まだまだ日本人に知られていない中央アジア、その中でもウズベキスタンは最近外国人が観光でいるようになったと言われるくらい日本人にとってもあまり馴染みのない国である。そしてその数少ない旅行者の間でもほとんどがタシケント、サマルカンド、ブハラなどの観光都市にしか行ったことがない。
そんな中、私は今回2回目のウズベキスタン訪問でありフェルガナ盆地の4都市を制覇した。それだけウズベキスタンの将来性や国民に興味を持ちはじめてきた証拠でもある。
それは10ヶ月ほどいたキルギスから何度もウズベキスタンのことを思ってきた事や、キルギスやカザフと比較する形でウズベキスタンっていいのでは?ウズベク語にももっと手を伸ばしていこうかな?という積み重ねからである。つまり私はこの国の言語や民族との交流について目覚め始めてきている。
この記事では、今回で2回目になるウズベキスタンから私自身がウズベク語を学ぶメリットが少しずつ見えて来たので、そういうことを書いていきたいと思う。
①ウズベク語の人口や、言語グループ
ウズベク語は、3000万人-3500万人(全世界の合計)に話されるウズベキスタンの公用語。ちなみに、ウズベキスタンの人口は3500万人だけれども多民族国家でもあるので、ウズベク語話者は総人口よりも少ない。けれども、ロシア語という中央アジアの共通語を除けばウズベク語は中央アジア最大の言語。
またカザフ人やキルギス人、タジク人はそれぞれの国に散らばっていないが、ウズベク人はウズベキスタンの周辺国にかなり散らばってビジネスをしたりしている。
カザフスタン(60万人)
キルギス(100万人)
タジキスタン(150万人)
アフガニスタン(450万人)
パキスタン(163万人)
ロシア(30万人)
トルクメニスタン(60万人)
海外に出るウズベク人はビジネスに長けているとも言われ、キルギスのオシュやタジキスタンのホジャンドでも私の宿のオーナーは英語が堪能なウズベク人だった。
で、ウズベク語というのは、言語系統的にはカザフ語、キルギス語、トルコ語などと同じチュルク語族である。
が、周辺のキルギス語とカザフ語よりも下層グループが同じウイグル語に近い言語と言われている。ちなみにカザフ語とキルギス語は下層グループも同じ。
とはいっても私がウズベク語を勉強してみて感じるのはウズベク語とキルギス語は、70%くらいは同じ単語を共有しているという事。まさにオシュにいた時にキルギス人の友達がキルギス語でウズベク語を話すウズベク人と会話が成り立っていたのが非常に興味深かった。
②ウズベク語に目覚めてきた理由
ブログやtwitterなどを追ってくれている方はわかるかもしれないが、私はアラビア語→ペルシア語→キルギス語・トルコ語などの基本単語を常に語源レベルで整理・比較することによってそれぞれの単語におけるセンスは日々磨きがかかってきている。
トルコ語の生徒さんや、アラビア語の生徒さん、ペルシア語の生徒さんまで色んな生徒さんがいるので日々、私が知った情報は全て彼らに伝えるようにしているためアウトプットもしっかりしているからだ。
特に2021年後半、2022年の夏にキルギスに滞在する形でキルギス語を使ったりもして、私にとっては新しいチュルク語族の単語を理解しはじめてきている。1回目のウズベキスタン滞在でウズベク語の単語本を買ってみたが、その中に書いてある単語の50パーセント以上はキルギス語の単語をラテン文字に変えただけだったのでものすごく親近感を覚えた。
そして今現在、キルギス語の単語が定着してきた段階で、私にとってフェルガナ盆地を中心にウズベク語の使用というのが一つの楽しみにもなりそうな予感がしている。実際にここに来てみて色んな人ともっと話したいという気持ちになったのだ。
③フェルガナ盆地の開拓による確信
※写真はマルギランのシルク系の工房(Yodgorlik Silk Factory)の隣の屋台の近くに描かれていたもの。
