ロシア語を真剣に勉強するかしないか考えた時にやはり話者数は気になるところ。ロシア語自体は1億5000万人ほどに話される言語だが、L2(第二外国語)も含めると2億5000万人ほどになる。
その時よく上がるのが、旧ソ連国の国々の人口。スペイン語圏とは違い、例えばロシア語圏であるウクライナでも全ての人がロシア語を話というわけではないので単に国の人口だけではロシア語話者がどれだけいるのかはわからない。
ということもありロシア以外でロシア語話者だけを抜粋した順位を紹介することにした。またロシア語話者といっても能動的話者か、受動的話者にも分けることができ、何か聴かれたら意味はわかってすぐに返答できるような受動的話者と、なんでもロシア語で生活しちゃうような能動的話者がいるので、その能動的話者の割合が多い国の順位も見ていきたいと思う。
10位 以下(ロシア語のネイティブが多い国)
20位 タジキスタン(4万人)
19位 ジョージア(4.5万人)
18位 オーストラリア(5万人)
17位 フィンランド(8万人)
16位 カナダ(11万人)
15位 アゼルバイジャン(12万人)
14位 リトアニア(19万人)
13位 モルドバ(26万人)
12位 トルクメニスタン(30万人)
11位 エストニア(38万人)
タジキスタンや、ジョージアではロシア語のネイティブは少ないが、それを上回るロシア語使用率なので、ある意味ネイティブがどのくらいか?と、社会的にロシア語がどのくらい使われているか?というのはあまり関係ないのかもしれないという数字。
以下より10位。
10位 キルギス(48万人)
およそ全体の9%。とはいってもキルギスは出生率の非常に高い国で、2000年には490万人だった人口が、2022年には680万人、つまり、およそ200万人も増えている国なので、今後ロシア語のネイティブ人口の割合は減っていくと予想される。
9位 ラトビア(70万人)
以前この動画を見たことがあるが、若い人から年配の人までロシア語を話せる人が多い。地理的に少し東に行くだけでモスクワという立地もあるし、英語教育が普及する中でも周辺のベラルーシやウクライナ、ロシアなどがあるので、ロシア語の人気は衰えないのではないだろうか?
私が意外だなと思った国のうちの一つ。
8位 ウズベキスタン(72万人)
3500万人(2021年)のウズベキスタンにとって72万人は全人口の2%ちょっとにすぎない。中央アジアのカザフスタンやキルギスに比べるとウズベキスタンではウズベク語の影響力もあり、それほどロシア語の権威は高くない。
7位 アメリカ(90万人)
以前書き上げたことのランキングの数字ともかなり一致する。
6位 イスラエル(115万人)
およそ国民の15%。隠れロシア語圏である。イスラエルの建国、旧ソ連崩壊などによりソ連にいたユダヤ人がイスラエルに移動する形となった。およそ930万人ちょっとの国なのでこの数字はかなり大きい。
5位 ドイツ(225万人)
2012 年のドイツの人口データによると、ドイツに居住するロシア人移民は121万人。これはEUの中でも最も多いと言われている。とはいってもロシア連邦、旧ソ連の市民という意味であり、全てがスラブ系のロシア人とは限らない。つまり、ロシアに住んでいたユダヤ人、昔ドイツからロシアに渡たりロシア人になった後ドイツに帰化したなど少し複雑。
ドイツに住むロシア語話者全体数は350万人と言われているが、このランキングでは225万人となっていたので、この中でネイティブレベルというのが225万人ということなのかもしれない。いずれにしても、200万人〜350万人いると考えた場合、実に大阪市よりもさらに多いロシア語話者がいるということになり、一つの小国ができてしまう規模である。
で、やはり調べてみると、18世紀にロシアに渡ったドイツ人が戻ってきた形なので民族的にはドイツ人だけど言語はロシア語話者というパターンが多いようだ。つまりこのランキングでは他の国とは事情が異なり民族的にスラブ系ロシア人がドイツに多いというわけではないということになる。
Why are there so many Russians in Germany?
