7年ほど前にアラビア語を始め、2年ほど前にヒンディー語も着手。またペルシア語はビギナーに一年教えた経験があるため、初級の色々な単語、フレーズに触れてきた。その中でいつも思うのは、これら3つの言語の中で3番目に勉強し始めたヒンディー語は、単語をやっていると知っている単語がいくつもあるという点だ。
もちろんヒンディー語を始めるのは文字や、英語とは全く違うルールだったりで最初はかなりとっつきにくいので、この期間を突破できる人はごく僅かな人たちということになるのだけど、それでも私の場合、いろいろな苦労はあったものの、アラビア語やペルシア語の学習経験があるためか、現在はヒンディー語の学習速度が、かなり速くなってきている。それどころか、ヒンディー語を勉強している=アラビア語やペルシア語の復習、または新しい単語やフレーズの発見という好循環になっていてやっていて楽しいと感じる。
そんな私は現在中央アジアでひっそりと暮らしているが、先月くらいに行ったチベット人地区を含む2回目のインドも終え、やっとヒンディー語とアラビア語が似ている理由について書けるような気がしてきた。
※インドのダラムシャーラーに行ってきた。
「インドのチベット「ダラムシャーラー」に2週間滞在。ノマドは可能か?」
ということで、まとめていきたいと思う。
①まず、両言語は言語系統が異なる
アラビア語もヒンディー語も、アジア太平洋とは違う顔立ちの少し浅黒い人たちが話す言語っていうことで、似てて当然でしょう?と思う人も多いかもしれない。とはいっても、ヒンディー語とペルシア語はインド・ヨーロッパ語族といって英語やロシア語と同じ系統なのに対して、アラビア語は北アフリカや中東などで話されているアフロ・アジア語族の言語であり、完全にアラビア語とヒンディー語は離れていると言える。
それでもこの複雑なエリアをよく知らない日本人からすれば、イラン(アラビア語圏)やイラク(ペルシア語圏)も区別できないように、中東もインドも同じものだと思っていた。という強い印象があるのかもしれない。
実はそれは日本だけでなく、英語圏でも一緒くたにしている人たちがいるということは以前以下のような記事で書いた。
「なぜアラブ人とインド人は見分けがつかないのですか?また、どちらが優秀ですか?【海外の反応】」
②ヒンディー語が、ペルシア語やアラビア語に似ている理由
ヒンディー語とパキスタンのウルドゥー語ははデリー方言をもとに整備された言語だけれども、ムガル帝国(1526年〜1858年)よりも前の11世紀頃からインド北部の公用語的な地位として話されていたというのである。
ペルシア語という言語はアラビア語よりも古い言語だけれども、アラビア語が7世紀ほどに誕生して以来、イスラム教がペルシアにも伝わったのと同時に、ペルシア語もアラビア語を受け入れたので、その後、インドにもペルシア語が流入して現在のヒンディー語にも影響を強く与えているとうこと。また、そもそもペルシア語とヒンディー語は言語の下位グループが同じなので、共通する部分は元々少なくなかったというのもあると思う。
これは私が実際に、ペルシア語とヒンディー語と、周辺の言語を学んでいて、それぞれの単語をwiktionary で語源調査しながらやっていると感じることなのである。
https://en.wikipedia.org/wiki/Persian_language_in_the_Indian_subcontinent
③ヒンディー語と、ペルシア語は理解し合える?
ヒンディー語とペルシア語は、英語などと同じインド・ヨーロッパ語族ではあるが、下層グループで言えは英語やドイツ語とはかなりかけ離れている。英語やドイツ語が、ゲルマン語派なのに対して、ヒンディー語とペルシア語は、インド・イラン語派となっている。この地図では青い部分。
ペルシア語といえば、イランで話されている言語と思い込んでいる人も多いが、厳密に言えば、ペルシア語=イランのファールシー語、タジキスタンのタジク語、アフガニスタンのダリー語の総称である。これらはかなり高い割合でお互いに通じ合えると言われているが、タジク人にイラン人の話すファールシー語はわかるか?と聞いたら、部分的にしかわからないと言っていた。
そして、ヒンディー語とウルドゥー語は文字が違えど、言語はヒンドゥスターニー語として一緒くたにされることも多い。つまりかなりの割合でお互いに通じ合えるということである。
「ヒンディー語(ウルドゥー語)を勉強するメリットと需要、将来性」
そしてインドとイランは少し離れているが、以下のURLの体験にもあるように、ペルシア語しか話せないイラン人は、片言のヒンディー語であれば部分的に30%ほどは理解できるという。また、イラン人がヒンディー語を勉強しようとすれば、他の母語が頭に入っている人たちよりもかなり優位になるということである。
https://www.quora.com/Do-most-Iranians-understand-Hindi
④アラビア語とヒンディー語は通じ合える?
ヒンディー語からみてペルシア語は同じ言語系統で、下位グループ(インド・イラン語派)も同じなので、かなり近いといえるが、ヒンディー語はアラビア語からかなり影響を受けていて、アラビア語の単語がごっそり入っているものの、両者が理解できるということはない。と断言。
これは外国人の意見を参照しなくても、学習しているだけでわかる。
⑤似ているフレーズや単語の一覧
それでもヒンディー語にはアラビア語で現在使われている単語やフレーズがふんだんに入っている。以下は、ほんの一例でしかないのだけど、よく使うフレーズや単語として、似ているものを書いていきたいと思う。
シュクラン(ありがとう)
ヤアニー、(つまり、)
ケーセ(どのように)=カイファ(どのように)
また、以下のように私がヒンディー語とアラビア語をどっちもやっていて感じるのは、日本語と韓国語、日本語と中国語における中上級以上の単語が一緒とまではいかないが、かなり多くの単語が、アラビア語とヒンディー語で一致するということだ。
そしてこの予想は調べてみたらあたっていた。現代ヒンディー語では25%あたりの借用語をアラビア語からとっているというのである。
https://www.quora.com/What-are-some-Hindi-words-of-Arabic-origin
अखबार(newspaper)→アラビア語では、ニュースの意味として使われている。
कानून(law)→ヒンディー語もアラビア語も同じ。
किताब(book)→ヒンディー語もアラビア語も同じ。
सही(correct)→ヒンディー語もアラビア語も同じ。
आखिरकार(finally)→語源をアラビア語から取っている。
まだまだ沢山ありキリがないので、ここまでしか書かない。これらアラビア語の単語は私が知っているものばかりなので、ヒンディー語を始めるのに非常に楽と感じている。
これらはインド大陸が11世紀頃からペルシア語も公用語になり、ムガル帝国の公用語もペルシア語だったことや、ムガル帝国が、イスラム教スンナ派の国であったこともかなり影響しているのだと思う。
⑥最後に
この記事で伝えたいことはただ一つ。これらどの言語を最初に初めても、一つきっちりと極めれば、どちらの言語も入りやすく、また単語やフレーズレベルでかなり優位に立てるということである。やはりおすすめなのは、多くの言語に影響を与えているアラビア語。
アラビア語をやった後は、ペルシア語の文法は非常に簡単に見えるのでおすすめ。