1回目のウズベキスタン旅行ではタシケント(2週間)、ブハラ、サマルカンドを数日旅行したくらいで、タシケントというロシア語色が強い首都と、タジク語が強い南部にしか行ったことがない状態だったので、ウズベク語の必要性をそれほど感じてはいなかった。けれども2023年春に思い切ってフェルガナ盆地の5都市を回ることを決意して実際に実行に移してからウズベク語の必要性をかなり感じた。
ロシア語が少ししか分からない人も多く、やはりウズベク語を話した方が喜ばれる。このフェルガナ盆地というのは元々はソグド人の土地なわけだけど、ウズベキスタン南部にはタジク人が多いことや、タシケントというロシアと全く変わらないようなインフラが整っている都市のことを考えれば、一番ウズベク語が発揮できるところ。というように感じた。
つまり、上にも書いたように私はウズベク語に関わっているキルギス語、アラビア語、ペルシア語などをすでに基本レベルの単語は習得しているので、ウズベク語において覚えるべき単語は全体の20パーセントくらいしかないので読みにおいてはすぐに上達すると思う。という段階で始めている。
最初に難しいアラビア語などを、もう何年だろう・・。やっているので、そういう土台が現在のウズベク語にも生きているわけだ。
③日本から近い国になる可能性(メリット)
今まで日本では色んな途上国が注目されてきたた。その中でもミャンマーなどは政変により企業も撤退。政治が安定していないと日本企業もそこに行かないのだけれども、ウズベキスタンは比較的安定、またソ連から独立後30年が経ち、今回のウクライナ戦争によりウズベキスタンの外交が変わっていくような気がする。
というよりもロシアから撤退した企業などが中央アジアに流れていくという現在の流れや、中央アジアで一番の人口を抱え、カザフスタンの数分の一の労働力なので、現在は韓国企業がウズベキスタンに多く投資していたり、旅行者も韓国人が多いが、今後日本との直行便などの料金が下がったりして、日本からベトナムに行くような感覚に少し近くなるのではないか?とも思う。
実際に東京からハノイまでは7時間かかるのだし、ソウルからタシケントは6時間くらいだったので、東京とタシケントの現在の航空便がさらに安くなるか、ウズベキスタンから日本に労働力が多くくる形?でLCCなどが増え、それにともなって日本人もそのLCCでウズベキスタンに行くようになり、現在の近場というと、中国・韓国、東南アジアくらいの距離の旅行圏が中央アジアまで広がると私は思っている。そうなるのはおそらく2025年以降ではないか?と思っている。
いずれにしてもロシア離れが加速していく中央アジアでは、ロシア語は維持しつつも、トルコとの結びつきが強くなっているということもあり、チュルク語の国々がNATOのように一つにまとまる将来が出てくるかもしれなく、そうなると中国にもしっかりものを言える連合体ができ、日本とトルコは友好的なわけだが、その間にあるウズベキスタンとの関係も今後日本の外交にとって見逃せないのでは?というシナリオまで私は考えている。
以下は、チュルク語を話す国々。
「世界最大級?チュルク語族の言語 TOP20(トルコ語、タタール語、カザフ語、サハ語など)」
④ラテン文字だけどアラビア語単語が沢山ある
ウズベク語を勉強していて楽しいと思う一つの理由として今まで何年も勉強してきたアラビア語がラテン文字で書かれている点だ。これには感動がある。
government(政府) hukumat
Mosque(モスク)masjid
life(命、生活) hayot
moment(瞬間) lahza
nature(自然)tabiat
wife(妻)zavja
これらはほんの一例。カザフ語やキルギス語はキリル文字で表記するがウズベク語はローマ字で表記。またこれら二つの言語に比べウズベク語には多くのアラビア語が近代に入ってから流入しているのでは?と思うほど多い。これはアラビア語→ペルシア語(タジク語)→ウズベク語と流入したものも多いかもしれない。
