも話題になったが、それよりも話題になっているのである。
また同じドラヴィダ語系のカンナダ語と日本語は、iruなどが同じだよね。ということで話題にも。
つまりドラヴィダ系の人たちはこちらが真面目にタミル語などを勉強すればかなり喜んでくれるということである。おそらくそれは単に5億人のヒンディー語を勉強するのとでは全く違う感覚であると思う。
それは以下の記事を読めばなんとなくわかるかもしれない。もちろんヒンディー語を勉強すると喜ばれるだろうが、そもそも北部と南部で文化も人の気質も違うので、それらの言語を話そうとすることで体感することは違うと思うのである。
「2050年には1億人増も、ヒンディー語がインドで軽視されている理由」
⑥文字だけ、名詞単語だけの習得もあり
西洋の言語のように文字の習得が不要な言語を学ぶ日本人が多いのであまり意識しないところではあるが、独自の文字システムを持つ言語を習得する際に文字だけマスターするだけでも、その言語の50%はクリアしたと言われるくらい文字の習得は重要。
ハングルは2週間書き写したりタイピングなどをすることで習得する事ができるようにタミル語も同じように勉強してみるのもあり。
もちろん一つの言語がそんな簡単に覚えられるわけではないのだが、最初は自分に甘くていい。タミル文字を覚えたらその文字を使って秘密の暗号を書き、誰にもわからないメモなどを作ることも可能である。
ちなみに2年前に私のtwitterで言語好き100名以上にとったアンケートでは、可愛い文字ランキングで2位。タイ語やアラビア語の文字よりもかわいいという結果に。ちなみに1位はジョージア文字。
以下、簡単に学べるタミル語テキストで学習してみるのもいいかもしれない。
ニューエクスプレスプラス タミル語《CD付》 単行本(ソフトカバー) – 2020/3/11
⑦韓国語学習者も注目
上にも書いたように韓国語とタミル語の類似が指摘されているので単語レベルで掘り下げるのが楽しくなる言語でもある。私はまさにこのためにタミル語の語彙を掘り下げているところ。他の記事でその類似に関するものも上げていこうと思う。
⑧タミル語のコンテンツ
タミル語のニュースといえばまずはBBC。クオリティが高いので、聞き流すところから始めるのがコツ。
https://www.youtube.com/@bbcnewstamil
⑨最後に
話者人口が多ければ良いというものではない。ヒンディー語は5億人もの話者数がいるが、やはり自分がよく行く土地、興味を掘り下げたい文化がそこにあるのなら、タミル語の文字や、簡単なフレーズを習得するだけでもチャレンジしてみてもいいのでは?