ロシア語(スラブ系言語)

中央アジアでロシア語の権威が落ちないと思う理由

2022年8月10日

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中央アジアでロシア語の権威が落ちないと思う理由

2022年8月10日




2019年から通うようになった中央アジア。また2021年はロシアを一周。そこには多くの疑問があった。それはこのロシア語圏というのは日米欧の世界とはまた違い、中華圏ともまた違う独特さがあるということである。

日本も韓国も、欧米諸国も割と政治的な価値観である自由主義?という意味では同じ価値観の中で生きてるような感じがするのだけど、ロシア語圏にはかつてのソ連の雰囲気が残り素朴な感覚がある、または今もソ連を経験した人がたくさん生きているので、そういう表に出てくるG7の国々とは違った雰囲気を感じることができるということ。

何が言いたいのか?というと、いまだに旧ソ連圏ではロシア語離れができなく、またする必要すらなく、ましてやグローバリズムが進む中で逆にロシア語に戻っていくのでは?とさえ思っていること。

普通だったら、英語が普及してきているし、ロシア語はどんどん廃れていくのでは?と思うものなのだけど、私は若干、そうはならないのでは?などとこのキルギスという土地にいながら思うのである。

英語圏のネット情報を見る限り、カザフスタンも全く同じように思っているようで、この私が体験して感じていることと、カザフスタンにおけるロシア語の権威など英語圏で調査したものも合わせ、記事化していきたいと思う。

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①ソ連から独立してまだ30年

この30年を意味するものは?

30年と言えば、かなり経ったじゃないか。と思われるかもしれない。けど、よく考えてみると、1948年に独立した韓国に例えれば、1978年(30年後)なのであり、やはり当時日本語の影響は今よりも高かった。それは韓国が経済成長する前の段階であり、やはり日本に頼らざるを得なかったからである。

今のキルギスの現状はこれに似ているように思えてならない。

つまり、今後30年以上経ってくると、ロシア語の影響力は徐々に薄れ、英語がスタンダードの国になる可能性はある。というよりも、今現在でも都市部では英語が使える人が増えてきてるのは事実だが、やはり大多数は話せないのが現状。

また特に、30歳以上(ソ連崩壊前に生まれた人たち)の人たちは、英語がかなり苦手で、それより若い人は喋ろうとする努力はしてくれるものの、恥ずかしがってロシア語で強く返してくる場合が多い。

そろそろうちらも英語話さなきゃだよね。という雰囲気は若い世代を中心に出ていることは確かである。

ちなみに、1990年に以前に教育を受けた人のほとんどがロシア語ができる(田舎の人は除いて)。ので、特に年配の、女性(女性はキルギス語よりもロシア語にこだわりを持っている人が多いように感じる)にロシア語を使ってあげると、かなり喜ばれる。逆にキルギス語で話しかけると嫌な顔をされることもたまにある。なぜなら、私を田舎者だと思って馬鹿にしてるんでしょ?という感覚があるからだと思う。

一方男性は人によっては民族意識の強い人もいるので、キルギス語で話しかけると喜んでくれる場合が多いと思う。

 

②英語教育はますます重要に(ロシア語からシフトする?)

キルギスの GDP全体の30%がロシアに出稼ぎに行ったキルギス人による送金である。キルギスをとってみても人口の6分の1くらいにあたる100万人が国外で働き、国に送金しているというから驚きだ。

公式統計によると、111 万 8000 人のキルギス国民が国外で働いており、その大部分はロシアで働いています。

Russia's Economic Doldrums Causing Hardship In Kyrgyzstan

カザフスタンは天然資源があるためカザフスタン人はロシアに出稼ぎに行かないが、ウズベキスタンやタジキスタンもGDPの多くがロシアからの送金である。

これが今後、ロシアが経済的にどのようになっていくか?で変わっていく。ウクライナ侵攻による影響がどのようになっていくかで。つまり、今までモスクワなどの大都市で中央アジア人が独占していたデリバリー、清掃、タクシー運転手など、ロシア人がやりたくない仕事は、今後ロシア人がやることになる可能性も高い。

すると、中央アジア人はロシアではなく、ロシアに近い所得水準のトルコや、ドイツなど所得の低い労働者を多く歓迎してる国に流れていく可能性がある。その中で、これからの世代はロシア語よりも英語だよね。にシフトしていくことは確実と思われる。

Russia's Economic Doldrums Causing Hardship In Kyrgyzstan

 

③中央アジア人から見た、英語とロシア語の違い

中央アジアの人たちの多くは欧米圏に行く際にビザを取らなければならない。つまり出稼ぎとして簡単に英語圏に行けないのに、なぜ英語を勉強する必要があるのか。ということになり、学校教育で英語はやるが、そこまで会話は上手ではない。のが現状。

とはいっても都会の良い学校では、英語にもかなり力が入れられているが、その前にロシア語を覚えなければならないという強い意識もあり、やはりキルギス語→ロシア語→英語となり、どうしても英語が苦手な人が多い国となっている。

