2020年に訪れたフィリピン。そのマニラ南部の西新宿のような街「ボニファシオ・グローバル・シティ」はかなり圧倒されたがあれから2年くらいが経つ今、私はタガログ語の語彙研究を始めた。は?何が語彙研究!?と思ったそこのあなた。
私はすでにインドネシア語における初級程度のレベルがあるのはお忘れでは?その語彙とタガログ語の語彙がどれだけ近いのか独自研究することに楽しさを見出している。
さて最近タガログ語のことについて調べてみると色んなことがわかってきた。また意外にも私の英語のレッスンはフィリピン在住の日本人からも依頼されることが多くそこにタガログ語やセブアノ語などのフレーズの指導も少し入れて欲しいといったこともよく聞かれる。
最近入ってきた英語の生徒さんはまさにフィリピン在住のフィリピン人女性(日本で生まれたので日本語ネイティブ)も、現在自分の言語でもあるタガログ語の学習に勤しんでいるという。そういうこともあってか私自身もこの記事を書けるタイミングだと判断し、色々調べみた。
①話者人口と、今後の人口の予想
フィリピンの人口1億1000万人(2022年)に対して、タガログ語の人口は、8200万人(2022年)。このままの出生率を維持すると、2050年には1億4500万人ほどに増えるという予想。やはりそれと同時にタガログ語話者人口も1億人を超えるのかもしれない。
また日本は人口が減少しているのでその分、フィリピンからの労働者はもっと増えるかもしれない。2050年の日本の人口は1億人ちょっとと言われているので、2022年の1億2300万人に比べ2300万人ほど減るという恐ろしい事実を考えれば、今よりかはタガログ語の需要が増えるかもしれないということも考えられる。
またフィリピンは30%以上が15歳未満と、若い人が多い国でもある。日本は11%ほどであり、日本の3倍ということになる。
②タガログ語か?セブアノ語か?
上記では8200万人と書いたがこれはおそらく他に母語があり第二言語としても扱える人口だと思う。タガログ語の公式母語話者数は、フィリピン全体の24.44%ほどであり、南部のセブアノも同じくらいの23.83%となっている。
その他にも割と多く話されている言語は、首都マニラのあるルソン島北部のイロカノ語(8.77%)、西ビサヤ地方で主に話されているヒリガイノン語(8.44%)など。
タガログ語とセブアノ語は、オーストロネシア語族>マレー・ポリネシア語派>フィリピン語群>中央フィリピン諸語とほぼ同じ言語。語彙レベルでも似てるので、やはりまずはタガログ語を勉強するのが良い。
とはいっても私の以前の生徒さんにセブ島で働いている日本人がいたが、その人は一生懸命セブアノ語を勉強していて現地の人たちとも楽しい時間を過ごしているようだったので、やはりその土地の言語をなるべく学んだ方がいいかもしれない。
いずれにしても英語につぐタガログ語の権威は無視できない。
以下、タガログ語とセブアノ語の似てる単語リスト
https://en.wiktionary.org/wiki/Appendix:Cebuano%E2%80%93Tagalog_relations
③アメリカでは第4位の言語
意外に知られていない事実として、タガログ語はアメリカで話されている言語のTOP4に入る。これは本当に意外ではないだろうか?アメリカといえばヒスパニック系の社会、中華系の社会はよくイメージしやすいが、フィリピン系の社会も無視できない存在となっている。特にアメリカ社会では、フィリピン人=よく働き成功する。というイメージにもなりつつある。
また以下の国でもこのように多く話される言語だということが明らかになった。
サウジアラビア=94万人
カナダ=67万人
日本=31万人
UAE(ドバイなど)=54万人
マレーシア=62万人
どれも出稼ぎ先ののような国。特にUAEなどにいる出稼ぎ労働者にはインド人をはじめとする南インド人が多いが、その中に英語が堪能なフィリピン人もかなりいるということ。
このことからもわかるように、割といろんな国でタガログ語は話されていることになる。タガログ語の存在があまり日本で話題にならないだけであり、フィリピン人は英語だけを話すわけではないので、これもまた違った見方で面白いのではないだろうか。
④オーストロネシア語族の言語で日本に一番近い
オーストロネシア語族といえば、インドネシア語、マレー語、ハワイ語、マダガスカル語、ジャワ語、バリ語など太平洋諸島からインド洋にまたがる全域で話されるグループの言語。この中で一番多く話されているのがインドネシア語だけれども、一番日本から距離が近いという意味で考えれば、タガログ語である。
マニラは、飛行機で4時間ほどで行ける距離。
タガログ語とインドネシア語は同じ言語系統で、
isa dalawa tatlo apat lima(タガログ語)
satu dua tiga empat lima(インドネシア語)
のように、1,2,3,4,5 をみてみても、かなり似ている。5に関しては全く同じ単語。お互いの言語が通じるほど似ているわけではないが、その単語が発生した語源なども同じ場合が多く、タガログ語をかじったあとは、読み書きレベルではインドネシア語は簡単になる。
またインドネシア人がよくいう、タガログ語を聞いて、意味はわからないけど発音などが似ていて自分の言語かと思ったよ。というのはYouTubeのコメント欄でよく聞く。
このようにタガログ語を学習することは、オーストリネシア語族の言語をかじる入口にもなる。
⑤スペイン語と似ている
スペイン語と言えばアメリカで一番学ばれている言語であり、日本人があまり行かない中南米よりかは現実的に考えればアメリカで使用しても楽しめる言語である。タガログ語には多くのスペイン語単語が入っているので、スペイン語も将来的にやりたいとか、スペイン語学習者だけど、オーストロネシア語族の言語を一つかじりたいという人には、タガログ語がおすすめできる。
以下はスペイン語とタガログ語で共有しているリストだが、私の予想では、時代とともに少しずつオーストロネシア語族の語彙に置き換わっていくと思う。とはいっても話し言葉とか、気軽にスペイン語語源の単語も今後も使われていくのではないだろうか。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_loanwords_in_Tagalog#Spanish
⑥希少な学習者は人気者と、英語だけによる壁
英語を学びに多くの日本人や韓国人が留学に来る中、タガログ語を少し流暢に喋れるということは、フィリピン人からはこの人は違う。と見せつけるようなもの。
フィリピンに行った時に気づいたのは英語が話せるだけではフィリピン人と親密な関係にはなりにくいという点である。彼らの中には日本に強く親しみを感じている人もかなりいるが、やはりこちら側から彼らを理解することなしに、信用を得ることはできない。
私は韓国では韓国語、キルギスではロシア語だけでなく簡単なキルギス語も話すようにしている。それと同じように彼らのアイデンティティを認めるためにもしっかりタガログ語の学習をすることが必要。
つまりタガログ語の学習は話者人口が多いからではなくフィリピンという国を認めるような行為でもあり、どこの国に行ってもフィリピン人に話しかけやすくなる楽しみもあるので、インドネシア語に比べればいろんな国に散らばっているタガログ語は、勉強しててワクワクする言語の一つである。