実際にウズベキスタンには1000万人もの隠れタジク人がいると言われ、そのタジク語で使用されている言葉がウズベク語に流入している可能性もある。
いずれにしても最近2年以上継続のアラビア語の生徒さんには、ウズベク語などの単語帳をみて勉強することによって逆にアラビア語単語の見直しになるのでやってみて!とアドバイスしている。実際に私がウズベク語を整理する中でアラビア語ではなかなか出てこなかった単語が、ウズベク語の単語を強化することによってアラビア語に波及効果しているからである。
ヒンディー語、ペルシア語、ヘブライ語などアラビア語の流入を受けた言語はたくさんあるが、このウズベク語というのは本当にアラビア語単語の宝庫なのである。トルコ語にもアラビア語がたくさん流入しているが、トルコ色をさらに強化するために近代に入ってからチュルク語語源の単語に置き換えているところもある。
ウズベク語はその反対で、チュルク語源の単語をアラビア語に置き換えている感じがあるのである。
⑤チュルク語系の言語で、2番目に規模が大きい
チュルク語系の言語の中でトルコ語に次いで規模の大きい言語がウズベク語。そして何よりもトルコよりも地理的に近く、上にも書いたようにかつての東南アジアの国々のように日本と結びつきが強くなるかもしれないというポテンシャルもあり、トルコ人よりも外見において日本人により近いという親近感もある。
個人的にはチュルク語の言語を始めようと思った時、トルコ語かウズベク語から始めるのがいいと思う。
私はロシア語学習によってキリル文字がわかるのでキルギス語から始めたが、ラテン文字を使っているウズベク語単語をたくさん吸収することで、キルギス語、アラビア語、ペルシア語、トルコ語などにも繋がっていく。
⑥ウズベク語を、カザフ語とキルギス語と比較した場合
日本人が中央アジアでも大好きな国はどこ?と聞かれれば、そのほとんどがキルギスと答えるだろう。これは端的に言えば顔立ちが似ていて安心できることや、ビザが2ヶ月フリー(カザフとウズベクは1か月しかいられない)ということによるものだと思う。
まずカザフスタンは人口2000万人規模であり都市間が非常に遠いので旅行には向いていない。
ウズベキスタンは小さい国土(ほとんどが国土の東側に人口、都市が集中)に、多くの都市があり、また中央アジアの文化といえばペルシア帝国の影響が強いものが多いので自ずと、旅行=ウズベキスタンになってしまうので、日本人にとっては話す必要性がある場面が多くなる。
カザフスタンとキルギスは自称ロシアです的な思考があり、自分たちの言語に劣等感を感じているものも多いので、今後もロシア語の国を自称すると思うのだけど、ウズベキスタンには多様な民族、遺産、文化などがあり彼らはウズベク語(チュルク語民族)に強い誇りを持っている。
これは少しジョージアに似ているところもあり、その中で強かなのか、ロシア語も温存している(ロシアからの出稼ぎ労働や、ロシア人の観光客による収入がGDPに占める割合が高いため)。
けれども私が思うにウズベク人はカザフ人などとは違い、ロシア語がうちらの言語!という強い意識はないと思う。これはタジキスタンではさらにそういう傾向にあると思う。
つまり話して喜ばれる言語であり、キルギスやカザフでは現地の言語で話してもロシア語で返ってくる場合があるけれども、今後のウズベクの発展、人口増加、国の知名度があがるにつれ、ウズベク語のブランド力もさらに上がっていくのではないか?と私は思うのである。
つまり話すと人気者になれる言語。
35歳を超える私でも?バスに乗れば色んな人から連絡先を聞かれるような不思議な現象が起きるのがウズベキスタンである。若い人の人口が多く、非常に元気がもらえるので人生楽しみたい人には向いている言語かもしれない(笑)。