上記の地図は、キルギス人がビザなしで行ける国。カザフスタン人はビザなしで韓国にもいくことはできるが、中央アジアの国々のほとんどが、我々日本人が自由に行き来できる欧米圏へいくのにビザが必要。そんな簡単にいくことのできない国なのである。

旅行に行く時も、ロシア、トルコ、タイなど、ほとんどの国々がロシア語圏となるため、やはり英語よりもロシア語が必要ということになる。よって、ジョージアのようにヨーロッパから近い国とは違い、中央アジアの多くではロシア語離れができない状態となっている。

特にカザフスタンはロシアと国境を接しているため、ロシア語に対する強い意識があり、ロシア語が話せるのはかっこいい、エリートという考えが未だにあり、キルギスでもこれは同様。タジキスタンではロシア語が話せるものがグっと下がるが、やはりロシア語=出稼ぎできるという意味でエリート。

ウズベキスタンではウズベク語の本がいくつも売られ、さすが中央アジア最大の人口を抱える国であり、ロシア語の影響力が薄れているとはいっても、やはりエリートは話せる。ウズベキスタンでは特に、ウズベク語がキリル文字も採用していないことや、ウズベク人としての、というより大国としての誇りがあるためか、中央アジアの中でもロシア語がさらに薄れていくのでは?と思ったりもする。

けど、だからと言ってロシア語が廃れるということはないと私は思う。その理由は以下にあると思う。

 

④ユーラシア人としての自覚

最終的に私が強く感じるところがここである。

中央アジアには日本人とも全く区別がつかない容貌の人もいる一方、中東色が強い人、ロシア人が混じったような人などさまざま。よくネットで出てくるキルギスには日本人に似た人がたくさんというのは、ほんの20~30パーセントくらいである。

「住んでみて分かった「キルギス人」の外見(ハプロ)と、性格・気質 TOP5」

彼らはどこに自分達のアイデンティティを置くのか?となると、西洋人でもなく東洋人でもなく、かといって同じ経度にあるアフガニスタン(ペルシア語圏)や、ましてやインドなどとは一緒にされたくないという強いプライドがあり、そうなるとロシア語圏で一つにまとまるのが自然というところに行き着く。

そうなると、白人でも東洋人でもないとよく話題になるロシア人(彼らは自分達をユーラシア人と見做している人も多い)たちと一緒に思われたい。というような感覚で、ロシア語は捨てられないのではないか?と思うわけだ。




⑤チュルク語としての誇りはあるのか?

キルギス人やカザフ人はチュルク語を話す民族という誇りを持ちつつも、実際は、カザフにおけるカザフ語や、キルギスにおけるキルギス語は、現地の人たちの間でロシア語より下の言語と見做している。

つまり彼らはこのトルコ語に似たチュルク語の言語をダサいと思っているわけだ。以下、チュルク語系の国々。実は世界的にもかなり広範囲に広がった言語グループである。

「世界最大級?チュルク語族の言語 TOP20(トルコ語、タタール語、カザフ語、サハ語など)」

つまり、自分達はチュルク系だということに多少のコンプレックスがあり、それよりも世界レベルでも評価が高い大国ロシア(芸術、美男美女など色々)語を話す、かつ中央アジア人に顔立ちが似ている東アジア人とはまた違った独特な位置づけの民族であることに強い誇りを持っている感がある。

特に中国人だとは思われたくないという意識は日本人と同じくらい強く、同じ系統の近い中国人に支配されるくらいならロシアに支配され、ソ連の方がマシという人の方が多い。

ソ連=スラブ系民族優位社会に見えるが、中央アジアからの目線からすると、白人(ロシア人)、アジア系(中央アジア人)、やや中東が入った白人(コーカサス人)などの他民族が集う連合体であり、自分達のアイデンティティを東アジアに置くより、彼らにとっては居心地が良いように思える。

※実際にロシアで中央アジア人は見下される対象となっている部分もある。

「日本人も「スラブ人」に見下されてる?ロシア語圏(中央アジア・極東シベリア含む)における人種のヒエラルキー」

つまり多くの中央アジア人にとっての首都はモスクワであるわけ。それは私が実際にモスクワに行って強く感じたことだ。中心部には溢れんばかりの中央アジア人が普通に生活している。

ちなみに、中央アジアでは経済的に中国を利用しようという気持ちはあっても、歴史的に中国人によく思っていない部分が多い。例えばキルギスのマナス(民族叙事詩)でも、中国人との戦いがテーマとなっている部分が多くある。

 

⑥言語環境において、日本とは違うところ

日本の場合、英語が第二外国語として無条件でついてくる。これは多くの国ではそう。けれども、キルギスやカザフスタンでは、まず自分達の民族の言葉の後に、ユーラシア人としての共通言語であるロシア語でこれら隣国と交渉がスムーズに行くレベルに達した後に英語に行くという感じになる。

なので、彼らは3つの言語を覚えることになる。例えばキルギス人であれば、キルギス語、ロシア語、英語。といった感じだ。

これは実際にキルギスにきて、深く理解するのにかなり時間がかかったことなので、この記事にまとめた次第だ。




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