4位 カザフスタン(380万人)
およそ国民の21%がロシア語話者。もちろんL2の話者もかなりいるので実際にロシア語を話せる人は都市部を中心にもっと多い。
ちなみに、ロシア系カザフスタン人の人口が、298万人(2021年)
3位 ベラルーシ(667万人)
およそ国民の70%。ちなみに、ベラルーシの公用語であるベラルーシ語もロシア語の方言レベルの近さにあり、ロシア語に堪能な人の割合はダントツの一位。
2位 ウクライナ(1427万人)
およそ国民の30%が、ロシア語のネイティブ。ちなみにウクライナは東部や南部の多くがロシア語率が非常に高く、キエフではロシア語とウクライナ語を同時に使い、西部リヴィウのほうではウクライナ語の使用率が非常に高くなる。
またウクライナという国に多くのロシア系住民が住んでいるので非常に複雑である。
1位 ロシア(1億1860万人)
ロシアの人口よりも少ないのはロシア=全ての人がロシア語ネイティブではないということであり、ロシア連邦85.7%が、ロシア語ネイティブとなる。
以下、使用率が高い国(2004年の調査)
次に見ていきたいのはロシア語の使用率が高い国である。上のランキングでは単にその国でどのくらいのロシア語ネイティブがいるのかというランキングだったが、下のランキングを見ることで、よりその国の社会がロシア語に依存しているのかもわかる。
では以下のランキングを見ていこう。
※受動的ではなく能動的にロシア語を使用できる人口の割合
1位 ベラルーシ(75%)
2位 カザフスタン(65%)
3位 ウクライナ(60%)
4位 ラトビア(55%)
5位 モルドバ(55%)
6位 エストニア(38%)
7位 ジョージア(37%)
8位 アルメニア(32%)
9位 キルギス(30%)
10位 アゼルバイジャン(24%)
11位 リトアニア(21%)
12位 ウズベキスタン(20%)
13位 タジキスタン(16%)
14位 トルクメニスタン(3%)
この中で私が行った国は、カザフスタン、ウクライナ、ジョージア、キルギス、ウズベキスタンだが、だいたいこの順番は現地の感覚と同じである。私が行ったのは2019年〜2022年なので、上記のデータは2004年のものだが、数十年たった今もほとんど変わっていないのが現状。
やはり上の順位のようにキルギスよりはウズベキスタンの方がロシア語を話せる人がいなかったと思っていたし、ウクライナはほとんど通じたり、カザフスタンは異様にロシア語を自分の言語と主張するしなど。
英語教育は同時に行われていてもロシア語を手放さない、また若い世代、特にイスラム系の国(カザフスタン、キルギス、アゼルバイジャン)などではロシア語の方が現地語より気楽に話せるというのもあって若い人の間で支持されている。また特に中央アジアにおいてはロシア語ができる=社会的に認められるということもあるので、衰えないのだと思う。
ちなみにジョージアに住んでみて感じたのは、ロシアが政治的に好きではないのだけど貿易の関係もあって、英語もロシア語もできる教育の高い人も結構多いということ。またソ連から独立して30年くらいなのでタクシーの運転手なども英語よりもロシア語のほうがわかりやすいという雰囲気がある。
アルメニアに関してはロシア人率が低い国なのに、アルメニア人のロシア語運用率が高いことには驚く。ちなみにジョージアのバトゥミの駅でたまたまアルメニア人と話したが英語もロシア語も堪能だった。
ロシア語の理解率が高い二つの国
ネイティブスピーカーの割合が高いというわけではないが、ポーランドとブルガリアは、両国とも国民の20%ほどがロシア語のニュースなどを聞いても理解できるという調査がある。この地図ではバルト三国の部分がもっとも真っ赤になっているが、上のランキングでも紹介している国もあるので割愛。
いずれにしてもブルガリア語もポーランド語も非常にロシア語と近く、同じ単語もたくさん共有していることや、ブルガリアはキリル文字の発祥地とも言われ、ロシアと地理的に少し離れているのでロシア語とは全く関係ない言語のように思ってしまっている人も多いかもしれないが、多くの単語が全く同じスペルだったりするので面白い。
以下にも少し書いたことがある。
最後に
ロシアが孤立する中でも急激にロシア語話者が減るとは考えにくいし、中央アジアなどはロシア語をお互いの中立言語のように使っていたりする。日本では相変わらずロシア語に手を伸ばすものは少ないが、ロシア語学習者の私はもっとロシア語に興味を持つ人が増えればいいなと思っている。